夢inシアター
採れたて情報館/No.64
ジャックナイフのちょっとサントラ'98年9月
えー、毎度のサントラものでございます。今回は新作主体のご紹介です。
■フラッド
原題の「HARD RAIN」の方がかっこいい、犯罪アクションものの映画の音楽を「告発」や「ホワイトハウスの陰謀」のクリストファー・ヤングが担当しました。トゥーツ・シールマンスのハーモニカをフィーチャーしたテーマ音楽がなかなかにカッコ良く決まっています。犯罪ドラマがメインですが、テーマ音楽は自然災害モノのスケールの大きさを感じさせます。そしてアクションシーンにはビートを効かせ、かつブラスもストリングスもきっちりと鳴らして重量感のある音楽になっていまして、これはなかなかの聞き物です。最近のハンス・ツィマー系のオーケストラをフルにぶん回すホットな音楽とは一線を画す、ちょっとクールな音作りが印象的でした。とはいえ、全体的にはメリハリのある活劇音楽になっていまして、追跡シーンでも音楽が先走ることなく確実に映像をフォローしています。ヤングのうまさが光る一品です。ちなみにCMスポットに流れる曲はハンス・ツィマー・チームの「ザ・ロック」の曲ですのでご注意下さい。
■アナタスシア
ロマノフ王朝の生き残りアナタスシアの物語をアニメーション化した、この作品、全体がミュージカル仕立てになっておりまして、歌の部分はリン・アーレン(作詞)とステーブン・フラハティ(作曲)が担当し、スコア部分を「ナッティ・プロフェッサー」「ボーイズ・オン・ザ・サイド」のデビッド・ニューマンが手がけました。歌の方はなかなかの佳曲揃いでして、「ONCE UPON A DECEMBER」なんて映像と合わさると盛り上がること。また、ラスプーチンが復活を宣言する「IN THE DARK OF THE NIGHT」がオケとコーラスが悪役の歌なのに目一杯元気よく盛り上げて聞き物です。ニューマンのスコア部分は歌のメロディを生かしながら、映画を豪華に盛り上げてくれます。コーラス部分がパワフルな宮殿脱出シーンの曲「PROLOGUE」が圧巻です。「ムーラン」が歌とスコアが別物だったのに比べればはるかに統一感のある音作りになっています。
■祖国へ・ホロコースト後のユダヤ人
これは先日、NHKで放送されたドキュメンタリーなのですが、アメリカでは劇場映画でアカデミー賞のドキュメンタリー賞をとった作品です。(原題 THE LONG WAY HOME)ホロコーストを生き延びたユダヤ人がイスラエルを建国するまでの1945年から1948年までを、ユダヤ人の視点から描いた作品です。音楽を「ミラクルマスター」や「スプラッシュ」などで知られるリー・ホールドリッジが手がけ、彼自身がシアトル・シンフォニーを指揮しました。こういう映画のサントラCDも出るということでのご紹介です。音楽としては静かな、でも重厚なオーケストラ音楽が画面をサポートしています。こういう映画では、何しろ映像のパワーが強烈ですから、あまり映像を盛りたてることをせずに映像の下に流れる想いを静かに表現しています。後半イスラエル建国のあたりへ来ると音楽もそれなりの盛り上がりを見せますが、感傷的にならずに、歴史の中で繰り返される哀しみと希望を奏でているという印象でした。
■スピーシーズ2
近日公開のSFゲテモノホラーの一篇。前作はクリストファー・ヤングが静かなタッチで重厚な音をつけていましたが、続編の音楽を担当したのがエドワード・シャーマーという人、どうやらこれからの人のようで「鳩の翼」など色々と作品が控えているようです。オーケストラを使ったSF風活劇音楽という感じでしょうか。でも「エイリアン」と「バットマン」を合わせたような音楽で目新しさは今一つでした。とはいえ、パーカッションやシンセサイザーを使って趣向はこらしてあるので、映画の中では物語を盛り上げているのだろうとは思います。
■エッセンシャル・オブ・ジェームズ・ホーナー映画音楽集
このサントラものシリーズでよくご紹介させていただいている、シティ・オブ・プラハ・フィルハーモニックによる2枚組トータル2時間弱の映画音楽カバー集です。今回は「バック・トゥ・タイタニック」がまた売れているジェームズ・ホーナーの作品集です。彼の作品の中でもシンフォニックスコアを主体にピックアップしたもので「タイタニック」「レジェンド・オブ・フォール」「ブレイブ・ハート」「ディープ・インパクト」などのメジャーなものから、「宇宙の7人」「グローリー」「顔のない天使」などのちょっと地味目系、さらにシンセスコアによる「コマンドー」「レッドヒート」「薔薇の名前」まで押さえていますから、「タイタニック」で初めてジェームズ・ホーナーという作曲家の存在を意識した方には入門盤としてはなかなかのおすすめかもしれません。彼独特の丸みと厚みのある音がきちんと再現されています。この他にもホーナーの作品集は色々出始めたのですが、ボリュームという意味からお徳用な一枚です。また、サントラの出ない「コマンドー」のカバーはこれが一番かっこいいと思いました。
今回のご紹介作品のうち、日本盤を確認したのは「アナスタシア」のみです。
さて秋の映画では「マスク・オブ・ゾロ」「ダイヤルM」「北京の二人」などが控えていますので、またご紹介させていただきます。
ジャックナイフ
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