採れたて情報館 ロゴ25pt.

ジャックナイフの
ちょっとサントラ'97年11月その1

またしても、ちょっとサントラものでご機嫌を伺います。お正月映画のメインが決まったようですが、音楽担当も「エア・フォース・ワン」がジェリー・ゴールドスミス、「タイタニック」がジェームズ・ホーナー、「MIB」がダニー・エルフマン、そして「ピースメーカー」がハンス・ツィマー、と大御所が顔を揃えて楽しみです。「エア・フォース・ワン」と「ピースメーカー」は輸入盤がもう出回っていてどちらも本編を期待させる聞きごたえ十分の仕上がりです。一方、秋口の映画のサントラも出てます。

ボルケーノ これは都市型火山パニック映画でして、音楽を担当しているのが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「コンタクト」のアラン・シルベストリ。オープニングの不気味な予感がスリリングだなと思っていると、後は荒れ狂う溶岩のパニック描写にオーケストラを鳴らしまくるというもの。低音ブラスがうなるうなる、そのバックにストリングスが奥行きを与えるという活劇調の音楽が興奮させてくれます。先月のご紹介の「アナコンダ」と同様、サントラオタクの必聴アイテムと申せましょう。
陰謀のセオリー ちょっとどういうジャンルなのかわかりにくい、実はシリアス・ラブ・ストーリーだったというこの映画の音楽を「未来は今」「ファーゴ」などのコーエン兄弟の映画でおなじみのカーター・バーウェルが担当しました。この人の作品には「ストーリービル」といったニューエイジ風音楽もあるのですが、今回は大オーケストラを使って、オープニングの軽快なビッグバンドジャズタッチから、後半のシリアスなサスペンスの盛り上がり、そしてラストのラブストーリーの大団円の音楽まで、オーソドックスな映画音楽を聞かせてくれます。アラン・シルベストリやェリー・ゴールドスミスのようにドラマに密着して盛り上げるパターンとはちょっと違う、画面との距離感のようなものが感じられるのが、特徴と申せましょう。
恋におぼれて ストーカーの恋、でもメグメグがやるとカワイイという映画の音楽を手がけたのが、「エマ」でアカデミー作曲賞をとった才色兼備のレイチェル・ポートマンです。前半は歌モノが何曲か入ってるまして、ステファン・グラッペリの「枯葉」なんてのが聞き物かなってところです。後半はポートマンによる小編成オケによるスコアが入っています。木管を主体にして、いかにもコメディらしいかわいい音楽と、ピアノとストリングスによるラブストーリーらしい音楽が一風変わったラブコメディを見事にサポートしています。でも考えてみると、こういう音楽をCD聴く機会はなかなかないですから、ちょっと得したような気もします。とはいえ、映画を未見の方にまでお薦めはいたしませんが、このCDを聞いていると、あの映画の空気(雰囲気?)がきっちり甦ってくるのですから、なかなかどうしてあなどれません。
フィフス・エレメント リュック・ベンソンやりたい放題の映画の音楽は、彼の作品にずっとお付き合いのエリック・セラ。「ニキータ」や「レオン」でベンソンとセラにはまった人にはちょっと趣がちがうかもしれません。シンセ主体の効果音のような曲がいつものセラらしい位でしょうか。でも、歌姫のソプラノとヒロインのアクションがカットバックで入るシーンがすんごくかっこよくって盛り上がります。後、宇宙船発進前のオバカなラップ(ジャン・レノの特別出演付き)もきっちり入ってました。ごった煮状態の映画に合わせたように、サントラCDもごった煮な印象を受けてしまいました。とはいえ、映画にはまった方なら、これは買いですよ。
ラブ・アンド・ウォー 若き日のアーネスト・ヘミングウェイをモデルにした戦場のラブストーリーの音楽を手がけたのは「ガンジー」「クルーシブル」といったヘビーなドラマから「恋はデジャブ」といった軽いコメディまでこなす職人ジョージ・フェントン。今回は時代メロドラマに正面から挑んでいます。弦を前面に出したオーケストラが美しい愛のテーマを奏でます。また、要所要所で聞かれるピアノやホルン、フルートのソロパートを前面に出した曲は、時代を超えた普遍的な愛の物語という印象です。映画は未見ですが、静かな愛のドラマなのでしょう。
WORK・I これはサントラじゃないんですけど、久石譲が彼の過去の作品を自ら編曲して、ロンドン・フィルハーモニック・オーケストラ(LPO)が演奏した企画モノです。全部で3枚でるらしいですが、その1枚目です。今回は「風の谷のナウシカ」とか「ふたり」とかをフルオーケストラで鳴らしてくれます。でも、今回の白眉は北野武監督作品2本です。「ソナチネ」と「あの夏いちばん静かな海」は、もともと、シンセメインの反復音楽(ミニマルミュージックって言うんでしたっけ)なんです。でも、無機調じゃくて非常にメロディアスではあります。これがオーストラ音楽としてきちっと編曲し直されて、重厚で盛り上がるもので、聞きごたえたっぷりなのです。個人的には「ソナチネ」のカッコよさが抜群でございました。

BGMとしては「WORK・I」がお薦めですが、いわゆるマニア系の方には「ボルケーノ」と「陰謀のセオリー」がお薦めでしょう。これから正月前の映画では、「フェイク」「イベントホライゾン」なんてのが控えていますので、またご紹介させていただきます。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp