夢inシアター
採れたて情報館/No.65

ジャックナイフのちょっとサントラ'98年9月2


えー、毎度のサントラものでございます。今回はちょっとお古いところをメインでご紹介。

シンドバッド7回目の冒険

これは、1958年の冒険ファンタジー映画の傑作です。レイ・ハリーハウゼンによる人形アニメが一つ目巨人やチャンバラする骸骨などの見せ場をつくっています。そしてその映画の音楽を担当したのが「市民ケーン」や「タクシー・ドライバー」で知られるバーナード・ハーマンです。今回発売されたCDはオリジナルのスコアからジョン・デブニー指揮のロイヤル・スコティッシュ・ナショナル・オーケストラが演奏したいわゆるカバー盤ですが、かなりオリジナルに近くて、音質は格段によくなっています。いかにもアラビアンナイト風だけど、活劇調のダイナミックなテーマに始まり、まさにこれが映画音楽だというお手本のような音作りになっています。低音ブラス群を駆使した重量感のある和音はハーマンのお得意ですが、一つ目巨人や巨竜といったものを見事に描写しています。いっぽう骸骨のチャンバラシーンはパーカッションを思い切り鳴らして、まさに骸骨の立ち回りの音楽になっているのです。この映画はリバイバルで劇場で観る機会があったのですが、人間ドラマ、人形アニメ、そしてこの音楽が一体となってわくわくするようなファンタスティックな世界を構築していました。音楽だけ聞いてても何だか胸躍るような気分になれる、これぞ魔法の宝箱のような一品です。

ある日どこかで

知る人ぞ知る、時を超えるラブストーリー(主演クリストファー・リーブ、脚本リチャード・マチスン)の音楽を手がけたのは007シリーズのジョン・バリーです。公開当時にサントラも出たのですが、今回ジョン・デブニー指揮のロイヤル・スコティッシュ・ナショナル・オーケストラによるカバー盤が出ました。サントラ盤は音質がストリングスがこもっていて今ひとつだったので、今回のクリアなサウンドはちょっとうれしいものがありました。正攻法のラブストーリーにタイムトラベルを絡めた物語は、この音楽によってさらに永遠の純愛物語に昇華しました。フルートの静かな調べに乗ってストリングスが美しいメインテーマを高らかに謳いあげます。そして、ラフマニノフによるパガニーニのラプソディがまたまたこの映画を盛り上げているという、メロドラマの音楽の一つの頂点ではないかという出来栄えなのです。1980年代にこういうクラシックなメロドラマもあったということで記憶にとどめたい一品です。

ビデオドローム

いやー、やっとCDが出ましたか。「ザ・フライ」のデビッド・クローネンバーグ監督が1982年にとったキッカイSFホラーの一篇です。へんなビデオを見てるうちに内部からそのビデオに蝕まれていくという恐怖の音楽をつけたのが「ザ・フライ」「羊たちの沈黙」で有名なハワード・ショアです。ハワード・ショアのホラー音楽ということで重厚なオーケストラを期待しているとどっこい様子がちがいます。全編がシンセサイザーによるドヨーン、ビコーンのサウンドでして、ほとんどメロディラインをさがすのも大変なくらいの悪夢の効果音みたいな音作りになっています。よく聞いていると最近のショアの片鱗もうかがえるのですが、ともかく神経にさわるような音楽は最初は何じゃコリャという気分になりますが、何度も聞いているうちにこのドヨーン、ビコーンが何か魅力的に思えてくるから不思議です。でも、この映画自体はわけわかんなかったよなあ。
さて、この先は新作も少しご紹介。

ダイヤルM

ヒッチコックの「ダイヤルMをまわせ」の現代版リメイク(プッシュホンだからまわせと言えないのがご愛敬)の音楽を手がけたのは「プリティ・ウーマン」「フォーリング・ダウン」など幅広いジャンルの映画を手がける職人ジェームズ・ニュートン・ハワードです。この人はどこかに必ずロックのビートを挿み込むのが特徴ですが、ここでも流麗な女性コーラスを交えたスリリングな導入から要所要所をロックのビートがしめていくという感じです。ちょっとエロチックでスリリング、そしてショック効果も交えてスリラー音楽の王道を聞かせてくれます。都会的なタッチがばっちり決まるのが彼の魅力ですが、ここではパーカッションで目一杯メリハリつけたサスペンス音楽が聞き物です。

北京のふたり

だいぶ前から予告篇は流れているのにいつ公開するのかしらという、中国を舞台にしたラブサスペンス、中国からの抗議付きの映画の音楽を手がけたのが、「マッドシティ」「アイオワの風に吹かれて」などのトマス・ニューマンです。中国風サウンドが当然聞かれるのですが、メインテーマは彼にしてはエモーショナルでなかなかに魅力的です。そして、彼お得意のパーカッションを駆使した前衛的サウンドも中国が舞台だと見事にはまりまして、異国で孤立した主人公の不安を見事に表現しています。アジア風パーカッションをバックにストリングスが不安げな和音を奏でるあたりが聞き物です。

今回は「北京のふたり」のみ日本盤を確認しています。
ジャックナイフ
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