夢inシアター
採れたて情報館/No.49

ジャックナイフのちょっとサントラ'98年6月


ちょっとサントラものシリーズも結構続いていますけど、最近は国内盤で意外なものが再発売されていて、輸入盤ばかりチェックしているわけにはいかなくなっちゃいました。

ビヨンド・サイレンス

聾唖の両親と音楽に目覚めた娘のドラマのサントラを手がけたのが、ニキ・ライザーという人。ピアノとクラリネットをメインにしたメインテーマが切なくも胸を締め付ける名曲です。この先、テレビのドキュメンタリーにきっと使われるだろうなあ。全体を流れる音楽は、小編成のオーケストラで、木管やストリングスのソロを入れた控えめな音作りになっています。メインテーマをオーボエ、ギターやチェロのソロで奏でるバリエーションも聞き物です。木管楽器の暖かみのある音がこんなに切なく聞こえてくるなんて、ちょっとした発見でした。特にヒロインの音楽学校の入試の曲(当然クラリネットのソロ)からラブテーマへつながっていく曲が印象的です。映画もお薦めですけど、音楽も細やかにシーンを盛り上げるだけでなく、それ自身が聞き手の心をとらえる何かを持っていて、お薦めの1枚です。ウィンダムヒル・レーベルのナイトノイズ(という音楽ユニット)のファンの方には特にお薦めです。(例えがマイナー過ぎるかな)

スフィア

映画の方は、私には今一つだったですけど、「エイリアン3」「インタビュー・ウィズ・バンパイア」のエリオット・ゴールデンサールは重厚なホラー音楽をこの映画に提供しました。でも、そのおかげで映画のホラー色が強まってしまったのですから、音楽の効果という点では、あまり買いません。「エイリアン3」のような静かな落ち着きのある音が欲しいと思いました。音楽単独として聞くと、恐怖のオーケストラサウンドとしての聞き応えは十分なのですが、なんだか大味な感じがしていまい、印象に残るところがあまりないのですよ。でも、映画を堪能された方には、この宗教音楽の香のする映画音楽は聞き物だと思いますよ。

ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ

ホフマン、デ・ニーロ主演のブラック・コメディの音楽を手がけたのは、ロック・グループ、ダイアー・ストレイツのギタリスト、マーク・ノップラーという人。サントラCDはミニアルバムということで24分の小品です。映画の中で印象的な歌の類は入っておらず、スコア盤ということになりましょう。エレキギターとアコースティックギターメインのカントリー風のロックサウンドがなかなか聞かせます。オープニングのタイトルバックに流れる曲なんて、この映画のカラーを適格に表現しています。映画をサポートするというよりは、一歩離れて茶化しているような音作りが何だかおかしい一品です。

遥かなる帰郷

アウシュビッツを生き延びた主人公が故郷へ帰るまでの苦難の道のりを描いた重厚な作品の音楽を担当したのは「イル・ポスティーノ」のルイス・バカロフです。ドラマチックな部分をオーケストラで重厚に鳴らすメインテーマと、パンフルートによる美しい旋律が胸しめつける主人公プリーモのテーマとが、歴史と人間ドラマの両面からこの映画を支えています。その悲劇性を前面に出したメインテーマ、及びそれに付随するオーケストラによる楽曲がストリングスを中心に物語を進めていく一方で、木管楽器を中心にした主人公のテーマが切なさと希望を運んで来るのです。映画の中でも、音楽が語る部分の非常に多く、それだけ印象的な曲がたくさん収録されています。音楽そのものがドラマを語っているという感じでしょうか。

ロザンゼルス

これは国内盤の再発売モノの1枚です。映画はチャールズ・ブロンソン主演のバイオレンス映画「狼よさらば」の続編で、1982年に日本でも公開されました。音楽をなんと、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが作曲、及びギターとシンセサイザーを担当している(と言っても私は、レッド・ツェッペリンをよく知らない)のですが、ライナーノーツによると、いわゆる彼が不遇の時期にこんな仕事までしてましたという位置づけの作品のようなのです。でも、オープニングのハードロックから後半のオーケストラサウンドまで、なかなかに重厚なスケールの大きい曲を提供していまして、ジミー・ペイジはこの続編の「スーパー・マグナム」まで音楽を担当することとなります。都会のバイオレンスを描いたこの映画にノイジーなギターサウンドはピッタリでして、映画自身の評価はあまり高くなかったのですが、この音楽は結構お気に入りです。ただ、この映画のメインタイトル曲が映画ではインストメンタルだったのですが、このサントラ盤ではボーカル版しか入っていないのが残念です。しかし、なぜ今ごろ突然CDが発売されるのかしらん。


「遥かなる帰郷」以外は国内盤が出ています。
ジャックナイフ
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