カスケーダー
Cascadeur


1999年11月22日 東京 渋谷シネパレス にて
ドイツのスタント野郎の映画ですって、でもこれ面白いの?


written by ジャックナイフ
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ナチがソ連から奪って隠したといわれる「琥珀の部屋」を巡って何やら争奪戦が繰り広げられているようです。片や、殺し屋みたいのを引き連れた、大佐という人物、こなたに控えしは、美術館の研究生クリスティ(レグラ・グラウヴィラー)。そこに元スタントマンのビンセント(ハーディ・マーティンス)が、クリスティを助けたのが縁で、争奪戦に巻きこまれてしまいます。追いつ追われつの追跡の末、果たして琥珀の部屋を手に入れるのはどっちだ。

ドイツ映画の中でもまっとうな娯楽映画が日本公開されるのは珍しいのではないのでしょうか。この映画は、世界的な美術品を巡るアクション映画で、その中でもスタントシーンの比重の高い映画と申せましょう。それもそのはず、この映画の監督・共同脚本・主演を一手に引きうけているハーディ・マーティンスというのが有名なスタントマンなのだそうです。なるほど、だからスタントシーンが山ほどあるのもうなづけるのですが、もう一つのなるほどがありまして、だから話がつまらないのかということにもなりました。

アクションシーンはすごいです。特にゴーカートとバイクの追跡シーンの迫力は只事ではないものがありましたもの。地下鉄の駅に入ってからの通行人を巻き込んだスタントも見応え十分でしたし、後半のカーチェイスもクレーンに突っ込んでいくシーンなど、とにかく見せ場を並べたサービス精神は買いです。

しかし、要はそれだけなんですよ。物語の部分は果たしてどうなってたんだろうというと、これがかなりお寒い状況でして、私がバカなのかもしれませんが、琥珀の部屋がどうなったのかを思い出そうとしてもどうしても思い出せないのです。スタントシーンを生かすためにストーリーを組み立てたというようなことがプログラムに書いてありましたが、もしそうであれば、よほどのライターを引っ張って来なければきちんとした映画になる筈はありません。それを自主映画のノリで全部やってしまったのでしょうか。スタント一級、後はムチャクチャという感じの映画になってしまいました。アクションもの、特にスタントマンが体を張ったアクションがお好きの方以外には、ちょっとおすすめするのをためらってしまう映画になってしまいました。

主人公の二枚目っぽさは、うまく行けば、ドイツのジャッキー・チェンになれる可能性はあるかもしれませんが、脚本・監督までやるのはどうかと思います。特にこれだけの楽しめるアクションを盛りこみながら、ほとんどユーモアの入る余地がないってのも今イチです。地下鉄駅でゴーカートに犬が引きずられるシーンくらいしか思い当たらないのは、アクションをドラマに生かすことができていないということなのでしょう。スタントシーン自体がすごいのですから、下手なドラマにしないで、スタントシーンとそのメイキングだけの方がまだ楽しめたかもしれません。物語の設定も、主人公が金目当てなのか、復讐なのか、ヒロイン目当てなのかが不明なので、なぜそこまで関わるのという展開になっていますし、ヒロインがまた魅力に乏しいのですよ。今イチのヒロインというところだけはジャッキー・チェンの影響下にあるのでしょうか。

こうして観ますと、007がなぜ面白いのかがよくわかるということにもなります。やはり、物語ありきでそこからアクションシーンが設計されていかないと、映画としては面白いものにはならないということでしょう。スタントショーと、アクション映画はまるで違うものなのですが、私としては、スタントショーにお金を払う気もありますし、アクション映画をお金を払う気もありますが、この映画はその両方を欲張った結果、どっちもダメじゃんということになってしまったように思います。仲間内で楽しむならともかく、金を取ってお客に見せようとするなら、ショーか映画かどちらかに徹して欲しいというのは、きつい要望なのでしょうか。


お薦め度×スタントに興味のある人には見応えあるサンプル。
採点★★☆
(5/10)
私から見た限りではこの位がせいぜい。

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