夢inシアター
採れたて情報館/No.54

Beauty and the Beast
Beauty and the Beast

-美女と野獣-

1998年5月6日 パレス劇場にて




出演者

ビースト/Chuck Wagnerベル/Michelle Mallardi
ガストン/Steve Blanchardルミエール/Bill Nabel
コグスワース/Gibby Brandミセス・ポット/Beth Mcvey
ルフウ/Harrison Bealバベット/Lesle Castay
ほか


あらすじ

ある冬の夜、醜い老婆が城にやってきて、一輪の薔薇を差し出しながら一夜の宿を乞うたが、その姿を嫌った若い王子は冷たく断った。すると老婆は美しい魔女に変身して、外見だけで人を判断した王子を戒めるため、魔法で王子を醜い野獣に変えてしまった。その姿を恥じた王子は城に引きこもってしまったが、魔法使いの残していった薔薇の花びらが全部散る前に、誰かを心から愛し愛されなければ、城の家臣たち共々、二度と人間の姿には戻れなくなるのである。そんな時、森で行方不明になった父親を探そうと、城に美しい一人の娘、ベルが迷い込んで来た。もし彼女が野獣の姿のままの王子を愛するようになれば、魔法が解けるかもしれないと考えた家臣たちの努力が実って、ようやく二人の心が通い始めた頃、ベルに横恋慕するガストンによって、王子は瀕死の手傷を負ってしまった。王子の命が今まさに尽きようとする瞬間、薔薇の花びらも最後の一枚が無常にも散ろうとしていた・・・



東京発のウィーン、ロンドン経由でニューヨーク着・・・こうしてみると B'wayのオリジナル版「美女と野獣」に行き着くまでに、ずい分遠回りをしたものです。同じ作品でも、各国それぞれの特徴があって楽しいものでしたが、《美女と野獣 観劇世界制覇》を狙う者にとっては、B'way にやって来たからには、時間の余裕がないからといって、捨て置く訳にはいきません。昼間「ライオンキング」を観劇し、夜はこの「美女と野獣」と、この日は一日ディズニー・ディになってしまいました。

パレス劇場
【 Beauty and the Beast 】上演中のパレス劇場
オープニング・キャストの王子は馬だった(!) と友人が評していた、Terrence Mannは、現在「スカーレット・ピンバネール(紅はこべ)」に敵役で出演中だそうですし、ベル役にはポップス・シンガーの Deborah Gibson(ご存知の方、いらっしゃいます?)があたっているとかで、相変わらず人々の関心を引き付ける話題を提供しているようですが、座席についてそろそろ時間かなと思っていると、いつもの開幕アナウンスが流れてきました。でも、ちょっと内容が違うぞと聞き耳を立てると、何やら今日は代役を立てるので、開演が15分ほど遅れるなどと言ってるみたいなのです。

舞台は永年観て来たつもりですが、こんな開幕ギリギリのハプニングは初めて。だけど、こういうチャンスで評価を受けた人が、一夜にして名声を得るかもしれないという、世に言うアメリカン・ドリームの可能性を秘めた舞台に出会えるなんて、何だかワクワクです!

そしてきっかり15分遅れで、何事も無かったかのように幕が上がったのですが、今日代役になったのは、ベルだったのでした。急な事でカツラのサイズが合わないらしく、やけに頭でっかちなベルで、せっかくの美女役なのに可哀相・・・などと感じたのは、最初の登場のところだけ。こ、この人本当に代役なの!? と思わずにはいられない程、堂に入ったハイレベルな演技力に、ただただ感心するばかり。慌ててキャスト表で確認すると、普段はアンサンブルの一員で出演しているようなのですが、シアトル、ポートランド、テンパー等の国内公演でベルを勤めた他にも、ウエストサイド・ストーリーのマリア、エビータのエヴァ・ペロン、そしてラジオシティのソリスト等々、輝くばかりのキャリアの持ち主だったのです。こんな人が B'way ではアンサンブルなんですからねー、何をかいわんや・・・(^^;

もう一方の主役である王子も、非常に安定した高水準の技術をお持ちの方で、日本のキャストでいえば、芥川系とでもいえばいいのか、なんの文句もなく安心して観ていられました。が、その安定さとか包容力が、まだ若い王子を表現するのには少々邪魔だったような印象も受けました。物語の内容を考えると、将来はベルの尻に敷かれるんだろうな、この王子・・・と思わせる位のバランスで丁度いいと思うのですが、ベルが代役だったせいもあってか、保護者的な雰囲気になってしまいましたね。王子に変身してからも、なかなかのハンサムではありましたけど、とにかくガタイがいいので、どちらかといえばガストンをやって欲しかったなと思います。フィナーレで王子が着用するジャケットは、紺のビロードに花のビーズ刺繍を施したロマンチックな衣裳なんですけど、サイズが大きくなると何だか間延びしちゃって、可愛く見えないんですよねー。

そうそう、脇役の中ではルフウがあまり目立たなかったのがちょっと意外でした。この役はどこの国でも客席の笑いを取るので、嫌でも目につくはずなんですが、B'wayの舞台では、あまり印象に残っていません。ただアニメを思いかえしてみると、確かにそれほど活躍の場が与えられている役ではありませんでしたから、この程度の印象で正解なのかな?

こうして観て行くと、B'way の「美女と野獣」は迫力満点なんですが、芝居の深さというところでは、ベルの演技ひとつ取ってもロンドン版の方が表現が細やかなような気がしたのは、単なる思い込みでしょうか。ベルも王子も成熟した大人ではないので、「今泣いたカラスが、もう笑った。」という風に、気分がすぐに一転してもそれは構わないんですが、ベルって決してネアカな少女という訳ではないと思うので、そのあたたりの表現がもうちょっと欲しいですね。(うわぁ、天下の B'way に対してエラそうにウンチクたれてしまった・・・(^^ゞ)

ところで、この公演プログラムに、世界中に広がる魔法の輪という事で、各地での公演場所が世界地図の上に赤い薔薇でポイントされているページがあるのですが、少なくともヨーロッパは制覇したかななんて思っていたのに、実はドイツのシュトットガルトでも上演されているし、アメリカの公演場所が多いのは仕方ないとしても、アジア地域は韓国、香港、シンガポールとあるし、オーストリアはメルボルン、シドニー、そして南米はサンパウロ、ヴェノスアイレス・・・う〜ん、世界制覇の野望はやっぱり実現不可能かしらん。でも、韓国語をしゃべる「美女と野獣」なんてすごく観てみたいなぁ。

そうそう、観劇後ホテルに帰り着いてエレベーターを待っていた時に、後ろに居たオッサン二人に、おゆうの下げていた「美女と野獣」のロゴ・マーク入りの袋を見て、「旅行者ってさー、みーんな「美女と野獣」観るんだよなぁ。」「うぷぷ。そうなんだよねぇ。」なんて陰口たたかれましたが(その程度の英語ならワカルんじゃい!)何か文句あっかー!? (^^;

ページ