written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
今度、アンテナ社の作った新ゲーム「イグジステンズ」のお披露目会は設計者のアレグラ(ジェニファー・ジェイソン・リー)も立ちあっています。そこに現れた若い男が銃を発砲、どうやらゲーム文化に反感を持つ分子がいるようです。銃弾で負傷したアレグラは、アンテナ社員のテッド(ジュード・ロウ)に救われて逃げ出します。このゲームは、でかい耳というか大人のオモチャのようなゲームパッドを自分の脊髄につないでバーチャル世界に入りこむというもので、ちょっと見は、胎児を引きずってるようなチョー変なルックスになります。こんなゲームをやってると現実とゲームの区別がつかなくなりそうですけど、あ、やっぱり?
デビッド・クローネンバーグ脚本監督作品です。「スキャナーズ」「ザ・フライ」「戦慄の絆」など尋常でない世界をさらに趣味に走って描く人です。私は「裸のランチ」を観て、「あ、もうついてけない」と思って「クラッシュ」はパスしてしまったのですが、今回は比較的わかりやすい話だという評判を聞いて食指が動きました。確かにわかりやすい話ではありますが、強引な世界観、ドロドロな内臓感覚は相変わらずという印象でした。やっぱり変態だよなあ、これ。
何しろ、ゲームをプレイするためには、背中に穴をあけなきゃいけなくて、その穴からねじれヒモのようなコードを指してその先のゲームパッドは、プヨプヨのでかい耳に追加突起つきという代物。このゲームパッドは両生類の卵を培養したもので、中はモロ内臓ドロドロです。これでゲームやると完全にバーチャルリアリティの中に入りこんでしまうんですって。そして、ゲームに入ってからも、そのゲームパッドの工場が舞台なんですが、これが奇形の魚のはらわたをさばく作業をしているって設定で、双頭のトカゲはでてくるは、それの料理を食うことになるは、給仕の顔を銃で撃ちぬくは、こんなゲームのどこが楽しいのと思うような展開なのですよ。このグチャグチャドロドロ感にほとんど必然性を感じませんでしたから、多分、クローネンバーグの趣味なんでしょうね、きっと。
背中にゲームをつなぐために直径2センチほどの穴をあけるという設定も、何だか変だなあって思ってたら、ヒロインの背中の穴に、主人公が舌を入れようなんてショットがあって、「あ、やっぱり、そうくるの?」と、妙に納得してしまいました。フロイト流かどうかわかりませんが、とがったものと穴っぽこは、みな性器のシンボルみたいです。この穴によじれたへその緒みたいなコードを挿入して、奇形胎児のようなゲームパッドにつなぐんですよ。想像しても、誰も具象化しないような絵をモロに見せられると、「変態じゃん」と思いながらも、「よくやるなあ」と感心もしてしまいました。
さて、見た目のグチャグチャの他に、ストーリーとしてはバーチャルリアリティの危うさも語っています。そのゲームの中に入ってしまうと、その現実感に、現実世界の方がどんどんゲームの世界に近づいてしまうというのは面白いと思いました。現実世界にいるにもかかわらず、これがゲームの世界ではないかと思えてくるということです。まあ、これは格別目新しい趣向ではないのですが、この映画では、そこを主人公に語らせるなどして、わかりやすく絵解きしているという印象はあります。
ただ、おかしいと思ったのが、ゲームの登場人物がこちらの対応によっては、同じ動きを繰り返したり、反応しなかったりするというところ、これって昔のアドベンチャーゲームみたいです。こんな動きをするゲームなら、現実と明かに違うって明々白々で、ゲームと現実を混同することは難しいと思うのですが、このあたりの無頓着さはご愛嬌なのでしょうか。
役者では、主人公二人の他に、イアン・ホルム、ウィレム・デフォー、クリストファー・エクルストンといったなかなか豪華が面々が脇で登場します。また、ハワード・ショアの、フルオーケストラによる不安だけど力強い音楽が、観客をミスリードするためのハッタリとしてうまく機能しているという印象でした。
お薦め度 | ×△○◎ | いわゆる内臓趣味というか変態趣味だなあ |
採点 | ★★★☆ (7/10) | ゲームと現実が曖昧になるという設定は面白いけど |
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