夢inシアター
採れたて情報館/No.81


ジャックナイフのちょっとサントラ'99年4月


今回は新作プラスアルファのご紹介です。


グッドナイト・ムーン

ジュリア・ロバーツとスーザン・サランドンの役者の良さをうまく引き出したホームドラマ音楽を、「プライベート・ライアン」のジョン・ウィリアムスが担当しました。現代のホームドラマというには、クラシックで重厚なタッチが、意外な印象なのですが、シリアス展開のこのドラマを見事に支えています。厚みのあるストリングスにピアノやオーボエが絡んだ1曲めで、映画のカラーを確実に耳に届けてくるあたりはさすがにベテランらしい仕事ぶりです。登場人物が悩んだり沈み込んだりといったシーンの多い映画ですが、ウィリアムスの音楽の格調の高さがドラマを湿っぽくしない方向にうまく機能しています。また、クリストファー・パークニングのギターをフィーチャーした曲の美しさも耳に残ります。そんな中で予告篇でも聞かれた「AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH」が元気に流れる件も印象的で、マービン・ゲイとタミ・テレルによるナンバーとしてCDにも収められています。ただこの曲の明るさがアルバムのトータルなバランスを崩しているような気もします。とはいえ、映画を観て、CDを聴き直すとそのうまさを再認識してしまいます。

マイティ・ジョー

心やさしき巨大ゴリラの物語を音楽で盛り上げたのは、「タイタニック」のジェームズ・ホーナーです。今回はアフリカが舞台ということで、女声コーラスを入れたテーマがなかなか決まっています。いつものことながら、カズ・マツイの尺八も、自作の使い回しもあるのですが、映画の中では大変うまく機能しています。いつもとちょっと毛色の違うパーカッションを入れたり、ドラム群を盛大に慣らしたり、特にクライマックスの遊園地のシーンの盛り上がりはこの音楽あってのことで、ホーナーの職人芸のうまさを確認できるアルバムでもあります。活劇部分以外でも、ヒロインがジョーに聞かせる子守り歌がなかなかにメロディアスでいい感じです。全体のタッチは、彼の「レジェンド・オブ・フォール」に近いといったところです。

セントラル・ステーション

ブラジル映画ながら、あちこち賞をとった感動作品の音楽を担当したのは、アントニオ・ピントとジャック・モーレンバウムの二人です。ピアノソロからストリングスが重なっていくテーマがまず泣かせます。このテーマは、映画でもCDの中でも、何度も繰り返されるのですが、ささやかな名曲という感じでしょうか。そのうち、テレビの「世界の車窓から」で使われそうな(既に使われているかも)ちょっと物悲しげで切ない気分になるテーマは、この映画を見事に表現しています。また、同じテーマ曲が、前半では切ない響きだったのが、ラストでは暖かな希望の調べとなっているのが見事でした。小編成のストリングスによる現代室内楽といった趣の曲もあり、そして要所要所はエモーショナルなサウンドがドラマを引き締めています。音だけ聞くとフランス映画のような味わいがありまして、BGMとしてもなかなかに聞かせる音楽になっています。ちょっと前衛音楽のような部分もあり、異国情緒を感じさせる音もあり、映画を観ていなくても、様々なイメージが広がるアルバムになっています。ところどころにセリフとか、駅の雑踏といった音も入っていますが、それも音楽の一部のように聞けてしまうのが不思議です。さらに、映画を御覧になって方は、ラストのセリフ入りの曲で、多分泣かされてしまうでしょう。東京では単館公開の、この地味な映画のサントラCDの国内盤が出ているというのは、かなりすごい事だと思ったのでした。

バグズ・ライフ

とにかく楽しいCGアニメの音楽を担当したのが、「トイ・ストーリー」のランディ・ニューマンです。ビッグバンドジャズから始まって、アクションシーンでは西部劇タッチの音をつけたりと、色々なオアソビを盛り込んで楽しませてくれます。しかし、基本的には、カートゥーン音楽のタッチで、画面の動きの一つ一つを細かく音楽でフォローしていっています。ですから、CDとして聞くならば、最後の曲である「バグズ・ライフ 組曲」が一番まとまっていて、聞き応えがあるのではないかしら。とはいえ、活劇部分も含めて全体に華やかな音が聞けるアルバムです。

ムービーセレクション(SF・アクション編)

これはいわゆる映画音楽のコンパイレーション盤、ところがネタが渋くてSF・アクション映画のスコア集なのです。サントラとサントラスコアを織り交ぜていますが、選曲がすごい。「ジュラシック・パーク」「トータル・リコール」といったメジャーものは少なくて「ドロップ・ゾーン」「パワーレンジャー」「ダンテズ・ピーク」といったちょっとマニアックなものに、知る人ぞ知るドラマチックスコア「カリートの道」まで全部で19曲も入っています。報道番組とか事件再現もののBGMの選曲者が選んだのではないかと思うくらい、盛り上がる曲がそれも無造作にならんでいます。いわゆる活劇系の映画音楽の面白さに目覚めた方には格好の入門盤と申せましょう。刺激のないBGMに飽きた方にもなかなか新鮮に聞こえるのではないでしょうか。マニアの方にはコストパフォーマンス高く、普通の人にはちょっと耳新しいアルバムとしてオススメです。必ずしもメインテーマではなく、ドラマの中の見せ場で流れる曲をピックアップしているあたりも拍手ものです。


「マイティ・ジョー」以外の日本盤を確認しています。

ジャックナイフ
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