written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
前回の闘いでゴジラにかなりダメージを与えたものの、メカゴジラもオーバーホール中です。ある日、整備士中條(金子昇)のおじ、中條博士(小泉博)のもとに、モスラと小美人が訪れ、ゴジラの骨を海に葬れ、さもないとモスラが人間の敵になるかもと警告します。しかし、ゴジラの脅威はまだ続いていまして、またしてもゴジラが品川に上陸します。メカゴジラも整備未完で出動できないでいると、何とモスラがゴジラに向かっていくではありませんか。ついにメカゴジラも発進、ゴジラに向かっていくのですが、ゴジラの攻撃に中枢部を損傷、直接メカゴジラの中に入って修理しなければならないということで、中條が戦場に向かいます。一方、モスラは生まれたばかりの幼虫2匹も加勢するのですが、成虫モスラはゴジラの前についにその命を断たれます。果たして、メカゴジラは今度こそゴジラの息の根を止めることができるのでしょうか。
ゴジラシリーズ、今回はお話リセットではなく、前作の「ゴジラ×メカゴジラ」の完全な続編となっています。ゴジラの骨を使ったメカゴジラは、神の領域を侵す存在なんだそうで、ゴジラとともに葬られなければならない存在だというのが、今回のテーマです。そういう警告をするのがモスラと小美人でして、これが昭和36年の「モスラ」から話が続いているらしいのです。でも、映画のほとんどが、今回は戦闘シーンでして、ゴジラが再び現れ、東京上陸してから、海に帰るまでを一気に描いたドラマになっています。
今回のメインが戦闘員でなく整備士というのは、なかなか目のつけどころがうまいと思ったのですが、その分、ゴジラがますます脇役にまわってしまい、メカゴジラの映画になってしまいました。こうなると、ゴジラは、ポパイのブルートみたいなもんで、強そうに出てきてやられるためだけの存在になっちゃうんですよね。さらに、今回、モスラを登場させたのはいいんですが、その登場理由も説明しきれていないのが惜しいです。警告しに来た筈なのに、やってることは人助けというか、メカゴジラの登場前の前座みたいな位置づけなんですよね。ラストでも結局いいところはメカゴジラに持っていかれちゃうので、かなり気の毒な存在ではあります。おかげで小美人の扱いも中途半端になっちゃいました。
また、後半の強引とも言えるメカゴジラの暴走ぶりも、説明はわかるんですが、ドラマとして取り込まれていないというか、単に説明して終わりみたいで、映像としての説得力がないのが弱いと思いました。「マトリックス・リローデッド」でも後半が説明ばかりで、それを映像で語りきれなかったというのがありましたが、あれと同様で、ドラマのコアになる部分の説得力が弱いのですよ。ビデオゲームのRPGだったら納得できても、きちんと人間がドラマを演じている映画なのですから、そのあたりもきちんと語り尽くして欲しかったように思います。映画の冒頭で、小美人に伏線を語らせるのはいいけど、唐突にそれを見せられてもなあってのが正直なところです。
特撮については、今回はミニチュア破壊がメインで、ここ最近の数作のような実景との思い切った合成は使われていません。また、怪獣と人間と絡むシーンがないので、特撮と本編が乖離してしまったという印象も受けてしまいました。本編で人間ドラマを色々と盛り上げようとしているのに、特撮側が本編ほどの盛り上げを見せてくれていないという感じでしょうか。戦闘員のヒロインが活躍した前作に比べると、かなり特撮部分が浮いてるという印象を受けてしまいました。また、ゴジラに生物感がなくなっているというのが気になりました。妙にドライな質感でして、爬虫類のヌメヌメ感がないのは、狙ってのことなのかな。ゴジラが泳ぐシーンも個人的にはあまり見たくないんですよね。アメリカ製「ゴジラ」でも馴染めなかった泳ぐシーンなんですが、同じ絵面で見せられるとちょっとなあって。
91分という枠の中にドラマを押し込めた感がありまして、前作に比べて手塚昌明の演出は登場人物を描ききる余裕がないように見えました。そのせいか、前作からの引継ぎでちょっとだけ登場する釈由美子が、えらくかっこよくって印象的なのに、今回の主役であるはずの金子昇や吉岡美穂が影が薄くなってしまいました。また、小美人の二人が妖精っぽいというよりは、安いエロっぽさを感じさせるのが、何となくしっくり来ないという感じでして、これは衣装デザインのせいなのかなあ。
お薦め度 | ×△○◎ | 600円28ページのパンフの7ページが広告ってのはいかがなものか。 |
採点 | ★★★ (6/10) | 面白くできてはいるんだけど、ハッタリのないぶん、ドラマが軽いよねえ。 |
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