夢inシアター
採れたて情報館/No.45

ジャックナイフのちょっとサントラ'98年4月


えー、こんばんは、ちょっとサントラものの4月号でございます。GW前ということで、今月はあまりタイムリーなものがないのですが、ちょっとご紹介です。

エイリアン4

シガニー・ウィーバー主演のシリーズ第4弾の音楽を担当したのが、「ダンテズ・ピーク」のジョン・フリッゼルという人。このシリーズは音楽もなかなか聞き物でして、「1」は現代音楽の鋭さ、「2」は戦争映画のパワー、「3」は宗教音楽のような空気感と、各々の作品に負けず劣らずの個性的な音を作っていたのですが、今回はCDを聞く限りでは音楽のインパクトは今一つのようです。前3作はサントラCDを聞くだけで、その映画のカラーが伝わってきたのですが、フリッゼルの音楽はシーンごとの情景描写は優れたものがあるかもしれませんが、あくまで画面のサポートというレベルから脱していないようなのが残念です。オーケストラを駆使した現代音楽となっているのですが、人間側に立っているのか、エイリアン側に立っているのか、神の視点なのか、音楽のいるポジションが曖昧という感じなのです。前半がホラー風、後半が活劇調となっているのですが、予告篇の映像に比べると、音が軽いって印象を受けちゃいます。「フェイス/オフ」のように、CDで聞いた時はどうってことなくても、映画を観ると大変効果的に使われているケースもありますから、映画館で確認してみないと何とも言えないのですが。

ディアボロス/悪魔の扉

キアヌ・リーブス、アル・パチーノ主演のオカルト風スリラーの音楽を手がけたのは、「プリティ・ウーマン」「逃亡者」のジェームズ・ニュートン・ハワード。映画の仕掛けの大ハッタリをうまくサポートする重厚なオーケストラ音楽が聞き応え十分です。明確なメロディラインが前面に出てこないのですが、コーラスを使ってシリアスな雰囲気を作り、要所要所でボーイ・ソプラノのソロを入れて恐怖感をあおる音作りが、全編に渡ってホラー映画の緊張感をもたらすことに成功しています。なぜか頭と終りにアル・パチーノの大熱演セリフ入りなのですが、何のつもりなのかしらん。

ウィンター・ゲスト

アラン・リックマン監督、エマ・トンプソン主演というだけでなんとなく見たくなる人間ドラマの音楽を「ダイ・ハード」「ロビン・フッド」などでリックマン出演作品を担当しているマイケル・ケイメンが書いています。いつものオーケストラによる重厚なサウンドではなく、ピアノソロとシンセ少々という静かなタッチで母娘の葛藤のドラマを暖かく描写しています。主題歌がまたいいんですよ。映画を離れても、一人で夜聞く音楽として最適な一枚です。透き通るような静けさが心にしみるお薦めの一品。

恋愛小説家

オスカー主演賞ダブル受賞のラブコメディの音楽を書いたのが「バックドラフト」「ピースメーカー」などでアクション映画で定評のあるハンス・ツィマーです。このサントラCDは前半がツィマーの曲が入っていて、後半は映画で使用された既成曲が入っています。ツィマーは、小編成のオーケストラで、コミカルだけどちょっとおセンチ入ったようなチャーミングな音を聞かせてくれます。いつものアクションモノのようにオーケストラの全楽器を総動員してメロディを引っ張っていくのではなく、フルート、クラリネット、ピアノなどのソロを生かして、つつましく、細やかにまとめているのはなかなかの職人ぶりです。

ドーベルマン

フランスから来たバイオレンス映画のサントラはスキゾマニアックというユニットが担当しています。ギター、シンセ、パーカッションを組み合わせて、要所要所に女性ボーカルも加えてシンセポップ風サウンドを聞かせてくれます。ギンギンに鳴らすというよりは、エリック・セラの「ニキータ」や「レオン」に近い音作りと申せましょう。とはいえ、映画のスピード感をサポートするパーカッション優先の曲が結構あって、それにセクシーな女性ボーカルが絡むあたりが聞き物です。荒唐無稽なアクション映画をきびきびとした音楽が引き締めているという感じです。アルバムとして聞いても意外と面白く仕上がっています。

マイケル・ケイメン サウンドトラックアルバム

これはサントラCDじゃなくて、マイケル・ケイメンが自作の映画音楽をシアトル交響楽団、ロンドン・メトロポリタン・オーケストラを指揮した、自作自演版のアルバムです。「ロビン・フッド」「陽のあたる教室」「ダイ・ハード」なんてメジャーものから「サークル・オブ・フレンズ」処女作の「テンプテーション」なんて地味めなものまでバラエティに富んだ音を聞かせてくれます。特に前述の「ウィンター・ゲスト」がサントラではピアノ・ソロだったのが、オーケストラ用に編曲されて入っているのがうれしいです。メロディラインをホルンが奏でるという、サントラ盤とは一味違う潤いと厚みのある音が聞けます。ついつい、ケイメンというと「ダイ・ハード」や「リーサル・ウエポン」のオーケストラ低音のブバババーンというイメージが強いのですが、そのバラエティの豊かさに改めて驚かされてしまいます。


今回は全て日本盤が出ています。最近はまさかと思うような映画まで日本盤が出回るようになりました。結構なご時世です。それに、時には輸入盤より安かったりするからなおさらです。それでは、また来月。
ジャックナイフ
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