written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
ビジネスコンサルタントとして勝ち組キャリアウーマンのリンジー(ドリュー・バリモア)はあまり男性運がよくないみたい。もうすぐ30に手が届くということで、若干焦り気味でもあった彼女に学校の先生ベン(ジミー・ファロン)がアプローチしてきます。これまで付き合った男どもとは一味違う庶民的で善意の持ち主であるベンにリンジーも惹かれます。でも、そんないい人がこれまでシングルだったのは何か訳ありかもという友人の忠告は見事にヒット。彼は、野球チームレッドソックスの筋金入りのファンだったのです。亡き叔父からもらったシーズン全部の特別席から、声援を送るベン。シーズン中はレッドソックスが全てに優先。そんなベンはリンジーを傷つけてしまい、リンジーはベンに別れを告げます。そして、ベンはある決心をするのですが、果たして二人の恋はハッピーエンドを迎えることができるのでしょうか。
まず、ベンの少年時代が回想形式で描かれるのですが、向こうでも、野球チームのコアなファンはいわゆる一般の人とは違う、ある種のオタク扱いされているのがわかります。レッドソックスのキャンプ地に出かけてバカ騒ぎしてる連中です。チームの歴史も細かいところまでよく覚えていて、話題のタブーとかもあったりして、傍目には、「迷惑じゃないけど変な人たち」です。家の中もレッドソックスだらけ。最初のうちはそんなベンに、まあ好きなことがあるのはいいわ、位に寛大に構えていたリンジーですが、自分よりもレッドソックスが大事だとわかってきて、とうとう大喧嘩してしまいます。
ベンをまずいい人として登場させて、二人のいいカップルぶりを見せるあたりがうまいです。でも、レッドソックスの事になると、何を置いても優先してしまうというファン心理をジミー・ファロンが嫌味になる手前で演じきったあたりは見事でした。別に自分がファンであることをリンジーにも強要するわけでもなく、一応は恋人には誠実であろうとするのですが、土壇場でボロが出てしまう。そんなベンに、もう一緒にやっていけないと思ってしまうリンジーの気持ちも理解できます。ベンが箸にも棒にもかからないような男なら、リンジーだって、ここまで傷つくこともなく、とっとと別れていただろうにと思わせるあたりは、結構リアルな恋愛映画になっています。
破局から、クライマックスまでの展開もなかなかうまく、ヒロインが自分の昇進のスピーチから、ベンの気持ちに気付くあたりが、大変微笑ましい盛り上がりを見せます。球場全体を巻き込むドタバタはやり過ぎじゃないのという気もするのですが、これが「みんなハッピー」のラストにつながるあたりはやっぱりうまいなあって感心してしまいました。よく、考えるとこれでこの先うまく行くのかなとも思うのですが、そんな疑問を忘れさせてくれる幸せな余韻は、娯楽映画はかくありたい、映画をお金払って観るのなら、こういう気分で映画館を出たいよねと思わせるものでした。
ドリュー・バリモアのラブコメというと「ウェディング・シンガー」「25年目のキス」「50回目のファーストキス」などがあるのですが、どれも、普通目のヒロインなのに、どこか周囲の人をいい人にしてしまう魔力(魅力)があるというものが多く、その結果、周囲も含めてハッピーエンドのなるというパターンが非常に心地よいコメディになっています。この映画でも、そのパターンを踏襲していまして、ヒロインを中心に周囲がいい感じの関係になっていくのをさりげなく見せています。そういう意味では、ファレリー兄弟というよりは、ドリュー・バリモアの映画になっていると言えそうです。
お薦め度 | ×△○◎ | ちょっと変だけどいい人ばっかのコメディの心地よい笑い |
採点 | ★★★★ (8/10) | よくできたコメディなのに、公開の扱いのヒドさは何事?プンプン! |
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