エンド・オブ・デイズ
End of Days


2000年01月07日 神奈川 相鉄ムービル3 にて
シュワちゃん主演のホラーアクション、ラストがなかなか大盛り上がり。


written by ジャックナイフ
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1999年の終わり、地の底から何か得体の知れないものが現れて、一人の男(ガブリエル・バーン)に憑依しました。一方、民間の警備員ジェリコ(アーノルド・シュワルツネッガー)は自分の警護している客が狙撃者に狙われ、その狙撃者が神父であることに驚くとともに、どうやら若い女を捜していたらしいことに興味を持ちました。一方、男には信奉者がいるらしく、彼も同じ女を捜しているようです。ジェリコが、その若い女クリスティーン(ロビン・タニー)を訪ねると何と彼女は男たちによって殺されかけているではありませんか。何とか彼女を助けるのですが、なぜ命を狙われたのか彼女にも見当がつきません。神父たちと得体に知れないものの両方から狙われるクリスティーン、あんたは何者?

物語は、1979年から始まります。クリスティーンが生まれたとき、彼女は病院で不気味な連中に蛇の血を飲まされちゃいますし、バチカンでは何だか大騒ぎしています。どうやら、彼女はとんでもない運命を背負ってしまったらしいのですが、その運命の日が1999年の大晦日だったのです。それに関係するのが聖書、「千年の時が終わりに近づき、サタンが牢獄から解き放たれる」のだそうです。そんな、世界の終わりが近いヤバそうな状況下で、我らがシュワちゃんが活躍するというわけなのですが、今回の彼はいつもの自信満々のキャラクターではありません。何やら登場シーンで自殺ごっこやらかしますし、悩めるヒーローになっていまして、この映画全体が彼への救済の物語ともなっているのがミソです。なるほど、世紀末だから、こういう物語がいつかは出てくるとは思っていましたが、シュワルツネッガー主演のアクション大作として登場するとは思いませんでした。

いわゆる、神とは立場を反するサタンなんですが、これが現世の人間に部下をたくさん持っているというのが面白いところです。サタンの信奉者が実際どのくらいいるのかはわかりませんが、その従順な僕(しもべ)ぶりを見ていると、オウムの信者もこんな感じだったのかなあって、妙に感心してしまいました。でもサタンの信者がかなりたくさんいるとすれば、神と悪魔の戦いというのは、正義と悪の対立というより、マジョリティである神と、マイノリティである悪魔の派閥抗争のような気がしてきました。この映画は基本的に神のサイドに立って描かれていますから、結局、悪魔は徹底的に排除されるべきものであるとされていますが、果たして本当のところはどうなのかなって気がしてしまいました。神を崇拝するか、悪魔を崇拝するか、結構紙一重のところにあるのかもしれないなあって。多分、時を同じくして、信仰とは何かを考えさせられる「ジャンヌ・ダルク」を観たせいかもしれません。とくに、神側の教会の人間が、方針の違いで対立してしまうあたりの内輪もめが面白いと思いました。宗教も政治も公園ママも、結局は人間の集まりだとすれば、そこに発生する対立や葛藤は同じようなもののようです。

この映画が、神側のプロパガンダ映画かどうかは、この際置いといて、娯楽映画として観たとき、恐怖とアクションを色々と盛りこんで、娯楽職人ピーター・ハイアムズが面白くて盛りあがる映画に仕上げています。最近は、「タイム・コップ」「サドンデス」なと詰めが今イチの映画が多くて、かつての「カプリコン1」「プレシディオの男たち」の勢いがなかったのですが、前作の「レリック」でモンスターホラーとスペクタクルの融合に成功して、また復活の兆しが感じられ、若干の期待がありました。脚本が、最初にネタばらしをしておきながら、その後の展開で勿体つけているという妙な構成をとっていたり、ストーリー展開がセリフに頼りすぎているのがマイナスなのですが、要所要所のアクションシーンでハイアムズが点数を稼いで、ラストの盛り上げで結構感動させてくれます。完全に新ネタというわけではないのですが、シュワちゃんの映画でこういうラストはちょっと意表を突かれました。その決着は劇場でご確認下さい。

アクションシーンでは、オープニングの狙撃者の追跡がロングショットをうまく使って迫力十分に見せ場になっていました。ハイアムズはほとんどの映画でシネスコ画面を使うという、ジョン・カーペンターのようなこだわりを感じさせる人ですが、この映画でも、アクションシーンがシネスコ画面にびしっと決まるのが見事でした。ゲロゲロメイクも、火薬の量も、モンスターもたっぷりという大盤振舞いでして、その上に感動のラストというのは、豪華でボリューム十分なお正月映画にふさわしい作品と申せましょう。まあ、悪魔とエッチしちゃうというのがメインストーリーですし、グロなショックシーンなどかなり刺激の強い映画ではありますから、ご家族向けとは申しかねますが、カップルで観るぶんには盛りあがれるのではないかしら。

脇役陣では、サタンを演じるガブリエル・バーンがおかしさと怖さを絶妙なブレンドで見せています。ヒロインのロビン・タニーはこういうヒロインには「?」なルックスなのですが、アメリカの処女のイメージってこんな感じなのかもしれません。また、ロッド・スタイガー扮する神父がこの映画の唯一の良心のようなポジションをとっているのも興味深いところです。


お薦め度×結構グロテスクなシーンもありますのでご用心。
採点★★★☆
(7/10)
後半のアクションの畳み込みはお見事。

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