夢inシアター
採れたて情報館/No.38

ジャックナイフのちょっとサントラ'98年2月


1998年もはや一ヶ月がたち、正月映画も一段落ついてのサントラものですが、お正月映画のサントラCDも結構出回っているようです。

ロザンナのために

奥さんのお墓をキープするために奮闘するジャン・レノ主演のコメディですが、音楽を手がけたのが「ラスト・オブ・モヒカン」「シー・オブ・ラブ」などドラマチックな音作りが有名なトレバー・ジョーンズです。今回は舞台がイタリアの片田舎ということで、ギター、マンドリン、アコーディオンなどをフィーチャーした静かな愛のテーマがメインです。そして、ところどころにオケを交えたコミカルな音楽が入ります。オーケストラはロンドン交響楽団が参加していて、要所要所に意外な厚い音を聞かせてくれます。

スリング・ブレイド

ビル・ソーントン脚本・監督・主演のスキのない重厚なドラマの音楽を手がけたのが、ダニエル・ラノイスという人。スチールギターの爪弾きのような音が一種異様なテンションを運んできます。この一種耳障りな音にパーカッションがサポートに回ることで、音が狂気をはらんでくるのです。その他にも、カントリー風、ブルース風といった曲が、アメリカの田舎町のどこか停滞したような空気を運んできます。それがスチールギターのテンションと好対照をなしていて、ドラマ同様、計算された音楽構成になっていることを改めて認識してしまいます。

メン・イン・ブラック

主演のウィル・スミスのラップが有名ですが、この映画でのスコアを担当したのは、「マーズ・アタック」「ボディ・バンク」のダニー・エルフマンです。彼のサウンドはここではコミカルな活劇をうまく盛り上げることに貢献しています。メインテーマはまるで昔のテレビの「ミステリーゾーン」と「バットマン」を足したような音作りでして、ノリの良さに神秘的な味付けをして、まさに職人芸のうまさを感じさせてくれます。

セブン・イヤーズ・イン・チベット

ブラピがダライ・ラマと会いましたという映画を、格調高くサポートしたのは、御大ジョン・ウィリアムスです。ヨー・ヨー・マのチェロをフィーチャーしたとの事ですが、それほどチェロを前面に出した音作りにはなっていません。音楽的には、チベットに入るまでの山岳地帯の描写音楽がドラマチックで格調高く印象的です。エキゾチックな音に流れない、どっしりとしたオーケストラ音楽はこの映画に真摯な人間ドラマという格を与えていると申せましょう。

ブラス

意外なヒットとなっているイギリスの炭坑町のブラスバンドの物語。このサントラCDではイギリスのグライムソープ・コリアリー・バンドによる「威風堂々」「アランフェス協奏曲」「ダニーボーイ」などが演奏されます。クライマックスで演奏される「ウィリアム・テル序曲」なんて聞いててゾクゾクするものがありますが、演奏する人間の絵が伴ってこその感動だということも再認識してしまいました。トレバー・ジョーンズによるオリジナルスコアも数曲入っていますが、こちらはドラマを静かに描写する情景音楽になっています。映画を観ているときはブラスバンドの演奏しか耳に残らないので すが、こうしてCDで聞き直すと、ジョーンズの控えめな劇伴音楽が映画の空気を見事に伝えているのに気付かされます。「ロザンナのために」と同様、生きる事の切なさを感じさせる音楽が感動的でして、それがラストの「威風堂々」に不思議な余韻を与えています。(サントラCDでも最後に「威風堂々」が演奏されます。)

ミミック

ミラ・ソルビーノ対巨大ムシムシ軍団というミスマッチが面白いSFホラー映画の音楽を手がけたのは「スクリーム」でその存在を知らしめたマルコ・ベルトラミです。少年コーラスをフィーチャーした重厚なオーケストラ音楽から始まり、全編をシリアスで重いサウンドでまとめあげて、ゲテモノホラーを1ランク上の人間ドラマにしています。特にラストの感動的な音楽が聞き物です。最近のアクション映画にオーケストラ音楽をつけるパターンが多いですが、きちんとドラマの格を上げている例は少なく、ベルトラミの次の作品に注目したいと思います。


というわけで、まだまだ色々新作サントラが出回って来そうですが、今回はこの位で。ちなみに、「スリング・ブレイド」と「メン・イン・ブラック」以外は日本盤が出ています。
ジャックナイフ
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