夢inシアター
採れたて情報館/No.51

The Life
The Life

-ザ・ライフ-

1998年5月4日 バリモア劇場にて




出演者

クイーン/Pamela Isaacsフリードウッド/Kevin Ramsey
ソンジャ/Lillias Whiteジョジョ/Sam Harris
メンフィス/Chuck Cooperマリー/Bellamy Young
ほか


あらすじ

1980年代のブロードウエイ、タイムズスクエア近辺は売春婦やポン引き、詐欺師、ゆすり、スリ、たかり等、ありとあらゆる不貞の輩が横行し、獲物が網に引っ掛かるのを今か今かと待ち受ける、ポルノと犯罪の街であった。

こんな生活からいつかはオサラバと考えている年嵩の売春婦ソンジャには、クイーンという売春婦仲間の親友がいるが、彼女もまた一緒に暮らしている、ベトナム帰りで、ポン引きをしているフリードウッドとの、もっとマシな暮らしを夢見て、コツコツと貯金をしたりしている。しかしそれをフリードウッドのヤクの払いの為に使われてしまったりして、なかなか現状を改善する事は出来ない。

ある日、ミネソタの田舎から出てきたばかりという、マリーといういいカモが網にかかった。こんなポッと出の小娘を騙すのは、フリードウッドと小ずるいジョジョにとっては朝飯前。二人の甘言にのせられて、マリーはトップレス・バーのウエイトレスにさせられてしまうのだが、このお嬢さん、なかなかのヤリ手で、あっという間に人気のトップレス・ダンサーになり、ガッポリと稼ぐようになる。

そんなマリーに夢中になっているフリードウッドに愛想をつかしたクイーンを見て、この界隈で一番の実力者(要はヤクザの親分!?)メンフィスが近づいてくる。売春でサツにしょっ引かれたクイーンを出獄させてくれ、きれいなドレスを与えてくれるメンフィスに、クイーンは乗り換える決心をするのだが、メンフィスはクイーンに恩を売って、思いのまま働かせようという魂胆だったのだ。クイーンの窮状を見かねたソンジャは、スーツケースとバスのチケットを手渡して街から逃げ出すように死にもの狂いで説得するが、そこへポルノ映画出演の為にロスアンジェルスに行ってしまったマリーに捨てられたフリードウッドがやってきて、もう一度やりなおそうと話す。しかし、それを嗅ぎ付けたメンフィスまでもが現れてフリードウッドを差し殺してしまうのだった。逆上したクイーンは、思わずメンフィスを銃で撃ってしまうが、そこにパトカーのサイレンの音が近づいてくる。無理矢理クイーンを旅立たせたソンジャは、ピストルの指紋をきれいに拭き取り、パトカーに向かって手をあげながらゆっくりと歩いていくのだった・・・



バルティモア劇場
【 The Life 】上演中のバルティモア劇場
月曜日の B'way は多くの劇場が定休日なので、作品にあまり選択の余地がありませんが、1997年度のトニー賞受賞作だし、日本で上演のウワサもあるし、会議室でもちょこっと話題になっていたし、何より B'way でしか上演されていない作品だという事で、予備知識はゼロの状態でしたが、この「The Life」を観てみる事にしました。しかし、この日はNY到着の翌日だったせいか、自分自身の観劇コンディションが最悪だったのでした・・・

と言うのも、海外で観劇の場合、この点だけはいつも注意を払っていたつもりだったのに、昼間の疲れと時差ボケからか、幕が開いて間もなくどうにも抗し難い睡魔が襲ってきてしまったのです! こりゃ、マズイなぁと思いつつもほんの数分ではあったようですが、意識不明に陥ってしまいました。でも、その後は頭がスッキリして舞台に集中出来るようになったので安心したのも束の間。こんどは Ladies' Roomからの呼び声が〜。

ホント、これも気をつけていたつもりだったのに、観る前にコーヒーなんか飲むもんじゃありませんよね。(^^; で、しぶしぶ中座して個室に駆け込んだところで、大事なプレイビル(B'way の殆どの劇場で配ってくれる無料の小冊子。作品やキャスト紹介などの他に、当日の役替わり情報が別紙で挟み込んであったりする貴重な情報源。)をボッチャンと水の中に落とし・・・ああ、もうグレてやるぅ!

タダでさえ英語力が無い上にこんな状態では、作品を楽しむというところまで達せられなくても仕方ないですが、それでも最後まで飽きずに観られたのは、9割方黒人で占められている出演者の力に依るところが大きかったからでしょうか? 歌とダンスの迫力には有無を言わさぬ圧倒的なパワーがありましたから。しかし話は暗い。それに今時珍しいストーリー展開でもない。しかも細かいやり取りが理解できないせいか、メンフィスがクイーンを執拗にいたぶるのも、ソンジャが捨て身でクイーンを逃がしてやるのも、何故そこまでするの? という疑問が残っちゃって、共感するまでには至らないんですよね。

この物語の舞台は B'way のタイムズ・スクエア。ショービズのメッカとして賑わっているこの界隈も、特に42番街近辺は徐々に廃れて、ミュージカル「42nd Street」のように華やかだった時代は去り、ポルノと犯罪の街と化していたのを、近年ディズニーがディズニー・ショップをオープンし、またこの通りに打ち捨てられていた劇場を買い取って内装を施し、あの「ライオン・キング」を上演する事によって、昔通りの親子連れでも楽しめる健全な通りに生まれ変わったという歴史があるし、ベトナム帰り、黒人同士の肉親以上の情の深さなどのポイントが、アメリカに住む人間にとっては感慨を持って鑑賞出来るのかもしれませんが、残念ながら部外者はちょっと置いてけぼりくっちゃいました。

ところで、休憩時間にタバコを吸いたくなったら劇場の外に出るというのは、この劇場でも同じなので、結構沢山の人が一服しに外に出ますが、そんな人垣を狙って、どこからともなく路上に現れた青年が3人。「皆さん、手拍子お願いしますっ!」と音楽も無いのに、いきなりラップのノリになって踊り出し、車のクラクションもなんのその。一人の頭の上にもう一人のお腹を載せてTの字になったと思ったら、上の人を飛行機よろしく猛スピートでぶんぶん回転させて、やんやの喝采を受けておりました。突然の街頭パフォーマンス終了後は、空きカンに小銭を集めてまわってましたけど、さっすがNYですなぁ〜。

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