偶然の恋人
Bounce


2001年3月4日 神奈川 横浜オスカー1 にて
恋に落ちてはいけない二人の成り行きは?


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


雪のシカゴ空港、ロスへの便を待つ広告マンのバディ(ベン・アフレック)はバーで知り合った男グレッグに自分のチケットを譲ります。ところがその便が墜落してしまいます。自暴自棄になったバディはアル中になり1年後に退院します。そこで彼はチケットを譲った男の家族の様子を伺います。二人の息子と暮らす未亡人アビー(グウィネス・パルトロウ)に、バディは正体を隠して仕事の契約を助けたりしているうち、お互いに魅かれあうようになっていきます。バディは、グレッグの死の責任を感じて、彼女を支援していたのですが、それが愛情に変わった時、全てを告白する時が来るはずだったのですが...。

ベン・アフレックという俳優さんは、顔がでかくて長い、小顔のパルトロウと寄り添うと、何かマヌケな感じです。このマヌケな感じが「200本のたばこ」「恋は嵐のように」「レインディア・ゲーム」といった映画ではうまく生かされていました。今回のアフレック演じるバディという男は、広告会社をトップで自信家でかなり鼻持ちならない奴でして、いつもマヌケな善人とはちょっと異なるキャラクターになっているのが、まず印象的でした。いわゆるやな奴なんですが、彼が自分の譲ったチケットの飛行機が墜落し、自分の身代わりに妻子持ちの男が死んでしまったことで、かなり精神的なダメージを負うところから、物語は始まります。

リハビリから戻った彼が、身代わりに死んだ男の未亡人の様子を伺い、不動産屋で働く彼女に自分の事務所の移転先を依頼します。これが縁で二人の仲が急接近となるのですが、バディはなかなか自分の正体を明かすことができないまま、未亡人への想いが募ってしまうのです。一方のグウィネス・パルトロウ演じるヒロイン、アビーは二人の子供を育てながら働くワーキングマザーですが、キャリアウーマンというには、パっとしない仕事ぶりです。また、夫の死を離婚だと、バディにウソをつくあたり、特別じゃない普通の女性を感じさせるキャラクターになっています。バディに魅かれる一方、会話は夫との思い出話ばかりだったりするのが、微笑ましくも切ないのですよ。

二人の仲は急速に接近となるのですが、肝心の事実をまだアビーは知りません。いつかは伝えないといけないのにと思っているのですが言い出せない、その決着は劇場でご確認下さい。最終的には、アビーは事実を知ることになるのですが、それでも二人はやり直すことができるのでしょうか。あくまで、二人が並の人なのが共感を呼び、ラストの余韻が暖かいというのは言ってしまいますね。

後半、アビーの夫の死は自分のせいだと思いこんでいたバディが、その責任を感じているのは彼だけじゃない事を知るあたりがホロリとさせます。この「ホロリ」というさじ加減がこの映画のうまさだと思いました。脚本・監督のドン・ルースは、極力愁嘆場を避けて、ヒロインが夫の死を知るシーンをロングで捉えたり、アビーが夫の死の真相を知るシーンも省略を使うなど、泣きのシーンで引っ張ることはしませんでした。先ほどの「ホロリ」のシーンも描き方次第、大泣かせの見せ場になったかもしれないのに、それを「ホロリ」「ジーン」のレベルに押さえているのが大変好印象でした。逆に、人によっては、ドラマチックな盛り上げが足りないとご不満に感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、私としては、この映画の節度を支持したいと思いますし、この節度が、これまでの現代劇におけるパルトロウの、最高の演技になっていると思います。いいんですよ、彼女。

一方のベン・アフレックも、妙にドラマチックな演技をせず、持ち味(?)のボーっとしてるところをうまく生かして、一生懸命な善意を好演しています。また、脇役がなかなかよくて、「スピーシーズ」のナスターシャ・ヘンストリッジが、セクシーインテリを好感を持てる形で演じている他、ヒロインの息子を演じたアレックス・D・リンツがクサくならない演技で、家族思いのキャラクターをきちんと演じきっているが特筆ものでした。また、バディのゲイの部下を演じたジョニー・ガレッキがいいところをさらっています。


お薦め度×意外や静かな展開に好き好きがでるかも。
採点★★★★
(8/10)
尋常じゃない設定にまっとうに挑む二人の姿に好印象。

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