夢inシアター
みてある記/No. 198

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マーサ・ミーツ・ボーイズ
マーサ・ミーツ・ボーイズ

- Martha Meet Frank,Daniel & Laurence -

1時間半にタイトにまとめたライトコメディ、お茶受けにいかが?

1999-11-2 神奈川 川崎チネチッタ7 にて


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ころはロンドン、音楽プロデューサーのダニエル(トム・ホランダー)と売れない役者のフランク(ルーファス・シーウェル)とブリッジ講師のローレンス(ジョセフ・ファインズ)の3人は幼馴染の親友(もしくは腐れ縁)です。ところが運命のいたずらのおかげか、マーサ(モニカ・ポッター)というアメリカから来た女性に、3人が偶然に出会い、3人とも彼女に惹かれてしまったのです。しかし、マーサの方もそのうちの一人に心を奪われていたのです。

人の女性に3人の男がほぼ同時に恋に落ちました。その3人が幼馴染の親友だったらというお話を1時間弱という時間の中にさらりとまとめた、ラブコメディの一品です。ちょっとした偶然のなせるワザがすれ違いの面白さも生み、ニック・ハムの演出は、若干まどろっこしいところもありますが、シチュエーションの面白さを生かして、楽しめる娯楽作品に仕上げました。設定としては、オープニングで精神科医のもとをローレンスが訪れて、何やら告白を始めるところから、回想形式でドラマが展開していきます。このローレンスの話を聞く精神科医のキャラクターが何となくおかしくて笑えるのですよ。

性陣3人のキャラクターが明確に色分けされていまして、奥行きのある人間ドラマというよりは、まるで小話かおとぎ話のような軽い設定というのが面白いところです。ダニエルは金持ちの自信家であり、フランクは皮肉屋のくせに自分はもてると思ってる、そしてローレンスは優柔不断で何考えてるんだかよくわからないタイプです。そんな3人の前に現れたマーサという女性は、アメリカでの単調な日々に嫌気がさして、何のあてもなく、一番航空券が安かったという理由でロンドンに来てしまったという、なんとなくフワフワとしたキャラクターです。まあ、何か出会いか発見があればいいなあという程度のことのようなのですが、そんな彼女に惹かれてしまった3人のうろたえぶりが、結構おかしいのですよ。ゲラゲラ笑うのとは違う、クスリと笑わせるエピソードがいくつも出てくるのです。

性陣を演じる3人がなかなかに曲者揃いでして、トム・ホランダーは私にとっては初お目見えですが、イギリス人らしいキャラクターを軽妙にこなしていて、映画のカラーを決定付けています。また、あとの二人、ジョセフ・ファインズとルーファス・シーウェルは、「エリザベス」「娼婦ベロニカ」でヒロインの二枚目恋人を演じていて、コスチューム・プレイのイメージが強かったですが、こういう現代劇のそれもタイプキャストを演じても不自然じゃないあたりがなかなかの役者ぶりです。特に言葉使いの悪い役者崩れみたいな奴を演じたシーウェルが意外といい味を出していたのが印象的でした。その、そんじょそこらにいそうなアンちゃんぶりが結構きまっているのですよ。

ョセフ・ファインズ演じるローレンスのキャラクターは、いわゆるオドオド君タイプで、マーサを好きでたまらないのに、他の二人への気がねからか、その思いを口に出すことができません。ラストの土壇場でも、それを言えないあたりはかなり観客をイライラさせる奴なのですが、ジョセフ・ファインズは、そのふがいないローレンスを的確に演じきりました。その優柔不断なところがこのドラマのカギになっているのですが、不愉快なキャラクター一歩手前でなんとか押しとどめたあたりにファインズのうまさを感じてしまいました。普通なら恋愛ドラマの核になれるわけがないキャラクターが、いつの間にかキーパーソンになっているというのが、面白いところです。

ロインを演じたモニカ・ポッターが今一つキャラクターがよく見えず、何でこの娘に3人の男が同時に惚れたのだろうという説得力を欠いてしまったように思えたのがちょっと残念でした。いかにもどこにでもいそうなネエちゃんという感じなのは、OKなのですが、それ以上の何かを感じられなかったのは、私の女性を見る目が足りないのかもしれません。逆に完全に脇役なのに、精神科医役のレイ・ウィンストンが強烈な印象を残します。おいしい役どころではあるのですが、エンドクレジットにスナップ写真に顔を出すあたり、相当におかしいのです。このあたりに役者の力量差というものを感じてしまいました。

はいえ、重厚な演技合戦を楽しむ映画ではなく、あれよあれよと展開する1テンポずれた恋愛模様を軽く楽しむ映画です。特にラストのオチは「マジかよー」と思うくらいのあっけなさと意外性があり、まるで落語のオチみたいな決着がつきます。成り行き任せのような展開が、本当に成り行き任せのまま決着してしまうエンディングは劇場でご確認下さい。この突き放したような、すっとぼけた味わいがイギリス映画なのかなとも思わせますが、こじんまりとまとまった映画は午後のティータイムのような後味を残します。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 こんなラブストーリー、日本の2時間ドラマで作れそう。
全体に漂う雰囲気は、いわゆる、のんき。
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