夢inシアター
採れたて情報館/No.68

ジャックナイフのちょっとサントラ'98年11月


今回は新作ものと企画ものでのご紹介となります。映画音楽CDはなかなかに出物が多いようです。

モンタナの風に抱かれて

ロバート・レッドフォード監督主演作品の音楽を手がけたのは、「ザ・プレイヤー」「ショーシャンクの空に」などで有名なトマス・ニューマンです。前半は、馬と少女の癒しの物語に、彼独特の幻想的な音をつけています。また、モンタナの描写するカントリー調の曲も交え、後半の恋愛ドラマの方には、なかなかにスケールの大きさを感じさせるオーケストラによるラブテーマをつけていまして、エンディングはなかなかに盛り上げてくれます。まあ、全体的には静かな音作りになっておりました。アルバムとして聞くと、アメリカの自然をテーマにしたニュー・エイジ・ミュージックのような趣があります。

沈黙のジェラシー

これは一般には発売されていない、プロモ盤という一種の限定プレス盤です。ジェシカ・ラングとグウィネス・パルトロウの嫁姑戦争サスペンス篇の音楽を「告発」「フラッド」のクリストファー・ヤングが書いています。メインテーマはオルゴールのような曲がオーケストラへ展開していくホームドラマ調なのですが、そこへストリングスによる不安な和音がかぶさります。そして、ピアノとストリングスによる重厚なスリラー音楽がスリリングというよりは、ホラー色を前面に出してきます。CDだけ聞くと何だか大仰なハッタリ音楽のようにも聞こえてしまうほど、重々しいのですが、映画の中では、ドラマの重しの使われていて、いぶし銀のように光る音楽と申せましょう。鬼姑に教会で懺悔するシーンで、オーケストラにコーラスを交えて、さらにホーンがじわじわとドラマを盛り上げていくあたりが圧巻です。ラストも一応ハッピーエンドの曲をつけているのですが、どこか重いというか、落ち着きのある音になっています。こういう音楽を聴くと、ああ映画音楽だなあって、うれしくなります。

クロスゲージ

サントラCDはだいぶ前から輸入CD店には並んでいたのですが、ようやく映画が公開となりました。典型的なアクション音楽を書いたのは「12モンキーズ」のポール・バックマスターです。明確なメロディは出てこないのですが、波瀾万丈の物語を的確にフォローする音楽をつけています。ホーン主体のオーケストラでスケールの大きさよりはメリハリを重視した音作りになっていまして、情緒的な湿っぽいドラマ部分を切り捨てた本編と同様、ドライな活劇音楽になっています。追跡シーンなどはバックにストリングスがうなる中でホーンセクションがパーカッション的に鳴りまくり、音的にはジェリー・ゴールドスミスの活劇タッチに近いものがあります。テーマがまずあってそれをシーンに合わせてアレンジしていくスタイルではなく、そのシーンのインパクトをいかに盛り上げるかに徹底した音楽ですが、映画の中では十分に機能しています。こういう音楽がCDになるってのはいい時代なのかもしれません。

ダーク・シティ

この秋に公開されるはずの謎のSF映画のサントラCDは、前半はアニタ・ケルシーなどの歌モノで、後半は「ロザンナのために」のトレバー・ジョーンズのスコアで構成されています。何だか異様な世界の物語らしくて、ドヨンとした重々しい音から始まるのですが、その後は活劇調の曲、それもフルオーケストラによる現代音楽(春の祭典を思わせるようなバレエ音楽のタッチが印象的です)が鳴り響きます。また、一方では静かなドラマ音楽を入れて、一種独特の閉鎖空間の物語に不気味な奥行きを与えているようです。そして、要所要所にはシンセサイザーの音を加えてインパクトを与えています。

ディザスターズ、災害映画音楽アルバム

シルバレーベルのおなじみシティ・オブ・プラハ・フィルハーモニックによる作品集です。今回のテーマは「災害もの」でして、既発売の一連のシリーズから選り抜いたものに新録音を加えて、アルバムとしての統一感はあります。聞き物は「タワーリング・インフェルノ」「レイズ・ザ・タイタニック」「ダンテズ・ピーク」「ボルケーノ」といったところでしょうか。曲としては素晴らしい「デイライト」は何だかテンポが悪くて今一つでした。このオーケストラは演奏そのものは、ナショナル・フィルとかロンドン・フィルと比べるとうまくはないのですが、この企画シリーズはオリジナルの音にできる限り近いものを出そうという気持ちが感じられるのが好感を持てます。「スウォーム」は「ジェリー・ゴールドスミス作品集」にも収録されているのですが、(気のせいかもしれませんけど)こちらの方が演奏が良いように思えます。こういう映画の音楽はオーケストラにふさわしい曲が多いので、なかなかに楽しいアルバムになっています。いかにも映画音楽らしい音が並びました。

「モンタナの風に抱かれて」のみ、日本盤があります。
この他には年内公開作品として「鳩の翼」「アンツ」などのサントラが店頭に出回っています。
ジャックナイフ
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