完全犯罪
Best Laid Plan


2000年04月08日 東京 日比谷シャンテシネ2 にて
お金に困った末の一芝居、でも余計目に困った。


written by ジャックナイフ
E-mail:njacknife@aol.com


ニック(アレッサンドロ・ニボラ)は友人のブライス(ジョシュ・ブローリン)から、相談を持ち掛けられます。ある女と寝たら、その女にレイプだと騒がれて困っている、その女は地下室に手錠で監禁していると。実はその女とは、ニックの恋人リサ(リース・ウィザースプーン)で、ある目的のためにブライスに接近したのです。ニックは犯罪に手を染めてしまい、そのために、緊急に金を作る必要があって一計を案じたのですが、事態が思わぬ方向に進み出しました。果たして、この3人の手にする結末とは?

主要登場人物は上記3人で、後は麻薬関係者が少しという、大変シンプルなつくりで、ある一夜の事件を描くサスペンスです。主人公のニックはおっとりした二枚目タイプだけど、なんとなく優柔不断な感じもします。大学教授の父親が死んだのですが、保険金は下りないは、税金の滞納があって、家も差し押さえられるは、金に困っているという状態です。そんな彼に職場の仲間がちょっとヤバめの仕事の誘いをかけてきて、その誘いに乗ってしまいます。麻薬ディーラーのブツをかすめとる仕事の運転手というもの。ところがそこでトラブル発生、彼はすぐに1万5千ドル作らないと命がないと脅しをかけられてしまいます。そんなところに、昔の友人が町に帰ってきます。その友人ブライスは、金持ちの息子で大学の講師をやっている、いかにもボンボンというタイプ。ニックにとっては死ぬか生きるかの瀬戸際です。そこで、ニックはブライスから金をかすめとろうという計画を立てます。そして、ニックの恋人リサも、ニックのためにその計画に加担することになるのです。

ところが、そこでブライスがニックにとって予想外の行動をとってしまったため、窮地に立つニックとリサ。このあたりから、段々と生きるか死ぬかのヤバい展開になってきます。当初の二人のワナにかかったブライスも彼にとっては大ピンチなのですが、その極限状況の中で、さらに悪いことが起こるのです。その悪いこと、そしてその3人の迎えた朝の結末は劇場でご確認ください。その決着のつけ方は、思わず「うまい」と唸ってしまう出来栄えでした。単なる犯罪サスペンスに終わらない、恋愛ドラマであり、人間ドラマにもなっているのが見物です。見終わって「面白かった」だけでなく、「よかった」という印象まで持ちましたもの。

お話の面白さもさることながら、主演の3人がいい演技を見せて、ドラマに奥行きを出すことに成功しています。一見、いい人のニックがどんどんとんでもない方向に話を進めていくことになるあたりが、彼の演技で説得力が出ました。普段ならやさしさとなる筈の、彼の優柔不断さが、事態をどんどん悪化させていきます。「アイ・ウォント・ユー」でもヒロインをつけまわすわりには悪党に見えない曖昧なキャラクターを演じたアレッサンドロ・ニボラの好演が光ります。一方の、ヒロインのリサは、いかにもそこらへんにいそうなおネエちゃんになんですが、自分の恋人の命が危ないとわかってからの献身ぶりがかわいいです。そんな、彼女がとてつもなくヒドい目に遭わされるのですが、その結末にはホロリとさせられてしまいました。見た目はピグモンみたいなウィザースプーンですが、段々と魅力的に見えてくるのは演技力によるものでしょうか。そして、ブライス役のジョシュ・ブローリンは金持ちのボンボンのいやな奴を説得力のある演技で演じきりました。単にだまされるだけの役どころにならず、かつコミカルな味わいが出たのも、彼の好演によるところが大きいです。

要所要所は、舞台劇のようなテンションの高い熱演で盛り上げる一方、そのミステリーの仕掛けは映画ならではのものがありまして、ドラマとしての完成度はかなり高いのではないのでしょうか。1時間33分という最近の映画にしては短めの時間で、伏線を散りばめて、過不足なくエピソードを積み上げたイギリスのマイク・バーカーの演出力は評価されてよいと思います。映画の作りとしては小品ということになるのでしょうが、その中できっちりお金のとれる映画になっています。


お薦め度×小品だけどストーリーの面白さで見せる。
採点★★★☆
(7/10)
踏んだり蹴ったりのヒロインにラストでホロリ

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