夢inシアター
採れたて情報館/No.53

The Lion King
The Lion King

-ライオンキング-

1998年5月6日 ニューアムステルダム劇場にて




出演者

スカー/John Vickeryムファサ/Samuel E. Wright
ザズー/Geoff Hoyleラフィキ/Tsidii Le Loka
ティモン/Max Casellaプンバー/Tom Alan Robbins
シンバ/Jason Raizeナラ/Heather Headley
ほか


あらすじ

プライム・ランドの国王ムファサに、跡継ぎの息子が誕生した。名前はシンバ。父王に一国の王となるための教えを受けながら、すくすくと育っていたが、王座を狙う叔父スカーの陰謀で、ヌーの大群に巻き込まれたシンバを救おうとしたムファサは、命を落としてしまう。お前のせいで父は死んだ、とスカーになじられいたたまれなくなったシンバは、スカーの思い通りにプライム・ランドを出ていってしまった。

見知らぬ土地で倒れているところを、ティモンとプンバーのコンビに救われ、共に暮らすうちに、いつしかシンバは立派な青年ライオンに成長していた。そんなある日、森で雌のライオンと遭遇するが、それは幼なじみのナラであった。彼女の話によると、シンバは死んだと聞かされていてプライム・ランドはスカーの統治になってからというもの、国は荒れ果て、動物たちは空腹に悩まされ、無残な状態。この窮状を救うために、正規の世継ぎであるシンバにぜひ国に帰ってほしいと懇願するが、父王を殺したのは自分だと思い込んでいるシンバには、とてもその勇気はなかった。

しかし、長老ヒヒのサラビの導きによって、幼い時に父から教えられた、国王としての義務に目覚めたシンバは、反逆者スカーと対決するためにプライム・ランドへと戻っていくのであった・・・



ニュー・アムステルダム劇場
【 The Lion King 】上演中のニュー・アムステルダム劇場
チケット入手に東奔西走しながら(と言っても実際動いてくれたのは同行の友人でしたが・・・)日本出発前にはどうしても手に入れられなかったのに、結局ある所にはあるし、世の中お金で勝負ってとこもやっぱりあるのね・・・と手に入った嬉しさと同時に世知辛さも多少感じてしまったせいか、実際に舞台を観る前から少々気持ちが素直じゃなくなっちゃってたかな? でも、動物しか出てこないアニメを、どうやって立体化しているのか、ぜひこの目で確かめたいとう好奇心は押さえられませんよね。

大枚はたいて買ったチケットは、平日の昼の部。それなのに、劇場に入場するだけでこの大行列は何?みんな、仕事はどうしたの?学校は?と一人一人に尋ねてしまいたくなる程の人が、劇場前にあふれてる。千人単位で収容できる大きな劇場が満席で、立ち見も出ているとなれば無理もないけれど、何だか宝塚の千秋楽みたいな人出だわ、と思ってしまいました。この列に並んでいると、知らない金髪のオバさまに「ねぇ、あなた。この公演観るのに並んでるの?それとも、チケットを買うため?」と声をかけられたのですが、「公演観るのよー。」と答えると「うひゃ〜」とびっくりしていましたっけ。

という訳で、大人も子供も皆さんお待ちかねと言った雰囲気の中、舞台版「ライオン・キング」の幕が上がりました。広いアフリカの大草原が舞台になっているだけあって、パーカッションは独特のリズミカルな音を刻み、その果てしなさを現すような、伸びのあるコーラスが始まっただけで、訳もなく興奮状態におちいってしまうのに、それに呼応するかのように、客席から色々な動物の大群が、舞台めがけて次から次へと一斉に登場してくるのには、本当にビックリしてしまいました。舞台にしつらえられたプライド・ランドの丘では、生まれたばかりのシンバが、サラビに抱き上げられて祝福されているし、こりゃ、すごい迫力だ!

動物たちは、なるほど確かにタイツ姿にネコ顔メイクのキャッツとは違っています。その違いを、文章ではとても表現しきれないけれど、ムファサほかのライオン一族は、基本的に俳優の頭の上にライオンのカシラを乗せた被りモノ系で、役者自身の顔の上に、もう一つ顔があるという状態。ザズーは俳優が鳥の人形を操る、人形浄瑠璃の黒子系かな。ただし日本の黒子はあくまでも人形操作に徹しているけれど、こちらの黒子は人形を操りながら、歌ったりしゃべったりするのです。ミーアキャットのティモンも黒子系だけれど、どちらかと言うと歌舞伎の黒子に近いかしらん。でも人形の足の部分を俳優の体に接着して俳優の足の動きと一体化させ、顔や手は俳優が演技しながら操作するといったやり方ですから、それともやっぱり違う。イボイノシシのプンバーは、茶色いイボイノシシの張りボテから、俳優が首だけ出してると言えばいいのか・・・思わず「ゴクローサン!」と言ってあげたくなっちゃいました。そうそう、キリンさんなんかもすごいですよ。長いキリンの頭の被り物を被った上に、普通の2倍くらいの長さがあろうかと思われる竹馬を、両手、両足に付けて、しずしずと歩いてキリン!ですもの。事故が無ければいいんですけど。

こうして、おお〜!等と驚いているうちに最初の数十分は過ぎていったのですが、正直言ってその後が、ツライ。だって、見た目は凄いし、いかにしてその動物に見せるかっていう工夫とか技術には唸るものがあるのですが、所詮は大層お金のかかったセサミ・ストリートっていうか、ディズニーランドの「魅惑のチキルーム」の高級版というか、要するに非常に手の込んだパペット・ショーといった感じでして、肝心な話の内容が薄っぺらいんですもの。大人が観るにはツライですねぇ。しかも、結構無理して擬動物化(?)しているなと思われる部分もあるので、なにもそこまでして舞台化する必要があるんだろうか、と疑問を感じてしまいます。ヌーの大群のところなんて、苦笑以外の何物でもないです。

アニメの方は、どうせその程度の話だろう・・・などと考えていて未見だったのですが、もしかしたら言葉の問題で薄っぺらく感じてしまったなら残念なので、帰国してから早速ビデオを見たのですが、やっぱりその程度のお話でした。(^^; 多分俳優が人形を操るという方法だと、人形を見たらいいのか俳優を見てたらいいのか分からなくなったりもするので、どうもお芝居自体に集中できないというのも問題なのかもしれませんね。

それに、舞台がアフリカなので、当然ながら出演者の殆どが黒人だからこそ、本格的なアフリカン・ミュージックが堪能出来る訳で、アフリカン・アメリカンあってこそのミュージカルという気がします。これを敢えて日本に持ってきて、日本人が行う必要性は、本当にアリですか?

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