ファンタジア2000
FANTASIA 2000


2000年01月22日 東京 東京アイマックスシアター にて
ファンタジアの最新作は大画面を親子でご覧あれ。


written by ジャックナイフ
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1940年に製作された「ファンタジア」はクラシック音楽にのせてアニメーションの世界が展開するというもので、レオポルド・ストコフスキー指揮フィルハーモニア管弦楽団による演奏による世界初のステレオサウンドの映画でした。今回はジェームズ・レバイン指揮のシカゴ交響楽団による演奏で新しい楽曲新しい映像で作りなおしたものです。また、今回は、通常の35ミリフィルムによる通常上映に加えて、70ミリ幅フィルムによるIMAXシアター向けフォーマットも作成し、まずIMAXシアターでの公開となったものです。

IMAXと普通の映画の大きな違いはスクリーンがでかいということ、東京のアイマックスシアターでは、縦横18メートルという巨大スクリーンに70ミリの特別フォーマットのフィルムで上映するというもので、画面の鮮明さではまるで吸いこまれそうになります。特殊メガネによる立体映画で大変効果を発揮するのですが、今回の「ファンタジア2000」はメガネをかけない2Dの映像ですが、2Dの方が画面の大きさを実感できるという利点があります。

まずは、ベートーベンの「運命」から始まりまして、そのあと、レスピーギ「ローマの松」、ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」、ショスタコビッチ「ピアノ協奏曲第2番」、サン・サーンス「動物の謝肉祭」、デュカス「魔法使いの弟子」、エルガー「威風堂々」、ストラビンスキー「火の鳥」というラインナップが並びます。「運命」こそイメージ映像ですが、その後はそれぞれに具体的なイメージ、ストーリーを持ったものになっています。そのイメージは順に、「空とぶ鯨」「大都会の一日」「錫の兵隊」「フラミンゴとヨーヨー」「ミッキーの魔法使い」「ドナルドとノアの箱舟」「森の精、破壊と再生」というもので、コミカルなものから、泣かせるものまで、大変バリエーションが豊富です。カートゥーンのような「フラミンゴとヨーヨー」、CGを駆使した大スケールの「空とぶ鯨」、ライオンキングを思わせる「ドナルドとノアの箱舟」など次から次へと出てくるイメージは子供でも退屈しないだろうと思います。

唯一、「魔法使いの弟子」だけは、1940年版のものを絵も音もそのまま使っていますが、やはり古いという印象でして、音も今イチでした。今の作者たちが、当時の作者に敬意を払うという歴史的な意味はありますが、できれば、新しい録音で絵もリニューアルして欲しかったように思います。逆に今回の映像と音が、素晴らしいということも言えると思います。確かに今回は、「春の祭典」のような歴史ロマンのようなものも、「アベマリア」のような神聖なイメージもありません。でも、当時の「ファンタジア」には、今回の「空とぶ鯨」の映像と音の圧倒するようなパワー、「ドナルドとノアの箱舟」のような泣き笑いエピソードはなかったと思います。両者の優劣はつけがたいです。

ただし、1940年の「ファンタジア」は音楽が主で、映像がそれをイメージ化しているような傾向がありまして、今回のほうは、どちらかというと音楽からイメージを自由に発展させ、かなりストーリー性を前面に出しているという印象がありました。確かにアニメーション映像と音がシンクロするということがそれだけで驚きの対象となった時代に比べたら、今の方がエンターテイメントとしての要求度が高くなっているといえそうです。

映画を観終わって、こういう映画を子供の頃、観ることができたらどんなによかったろうと思いました。この大画面の絵と音は相当なインパクトで残りますもの。大人にとってはかつて聞いたことのある曲でしかない「威風堂々」も、子供にとっては初めて聞く音楽かもしれません。そして、どこかの式典などでこの曲を聞いたとき、「あ、あのファンタジアの音だ」とドナルドの映像と共に思い出すことができたらすごくうれしいのではないかと思います。また、この映画を観ることで音楽への興味が湧いてくるかもしれません。親子連れでご覧になるのをオススメしたい一品なのでした。


お薦め度×ビデオでもミニシアターでもなく大画面で観て。
採点★★★★
(8/10)
選曲やイメージのバリエーションが見事。

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