夢inシアター
採れたて情報館/No.62
ジャックナイフのちょっとサントラ'98年8月その3
ちょっとサントラものも、結構回を重ねてまいりましたが、今回は新作と旧作とを合わせてのご紹介です。
■仮面の男
私にとっては今イチでしたけど、あちこちで評判のよい映画のサントラを手がけたのは「ライアー」で底力を見せてくれたニック・グレニー・スミスです。オープニングから最近のハンス・ツィマー系アクション音楽が登場しますので、ちょっと中世フランスにはしっくり来ないんじゃないかという気もしてしまうのですが、主にオヤジ四銃士の活躍シーンに流れるこの勇ましいテーマが全体のカラーになっています。ドラマチックな部分の音楽になると、バックのシンセサイザーがちょっと場違いな印象を与えるのですが、ともかくも全体を統一したイメージにまとめあげることには成功しています。映画そのものが、かなり入り組んだ内容のドラマな割にはストレートな活劇の音作りになってしまっていますが、その分、レオ様のスター映画であることが明確になりました。
■スネーク・アイズ
劇場公開はまだ先なのでしょうが、ブライアン・デ・パルマ監督、ニコラス・ケイジ主演のスリラー音楽のサントラが店頭に並んでいました。なんと音楽を坂本龍一が担当しているというのが驚きです。そして聞いてまたビックリなのが、これピノ・ドナジオじゃないの?と思わせる音作りなのですよ。かつて、「キャリー」「殺しのドレス」「ミッドナイトクロス」などで、見事なコンビネーションを見せたデ・パルマとドナジオのコンビですが、「レイジング・ケイン」以降ご無沙汰でした。中高音域のストリングスが旋律を奏でて映像と絡み合うような独特な音楽がドナジオの特徴でして、妙に和音で厚みを持たせず、ストリングスのユニゾンともいうべき音の組み立てが印象的でした。そして、そのタッチを今回は坂本龍一が見事に復活させているという感じなのです。かつて、「フューリー」でジョン・ウィリアムスにバーナード・ハーマンの音を書かせたデ・パルマだけに、ある程度音のイメージの指定があったのかもしれません。どちらかというと、坂本龍一のファンより、かつてのデ・パルマ、ドナジオコンビのファンの方におすすめの一枚です。活劇タッチの曲の中にも流麗なストリングスが割り込んでくるあたりが聞き物です。
■ムーラン
「LAコンフィデンシャル」の意外(?)な健闘によって夏休み中に陽の目を見られなかったディズニーの昔の中国を舞台にしたアニメーションですが、今回はアラン・メンケンではなく、歌部分とスコア部分で別々の人が音楽を担当しています。歌の部分はデビッド・ズィッペル作詞、マシュー・ワイルダー作曲によるもので、東洋趣味的な味付けは控えめに、これまでのディズニーアニメらしい、ミュージカルらしい楽しい歌になっておりまして、98°とスティービー・ワンダーによる「トゥルー・トゥ・ユア・ハート」も含めて全体を元気な歌でまとめています。一方、スコア部分の音楽には、名匠ジェリー・ゴールドスミスがドラマチックな音をつけています。久しぶりにオーケストラを全面的に駆使して、異国情緒もたっぷりとスケールの大きな音楽になっています。
■バック・トゥ・タイタニック
普段は映画のサントラ盤なんて買ったことのない方まで巻き込んで大ヒットになってしまった「タイタニック」のサントラアルバムの続編です。完全なサントラではないのですが、三等客室でのダンスシーンの音楽ですとか、沈没直前に流れる「神よ御許に近づかん」といった映画の感動を思い出すのにふさわしい曲に、さらにセリフまで入っているというのですから、これは見逃せないぞという内容になっています。また、ジェームズ・ホーナーのスコア部分では前のアルバムの未収録曲に、ロンドン交響楽団とキングズ・カレッジ合唱団による再録音版、さらにホーナー自身のピアノソによるによるヒロインのテーマまで収録し、79分という収録時間も含めて、続編してはボリュームたっぷりの一枚になっています。この中では、ピアノソロによるヒロインのテーマがホーナーらしい丸みのある音で印象に残ります。そして、主題歌のバックに主人公二人のセリフが重なるところで、また泣いておくんなまし。
【ちょっと予告篇】
ランディ・エデルマンという映画音楽を数多く手がけている作曲家がいるのですが、日本ではまだ、ジョン・ウィリアムスやエンニオ・モリコーネほど有名ではありません。ですが、彼の音楽を耳にする機会は結構あります。と、申しますのも、映画の予告篇で彼やハンス・ツィマーの曲が非常によく使われるのです。
有名なところでは、
- 「フォレストガンプ」の予告篇に使われたエデルマンの「ドラゴン/ブルース・リー物語」の音楽
- 「インデペンデンス・デイ」の予告篇で使われたツィマーの「クリムゾン・タイド」の音楽
なんてのは、曲そのもののインパクトも強くて本編の音楽より印象に残ったりしています。このような使われ方をすることの多いのがランディ・エデルマンの曲なのです。よく使われるサントラには次ものがあります。
■愛と哀しみの旅路
これは、第二次大戦時のアメリカの日系人収容所を舞台にしたなかなか見応えのあるドラマでしたが、このサントラの中で劇場が火災になるシーンになる曲があるのですが、その曲はあちこちの映画の予告篇で使われています。印象的な使われ方としましては、ちょっと昔になりますけど「今そこにある危機」の予告篇をドラマチックに盛り上げてしめています。
■デイライト
シルベスター・スタローン主演のパニック映画ですが、この映画のサントラも予告篇でよく耳にします。最近では「マーキュリー・ライジング」の予告篇のしめの部分で使われていました。重厚でドラマチックな音楽はなかなかのおすすめ品です。
■ドラゴンハート
ショーン・コネリーが滅び行く竜の声を演じたファンタジーロマンでして、ここでもエデルマンはドラマを盛り上げる音作りで、色々な予告篇で使われています。
■ドラゴン/ブルース・リー物語
これはもとの映画より、「フォレスト・ガンプ」のテーマとして有名になってしまいましたけど、このサントラのどの曲もなかなかに聞かせどころを持っていましていい曲がそろっています。
これらのサントラ盤はどれもオススメの一品ですけど、エデルマンの名前がいま一つポピュラーでないので、知る人ぞ知るという状況にあるのがちょっと残念です。また、こういう音楽は予告篇のみならず、テレビのドキュメンタリーのBGMなどにも使われることがよくあります。「情報200X」とか「驚き桃の木20世紀」なんて番組です。さらに驚きなのは最近のドラマの中で音楽担当者はちゃんとクレジットされているのに、洋画のサントラが流れてくることがあります。予告篇やテレビで聞いたいい曲ってなんとかCDを入手したいと思ったりすることがあるのですが、その出所がわからないのが困りものです。その映画やテレビ番組のサントラCDを買っても入ってないことが結構ありますから。
今回ご紹介したサントラ盤で今日本盤が入手可能と思われるのは「仮面の男」「デイライト」くらいです。でも、「ムーラン」「バック・トゥ・タイタニック」はそのうちに日本盤も出ることでしょう。
ジャックナイフ
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