夢inシアター
採れたて情報館/No.61
ジャックナイフのちょっとサントラ'98年8月その2
夏場のサントラもの、8月のその2でございます。
■スクリーム1&2
挿入歌のアルバムはすでに発売されていますが、マルコ・ベルトラミによるスコア盤が1&2のカップリングで発売されました。とはいえ2本分合わせても30分という内容なのですが、ベルトラミのスコアはオーケストラにシンセサイザーを少々混ぜて映画の内容にふさわしい恐怖サウンドに仕上げています。とはいえ、「ミミック」と同様になかなかシリアスな聞かせどころもあり、また静と動のバランスも見事です。映画音楽として、かなりスマートにまとまっているという印象でして、シリアスに盛り上がる部分などはテレビのドキュメンタリーなんかで使われそうな重量感があります。
■ボディヒート
キャスリーン・ターナー主演の悪女ものミステリー映画ですが、公開当時はサントラ盤は出ませんでしたが、大分後になってプロモ盤と呼ばれる限定盤が出ました。そして今回発売になったのは、サントラではなくて、ジョエル・マクニーリー指揮のロンドン交響楽団が演奏したいわばカバー盤というべきものです。サックスをフィーチャーしたジャズタッチの気だるいテーマ曲がまず聞き物でして、その後はサスペンスタッチの007を彷彿とさせるオーケストラ曲が並んでいます。映画は未見なのですが、ボディヒートという題名にふさわしい暑苦しい空気が伝わってきます。ただ、ここでロンドン交響楽団が果たして必要だったのかと考えるとちょっと疑問でした。プロモ盤のサントラと音的にあまり違いがないように思えたもので。
■微笑みをもう一度
サンドラ・ブロック製作総指揮・主演の映画のサントラがもう店頭に出回っていました。歌モノとは別にスコア盤もありまして、これがお久しぶりのデイブ・グルーシンではありませんか。都会派ジャズタッチの音楽を数多くてがけ、フュージョン系のアルバムも多数だしている人ですが、ここでは、カントリー風のおだやかなタッチと、ピアノとピアノの美しい音楽がまさにチャーミングというにふさわしい音になっています。またドラマ部分を彩るストリングス主体のシリアスだけど暖かい音楽がいいです。グルーシンの音楽はピアノの音がすごく透明感があってそこが好きなのですが、このサントラでも、いつもの彼の音楽よりは出番は少ないですけど、印象的なピアノを聞かせてくれます。
■スイート・ヒアアフター
バス転落事故の後の残された人々のドラマの音楽を手がけているのがマイケル・ダナという人、ケルト音楽やニューエイジミュージックのアルバムも出している人ですが、ここでは、ちょっと民族音楽風の笛の音と、映画のヒロインであるサラ・ポーリーのボーカルをフィーチャーした、透明感のある音作りをしています。リュートやリコーダーの音がハメルンの笛吹きの民話を想起させますし、カントリー音楽風のボーカルもどこか静かなヒーリング音楽の趣があります。時間と空間が人間のドラマを飲み込んでいくような感じを音楽が見事に表現しています。neyという楽器によって表現される笛吹きのイメージが見事です。ちょっと尺八のような音に聞こえるのですが、リコーダーの一種なのでしょうか。
■エッセンシャル・ジェリー・ゴールドスミス映画音楽コレクション
これは、サントラではないのですが、シティ・オブ・プラハ・フィルハーモニックによるジェリー・ゴールドスミスの作品集です。このオーケストラによる企画モノのアルバムはSF映画集とか、コーラス音楽集、モンスター映画作品集とかありまして、その中にかなりゴールドスミスの作品もあったのですが、それをまあ寄せ集めた上に新録音も足したという感じの2枚組CDです。でも新ネタと思われるものに「マサダ」「スウォーム」「アンダー・ファイア」「パウダー」「スタンド」「大列車強盗」なんていう、ちょっと渋めのラインナップが並んでいるのが楽しい聞き物です。最近ゴールドスミスのファンになられた方には入門盤として最適なのではないでしょうか。個人的にはこのラインナップにさらに「サイコ2」「オーメン最後の闘争」「リバイアサン」あたりをカバーして頂きたいというところでしょうか。同時にジェームズ・ホーナーの同様の2枚組CDも発売されました。こちらはオーケストラ曲以外に「コマンドー」「薔薇の名前」といったシンセ主体の音も入っているようです。
■ケルティック・ロマンス
これは、サントラとも映画ともまったく関係ないのですが、「スイート・ヒアアフター」のマイケル・ダナつながりというところでご紹介。何やら、北アイルランドの伝説を題材にした、ケルト音楽の一品です。物語が題材ということからか、ちょっと映画音楽を聞いているような趣があり、要所要所に挿入されるボーカルや、グレゴリア聖歌も印象的でして、何か時間と空間を超越した世界に聞く者を誘います。マイケル・ダナとジェフ・ダナ(兄弟かな?)のリーダーアルバムということになっていまして、「ケルティック」というタイトルに引かれてお気軽に購入してしまったのですが、なかなかに聞きごたえのあるアルバムになっています。
今回ご紹介のアルバムは全て今のところ日本盤は見かけていません。
ジャックナイフ
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