夢inシアター
採れたて情報館/No.41
ジャックナイフのちょっとサントラ'98年2月その2
2月は結構色々とサントラネタが多くて、ちょっと第2弾を送らせていただきます。
■ゲーム
スリリングな展開と「ひょえー」なラスト。そんな映画を見事に支えきっているのは、「セブン」でもデビッド・フィンチャー監督と組んだハワード・ショアです。全編に渡って、低音のブラスと弦がうなり続けるという、まるで効果音のような音作りが圧巻です。そんな重低音の隙間から流れてくるピアノの爪弾きが余計めにスリルを増幅します。映画を観ていると気が付きにくいのですが、ずーっとサブリミナル効果のように音楽が鳴り続けているのですよ。この重厚さが映画のトリックに一役買っていることはご覧になった方はお分かりでしょう。
■リング/らせん
いやー、こわい「リング」と困った「らせん」のカップリングCDです。「リング」は川井憲次、「らせん」は LA FINCA が各々担当し、予告篇で使われた Juno Raecterの曲も2曲収録されてます。映画の劇伴音楽はシンセによる効果音に近いものとメロディアスなものの2系統ありまして、「らせん」はホラーでないぶんラブテーマっぽいのも聞かせてくれます。問題なのが、「リング」のサントラでして、ドヨーン、ビヨーンのサウンドが映画を思い出しちゃって、夜一人で聞いたら大変、こわいの、もう。特にクライマックスのあのシーンの音楽なんて聞いた日にはあなた。というわけで、映画を観てからこの音楽を聞くときは時と場所を選んでくださいね。「来ーるー、きっと来ーるー」なんて聞いているうちに、あなたの背後に来てるかも。
■チャイニーズ・ボックス
これは、全15曲のうち、オリジナルスコアは4曲しかなくて、後はいわゆる既成曲のコンピレーションに近いアルバムなのですが、その4曲を担当したのが、「クロウ」とか「セイント」を担当したグレアム・レベルです。このテーマ曲がなかなかにダイナミックな聞き物でして、この音楽でレベルは、ベネチア映画祭でオゼッラ金貨賞を受賞しました。中国人シンガー、ダダワをフィーチャーしたサウンドは、幻想的でありながら骨太で映画を支えるに十分なパワーを持っています。分類的にはニュー・エイジ・ミュージックに入るのでしょうが、ヒーリング系というにはダイナミックで人間味たっぷりの音楽です。さらに、サントラではないのですが、このダダワのアルバム「シスタードラム」というのも出ていまして、これは、最近のニューエイジ系のファンにはお薦めの1枚になっています。
■この森で、天使はバスを降りた
アメリカの田舎町を舞台に描かれる、癒し癒される心のドラマ。このサントラを担当したのが、「タイタニック」がCD売り上げでも大ヒットになっているジェームズ・ホーナーです。オープニングは、ピアノのソロから木管が入り、そのバックにストリングスがかぶさってきて、ちょっとファンタスティックな雰囲気に、金管が自然の雄大さを彩ります。全体に静かなタッチでまとめられていまして、ちょっとフィルターをかけたような丸みのあるピアノの音が印象的です。また、ギター、バイオリン、バンジョーをフィーチャーした曲もあくまで控えめにドラマをサポートする音として使われています。
こういう静かな映画に音をつけると、退屈な音楽になっちゃうこともあるホーナーですが、今回は幻想的なタッチがなかなかにスリリングで、静かですが、めりはりのある音作りをしています。
■THE SPACE BETWEEN US
これはサントラじゃないのですが、去年の「ロミオ+ジュリエット」のスコアを手がけたクレイグ・アームストロングのリーダーアルバムです。聞いてみるとまるで何かのサントラみたいなんですよ。ラブテーマあり、重厚なストリングスあり、よく映画のサントラを思わせるってふれ込みのアルバムがありますけど、これはホントにフランスの恋愛モノのサントラを聞いている気分になります。1曲「ロミオ+ジュリエット」のバルコニーシーンのテーマなんてのも入ってまして、夜に聞くにふさわしい、イメージアルバムと言えましょう。聞く人一人一人の心にドラマを紡ぎ出す、音の夜間飛行。
「この森で、天使はバスを降りた」と「THE SPACE BETWEEN US」以外は日本盤が出ています。
そんなわけで追加のご紹介でした。3月は「コレクター」とか「トゥモロー・ネバー・ダイ」「エイリアン4」「LAコンフィデンシャル」「ウインター・ゲスト」なんてのをご紹介できると思います。それではまた来月。快作「ブレーキダウン」のベイジル・ポレドゥリスによる音楽のサントラCDが出ないのが残念です。
ジャックナイフ
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