ゴジラ・ミレニアム2000
Godzilla Millenium 2000


1999年12月13日 東京 日劇東宝 にて
今回は単品かなと思ったら、結局対決ものになってました。


written by ジャックナイフ
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ゴジラ予知ネットの篠田(村田雄浩)は雑誌記者一ノ瀬(西田尚美)とともに根室でゴジラの上陸を目撃します。その後、ゴジラは茨城県の東海村に現れ、自衛隊が迎え撃ちます。そこへ巨大UFOが現れ、ゴジラに攻撃をしかけてきます。このUFOはゴジラを蹴散らすと、そのまま、今度は東京へ飛来して、デンと居座ってしまいます。どうやら、UFO自体が意志を持った生命体のようなのですが、何のために現れて、一体何をしようというのでしょうか。

アメリカ版ゴジラはどう見ても、日本のゴジラの系列というよりは、「ジュラシックパーク」の単体キャラ版という印象だったのですが、今度は本家、東宝が新しいゴジラを作り出しました。とはいえ、「ゴジラVSデストロイア」の続きではないみたいです。何だか、ずいぶんと仕切りなおしをするなあって印象です。まあ、映画そのものが面白ければ何でもありなのです。今回は、「メカゴジラの逆襲」以来の久々のシネスコ画面で、ドルビーデジタルの迫力音響という仕掛けがまず期待させてくれます。

物語はのっけから、ゴジラが登場して、中盤までは、出ずっぱりの大暴れという構成です。今回のゴジラはやややさしい顔つきになっていますが、設定は強暴な怪獣ということのようで、滅多やたらな暴れっぷりが楽しい見せ場になっています。また、合成カットの多さも見事で、特に東海村襲撃シーンは真昼間の実景にゴジラをはめこんでかつ動かしてみせるあたりは、「おおっ」と思わせる出来栄えです。また、移動するゴジラを車が並行して追いかけるカットとか、ヘリの主観からの、実景とゴジラの合成など、絵としての面白さもあって、かなり興奮させる展開になっています。エンドタイトルでも特殊技術スタッフのあと、ビジュアル・イフェクツ(特にデジタル合成)のスタッフがかなりの数クレジットされています。

ただ、合成の見事さに比べるとゴジラのキャラクターはあまりインパクトがなくて、かつ都市破壊の面白さもありませんでした。オープニングの根室のシーンでは都市部に迫るゴジラの描写がなかなかにスリリングで期待させるのですが、そこで一度ドラマが途切れてしまい、次は東海村に話が飛んでしまうので、全体のつながりが何だかぎくしゃくしてしまいました。

また、怪獣映画を盛り上げるものの一つが、音楽です。服部隆之のオーケストラによる音楽は、それ自体は悪くないのですが、ゴジラ登場シーンでもボリュームを下げているのか、ホーンセクションが弱いのか、巨大感やハッタリといったものがない、薄い音になってしまっていたのが残念でした。特にクライマックス前の上陸シーンのみ、伊福部昭による昔のゴジラのテーマが流れるのですが、こっちは音量も、ブラスの厚みも十分で、ゴジラにふさわしい重厚な音になっていたのですが、これが戦闘シーンになって、服部隆之の音楽に変わると途端に、元気がなくなってしまうのですよ。また、どうってことないようなシーンに画面以上にシリアスなオーケストラ音楽を入れて、音が浮いてしまうところがあるのも今イチでした。この映画が、唯一、アメリカ版「ゴジラ」に負けてるとすれば、この音楽の部分ではないかしら。

では、お話の方はと申しますと、何だか新鮮味がないのですよ。「ゴジラvsビオランテ」のG細胞の話と、「ゴジラvsスペースゴジラ」のコンセプトをつなげたという印象でして、もともと、ゴジラ対UFOというのは、見せ場になりにくいのはわかるのですが、ああいうクライマックスはちょっとなあという気がしてしまいました。大河原孝夫演出も「ゴジラvsモスラ」と同様に、メインストーリーに絡めない人間の動きをフォローし損ねた感があって、クライマックスのスペクタクルは人間の一切関わらない怪獣ドラマになってしまいました。昔の「モスラ対ゴジラ」や「怪獣大戦争」もそうじゃないかと言われてしまいそうなんですが、ともかくも人間がそこで何かしているのがわかるという点で少々違うのですよ。

人間側にキャラクターに魅力が乏しいのも難点でして、西田尚美がそのキャラクターだけの存在感を見せて印象に残る以外は、ドラマらしいドラマがありません。佐野史郎が与えられた役どころ以上のオーバーアクトで、薄いドラマ部分を救っていますが、阿部寛などは、ちっとも頭よさそうに見えないのが、逆に気の毒になってしまいました。ラストが卒業式の呼びかけみたいに、独り言言いたい放題になるのもご勘弁です。「おまえら、視線を合わせて会話しろよ。」とつっこみたくなりましたもの。


お薦め度×西田尚美がかわいい、ゴジラもどちらかというとかわいい。
採点★★★
(6/10)
特殊技術の進歩はスゴイです。真昼間ゴジラは見物。

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