written by ジャックナイフ E-mail:njacknife@aol.com
パナマのジャングルで演習中だったレンジャー部隊7人が消息を絶ちます。調査に向かった救助隊が発見したのは、生存者一人と重傷者一人、そして死体が一つ。生存者のレイモンドの取調べに元軍人で今や汚職の疑惑のある麻薬捜査官トム(ジョン・トラボルタ)が呼び出されます。実際の取調官オズボーン大尉(コニー・ニールセン)は何でこいつが呼ばれるんだと不満げですが、どうやら尋問のプロフェショナルらしくレイモンドの口を開かせることに成功します。この部隊のウエスト軍曹(サミュエル・L・ジャクソン)はどうやら鬼軍曹らしくて隊員の恨みを買っていたらしいこと、そして、この事件に麻薬が絡んでいるらしいところがわかってきます。果たして、嵐の夜の訓練で何が起こったのか、そして、残りの4人はどこへ消えたのか。
代表作は「ダイハード」になるのでしょうか。ジョン・マクティアナン監督の最新作です。「プレデター」「トーマス・クラウン・アフェア」など作品の傾向がつかみにくい人でして、今回はサスペンスミステリーものの一編になっています。嵐の夜のアメリカ軍の基地という限定された時間と空間の中で、ドラマは謎解き風の展開を見せます。そもそも一体ジャングルの中で何が起こったのかもよくわからないし、なぜ麻薬捜査官のトムが呼び出されたのかもはっきりとしていません。全てが謎のまま展開するストーリーですので、観客が置いてけぼりを食わされてしまう恐れがあるのですが、マクティアナンの演出は雰囲気と役者の演技、そして、視覚的なインパクトを使って、観客の興味を引っ張っていく事に成功しています。
映画は基本的には関係者の証言で成り立っています。その中心となるのは、生き残った二人の兵士でして、その二人の言い分にも食い違いがあることから、事実へとなかなかたどり着くことができません。ブライアン・ヴァン・ホルト、ジョバンニ・リビージの二人が演じた生存者の証言のどちらに信憑性があるのか、この映画では、キャスティングがなかなか面白く、その分、観客を混乱させるのに成功しています。生存者二人の他にも、ティ・リッグスやハリー・コニックJr、ティム・デイリーといった面々が善悪どちらにも転びそうなキャラクターを好演しています。
二転三転するストーリーから、かなり意外な結末にたどり着くのですが、ジェームズ・ヴァンダービルトの脚本は何とか辻褄あわせには成功しているようで、特別そんなのおかしいというところはなかったように思います。ただし、何でそこまで、と思う箇所はありまして、要は手の込んだ仕掛けのために物語があるような印象なのです。自分がオズボーン大尉になって、ロール・プレイング・ゲームのようなつもりで観ていると楽しめる映画と申せましょう。ただし、映画としての評価はそれ以上のものにはならなかったようで、観終わって、展開の面白さ以外のものが残らないのは、ちょっと残念でした。豪華な役者やスタッフ、嵐の一夜といった仕掛けがゲームを盛り上げるためだけに使われてしまったという印象なのです。ですから、後味としては、「ああ、面白かった」というのは残っても、映画を観たという満腹感にまでは至りませんでした。
また、この映画の予告編で、やたらとどんでん返しを強調しているのも気になりました。結末の意外性は、そういう予備知識があっても、なかなか気付きにくいものだとは思いますけど、あまり、そういうところを前面に出して宣伝するのもいかがなものかと思ってしまうのでした。決してつまらない映画ではありませんし、観ている最中はかなり楽しんでしまいましたので、決してけなすつもりはないのですが、映画館へ足を運んでお金を払って観る時に、無意識で期待しているものもありまして、観終わって、ちょっと物足りないと思ってしまうところもあるのです。
お薦め度 | ×△○◎ | 先の読めないミステリーとしてなかなか面白い。 |
採点 | ★★★☆ (7/10) | かなりヤバイ展開の辻褄合わせはうまく行ったようです。 |
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