200本のたばこ
200 Cigaretts


1999年12月4日 東京 恵比寿ガーデンシネマ1 にて
ライトなラブコメだけど、役者の顔ぶれが楽しい一品。


written by ジャックナイフ
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1981年の大晦日のNY、ルーシー(コートニー・ラブ)とケヴィン(ポール・ラッド)の二人は、友人のニューイヤーパーティに行こうとタクシーを走らせます。ケヴィンは彼女に振られたばっかでヨレヨレ状態、そんなケヴィンとルーシーはいわゆるいいお友達状態。一方パーティの主催者モニカ(マーサ・プリンプトン)は準備に忙しいものの、誰も来ないんじゃないかしらと不安そう。確かにいつまでたっても誰も来ないみたい。そして、シンディ(ケイト・ハドソン)とジャック(ジェイ・モア)のカップルもこのパーティの招待客のようだけど、まずはデートで盛りあがろうという気分。この他、バーテンダーやらティーンエイジャーコンビやら、みんなモニカのパーティに行くつもりみたいなのに何だかんだの理由がついて、なかなかパーティにたどり着けません。そんな皆様が大晦日のささやかな出会いに遭遇するのですが、果たしてその結末は?

1981年といえば、あの頃は私もまだ若かった。こんなオヤジになる筈ではなかったのにと、しみじみ思ってしまう。そんな時分のお話です。この当時のアメリカの大晦日って、みんなが騒いで酒くらって年越しエッチをしなきゃならんような空気があったのでしょうか。ともかく、シングルで年越しはかなわんという連中がうぞうぞと登場し、そして、そこに様々な出会いとすれ違いが展開するというストーリーです。特に誰が主人公というわけではないのですが、メインになるのは、ルーシーとケヴィンのくされ縁カップルとパーティの主催者モニカということになりましょうか。

登場する役者陣が若手の面白い面々が揃いました。スキャンダルで有名なコートニー・ラブは意外といい女ぶりで好印象でしたし、「私の愛情の対象」のポール・ラッドは情けないけどみじめにならないキャラクターを好演しました。また、私にとってはお久しぶりのマーサ・プリンプトンがこの物語のキーとなるにぎやかなキャラクターでコメディエンヌとしてのいい味を出しました。その他にも「ザ・エージェント」のイヤミな同僚ジェイ・モアが、自意識過剰でやな奴だけどでも二枚目というおかしな奴を飄々と演じてますし、ベン・アフレックがヌボーっとしたヤッピー寸前の若造を影を薄くして演じているのも面白かったです。この他にも、子悪魔全開のクリスティーナ・リッチと、それに付き合わされて文句タラタラのちょっとオバさん入ったギャビー・ホフマンのティーン・エイジャーコンビもうまいものです。不気味キャラが多いジャニーン・ガラファロはここでも得体の知れないキャラクターを楽しそうに演じています。特に初めて観たケイト・ハドソンがおかしさとかわいさで大変印象的でした。後で、プログラムを見るとゴールディ・ホーンの娘ですって、この先、母親の後継者になる可能性も十分の、キュートで変なヒロインぶりでした。

そういう役者の面白さで楽しむことができますし、たくさんのキャラクターのエピソードをつなぎながら、全体の構成もテンポよくまとめたリサ・ブラモン・ガルシアの演出の手際もうまく、ライトコメディとして楽しめる作品に仕上がっています。強いて難をあげれば、ラストのパーティへ、全部のドラマのパーツを収束させるのには無理があったかなというところで、これは脚本の責ではないかと思った次第です。

そして、具体的なパーティの様子は画面上では、登場しません。そのニューイヤーパーティで登場人物のほとんどが新年を迎える新しい相手を見つけてしまうのですが、そのうち若干名あぶれてしまう方々が出てしまうというのも面白い趣向でした。誰と誰がどうなって、誰があぶれてしまうのか、そのあたりのおかしさは劇場でご確認下さい。

1980年代というのは、私のようなオヤジにとってはつい最近のことでしかないのですが、この映画では、その80年代に対するある種のノスタルジアも感じさせるのがちょっと意外でした。ニューヨークは危険極まりない場所であり、ヤッピーが幅をきかせていて、やたら実体のない、にぎやかさが先行した時代という捉え方をされています。日本でもバブルへの登り坂で、就職も売り手市場で、若者は学生運動からも、就職活動からも解放されたこの世の春を迎えていた時代です。聖子ちゃんカットが流行り、女子大生がブランド化し、全ての価値観の多様化が定着したのもこのころです。これは、逆に今の90年代末という今をどういう時代なのかと考えるヒントにもなります。

この映画の登場人物たちは何だかんだと言いながら、とびきりハッピーな連中です。このハッピーさは、ひょっとして何かの悪い前兆なのではないかと思わせるくらいのご陽気さなのが、ちょっと気になりました。この世紀末にふた昔前に幸せそうな若者を描くのは、何か意図でもあるのでしょうか。


お薦め度×いわゆるボーイミーツガールもの。
採点★★★☆
(7/10)
なーんか他愛ないけど憎めない小品。

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