ファイナル・デスティネーション
Final Destination


2001年1月21日 神奈川 平塚シネプレックスシネマ4 にて
連続殺人モノのバリエーション、でもなかなか面白い。


written by ジャックナイフ
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高校の修学旅行で、パリ行きの飛行機に乗ってから、アレックス(デヴォン・サワ)は飛行機墜落の予知夢を見てしまい、大騒ぎした挙句、何人かの友人と先生も巻き込んで、飛行機からおろされてしまいます。ところが離陸直後に飛行機は大爆発。飛行機を降りた彼らだけが生存者になってしまいます。しかし、その後、生存者が2人続けて怪死します。FBIはアレックスを疑ってかかるのですが、どうやら見えない超自然の力が生存者の帳尻合わせをしているみたいなんです。

人間、いつかは死ぬってわかってますけど、それを普段から意識していたら、怖くて日々を過ごすことができません。事故死なんて突然にやってくる死の典型ですから、確かに理不尽でも、その直前まではお気楽でいることができます。しかし、この映画の主人公たちは、その事故死をうまいこと回避してしまったのです。ところがその結果、彼らは自分に近づきつつある死を実感しながら日々を過ごすはめになってしまったのです。これはこわいです。死神にマークされた人がいたとしても、本人がそれを知らない限りは、本人は不幸にはならない筈です。大体、人は生まれた時点で、死神にマークされているわけですからね。ところがこの映画の主人公達に訪れる死は完全に誰かのシナリオに基づいて、見えざる手に操られているのです。テレビシリーズの「X−ファイル」に関わってきたジェームズ・ウォンの演出は、得体の知れないこの「死をもたらす者」の存在感をうまく出していて、理不尽なストーリーにそれなりの説得力を持たせることに成功しています。

じゃあ、その見えざる手とは何かということを映画は具体的には見せてくれません。ただ、生存者たちに不条理な死をもたらす超自然の力を見せるだけです。ですから、その死をもたらす者の正体は、悪魔かもしれないし、死神かもしれないし、運命の神なのかもしれません。普通なら、天命ということで、死も受け入れるべきなのでしょうが、アレックスはこの何者かの裏を書いて、友人ともども生き延びようとするのです。そして、死が襲ってくるのには、ある規則性があることを彼は発見するのです。

と、この死の訪れる法則が出てくるあたりで、映画はアドベンチャーゲーム風の展開になってしまうのが残念です。死というものが理不尽で、人知の及ぶところではないからこそ、死の恐怖からは逃れられないのですが、これが何とかすれば回避できそうな見せ方をしてしまうのは、前半の不気味さが無効になってしまうような気がします。全てが死神のシナリオ通りならば、アレックス達が飛行機に乗らなかったというのも、死神のシナリオかもしれないですし、死神を出しぬこうなんて、もともと無理な話のように思えます。

脚本は、主人公と死神の力関係についてはかなり頭を悩ましたようで、結局そこにゲームのルールを持ちこんで、死神に一矢報いることができるという設定にして、後半の興味をつなぎました。しかし、その分、理不尽な死という、根本的な恐怖が薄れてしまったのが残念です。死神のシナリオなんて門外不出で、こちらの世界の人間には垣間見ることができないからこそ、死は得体の知れない不安と恐怖であり、逆に死の予見に震えることもないのです。それが、死を回避できるのだとしたら、逆に予見された死から逃れられないという、よりおぞましい恐怖にさいなまれることにもなります。私としては、主人公の予知能力によって、死神に勝つことができるのかという点に大変興味がありました。その決着は劇場でご確認頂きたいのですが、個人的感想としては、脚本、監督ともうまく逃げやがったなというところです。もう少し、何か見せてくれるのかと期待したのですけどね。

役者は若い連中がほとんどで、変わり者のヒロインを演じたアリ・ラーターがなかなかに印象的でしたが、後はあまり魅力的なキャラクターは登場しません。ショッキングなシーンもありますが、基本設定を怖がる映画だと申せましょう。殺人シーンに色々と工夫を凝らしてはいるのですが、具体的な殺人者が登場しないので、あまり派手に殺人シーンを見せるのは、得体の知れない怖さが薄れてしまうのです。まあ、そのあたりの賑やかな殺人シーンのおかげでB級ホラーの味わいが出ましたし、マジで怖いというレベルにならなかったのは、娯楽映画としては正解だったのかもしれません。シャーリー・ウォーカーの音楽が、大変シリアスに恐怖を盛り上げているので、雰囲気としての怖さは出ています。


お薦め度×死の怖さの見せ方がうまいです。
採点★★★☆
(7/10)
決着のつけ方が苦し紛れなのが残念。

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