written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
元CIAエージェント、ジェイク(スティーブン・セガール)の娘ジェシカが友人達とタイを旅行中に武装集団に拉致されてしまいます。ボーイ・フレンドは殺され、友人の上院議員の娘とジェシカを人質に、過激派グループの釈放を要求してきます。ジェイクは自らタイに赴き、情報収集を開始しますが、謎の連中に命を狙われます。そして、調査を進めるうちにこの一件が過激派グループの犯行ではないらしいことがわかってきます。一体、この誘拐劇にはどんな裏があるのでしょうか。
ジャン・クロード・ヴァン・ダムの映画がなかなか来ないなあと思っているうちに、スティーブン・セガールの映画は続々と、かつ細々と公開され続けていたようです。「DENGEKI」くらいしか観てなかったのですが、久々の沈黙シリーズ、かつ監督が、アクション監督として有名なチン・シウトンだけにどういう映画だろうという期待もありました。ただし、いちまつの不安もありまして、リアルで重いセガールの殺陣と、ワイヤーでビンビン人間を飛ばすシウトンのアクションがどう噛み合うのかというところが気がかりでもあり、期待でもありました。
オープニングのタイの街中のアクションは銃撃戦なんですが、ワイヤーアクションも入れて派手に動き回って楽しませてくれます。ここで、セガールの相棒を演じるバイロン・マンが重いセガールと対照的に軽快なアクションを見せて、後半も二人のコントラストでアクションにメリハリをつけています。相棒が誤射で子供づれの母親を撃ち殺したことを悔いて仏門に入ってるという設定はなるほどと思わせるのですが、それを誘拐犯の捜査にカムバックさせるというのもすごい展開でした。その相棒の尊師がジェイクに肩入れして、護符をくれたりするあたりも、へえーという感じ。
娘が誘拐され、ジェイクがタイを訪れて、行く先々で怪しげな連中に襲撃されるという趣向は、定番といえば定番な展開ですが、アクション演出が、セガールを中心に敵役の皆さんが飛び回るという構成で、かつセガールのカットが少なめなので、セガールがどこまでアクションしているのかわかりにくいという映像になってしまっていたのが残念でした。スローモーションの多用も、セガールの一撃必殺のムダのない動きを描写するには不向きだったように思います。とはいえ、アクションシーンとしての見せ場としてはよくできてまして、銃撃戦の多い映画なのですが、それよりも体技の方が印象に残る映画に仕上がったのは、本編、アクションともにシウトンが演出しているからでしょう。
ストーリーは、イスラム過激派の犯行かと思わせておいて、黒幕は別にいたという、それほどの目新しいものではなく、ラストは、犯人のアジトにセガールとその相棒が二人で乗り込んで、何十人という武装した面々を撃ちまくるという、無理やりな設定になっています。まあ、最強オヤジのセガールならそのくらいのことやりかねないという気にさせるのですが、そこに、主人公に呪いをかけて動きを封じようという趣向が入ってきて、これが何だか笑えてしまうのですよ。悪の呪術の師匠みたいのが呪いをかけている一方で、僧侶たちがお経を唱えて、その呪いを送り返そうというのを、アクションシーンとのカットバックで見せるのですが、シウトンの演出は大マジメなのが、何かおかしいのですよ。
クライマックスで、誘拐の黒幕である将軍との1対1の戦いは、さすがにセガールの重量感のあるアクションが中心になるのですが、ここにワイヤーワークを入れないかわりに、CGを使って、飛んでくる矢を正面から真っ二つに斬るといった技を見せるあたりは、その昔「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」でアクションとSFXの融合をやってのけたシウトンらしいこだわりのようなものを感じてしまいました。とはいえ、たった二人に全滅させられる、将軍の部隊って何なの?とは思うんですけどねえ。
アクションシーンの隙間をストーリー説明で埋めていくという構成なので、観ている間は退屈しませんし、映画としてのつくりはきっちりしています。ラストの将軍の軍隊が弱すぎといった瑣末な(?)点を除けば、セガールのラブシーンもあるし、撮影も美しい絵を切り取ってますし、アクション映画に必要なものは一通りそろえています。特にマーク・セイヤー・ウェイドによる音楽が、アクションシーンの派手にならすのと、シリアスシーンでのメロディアスな音との両方でいい味を出しており、映画の格上げに貢献しています。後、娘が誘拐され、セクシーなビキニ姿のまま監禁されるというのが、いかにもサービスカット的な見せ方になってるのもご愛嬌でして、この娘を演じたサラ・マルクル・レーン嬢にはまた、別の映画でお目にかかりたいと思った次第です。
お薦め度 | ×△○◎ | スティーブン・セガールは見た目最強だからか、ラストに一工夫。 |
採点 | ★★★ (6/10) | アクションの定番は押さえた手堅さは好きなんだけど。 |
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