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A Destiny Of Her Own
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国を救った娼婦の実話ですって。でも、男には肩身の狭い展開で。
1999-10-29
東京 日比谷シャンテシネ3
にて |
は16世紀の末、ベネチアは商業の栄えた華やかな都でしたが、当時は女性は男性の所有物でしかありませんでした。持参金を積んで経済力のある男と結婚するのが一応の幸せだった時代です。ベロニカ(キャサリーン・マコーマック)は美人で聡明ですけど、持参金が足りません。そこで母親(ジャクリーン・ビセット)は、自分がかつてそうだったように高級娼婦の道をベロニカに薦めるのです。最初はその気になれない彼女も、高級娼婦が女性の中で自由な存在であり、男性と互角の立場に立てることを知り、自分を磨いて売れっ子の高級娼婦にまでなります。一応、ベロニカにはマルコ(ルーファス・シーウェル)という恋人がいるのですが、身分違いを超えて結婚する気もない彼とはつかず離れずのくされ縁状態。ある日、トルコの艦隊が攻めてきて、ベネチアはフランス国王のご機嫌を取り結んでフランス艦隊の応援を頼まなくてはならなくなったのですが.....。
6世紀のベネチアって商業が栄えたということは、それなりに贅沢が華開いた時代でもあったようです。そんな時代でも、女性の立場はメチャクチャ低かったらしいです。そんな中で高級娼婦ってのは稼ぎはいいけど、セックスと知性の両面から男性を満足させなければならないという、並の女性にはなれない職業だったのです。それに世界最古の商売と言われながらも、そのステータスは低いですから、かなりの踏ん切りがないとなれない仕事ではあったようです。これが安物の淫売とは一線を画すところなのですが、結局は貞操を売る商売ということですから、並の女性からの反感は相当大きかったようです。なんて、昔のことみたいですが、今だってこのあたりの風当たりは大して変わらないです。高級だろうが、安物だろうが、売春婦、風俗嬢などというのは、ステータスとしては低いものですし、男性よりも女性からの風当たりの強いのも同様です。
れでも、ベロニカは稼ぐための手段としての高級娼婦の術を身につけて母親をしのぐ売れっ子になります。そんな彼女に恋人として登場するのがマルコという野郎なのですが、これが信用できない男の典型みたいな奴で、確かに政略結婚もやむを得ないのでしょうが、その妻との交渉を持ちながら、ベロニカが客をとることには嫉妬をあからさまに見せて非難するのです。これまた、今の男女の間でもありがちなことです。その上、マルコは政略結婚した妻に最初から愛はないと思いやり一つ見せません。マルコの妻は自分の夫をとりこにするベロニカに激しい敵意を抱くのですが、夫があれではやむを得ないと思いましたもの。ソープ嬢に入れ込んだ所帯持ちが、本気で惚れあったのに、現状維持のままで、家庭は顧みず、ソープ嬢を妻にする気もないという図式です。それを知っているソープ嬢は妻になることを望まず、自分の仕事に精を出すと、男はそれを許せない。この映画のマルコはとてつもなくエゴイスティックでカッコ悪いのですよ。とはいえ、彼女はマルコにきっちり惚れこんでいます。そのあたりが男女の機微なのでしょう、理屈じゃないのよ、男と女、というわけです。
んな彼女がフランス国王のお気に入りとなって、トルコ艦隊襲来という国家存亡の危機を救うのです。いわゆる夜の外交接待要員というわけですね。ここでフランス国王を満足させないとベネチアがトルコの軍門に下ってしまうというのですから、お国の一大事です。その命運が一人の娼婦の手に委ねられてしまうというのは、極端な例だとはいえ、「歴史は夜作られる」のだなあと感心してしまいました。そんな彼女をマルコは非難するんですよ、自分だって政治結婚したくせに。
半は、ベロニカは世間を惑わした魔女として宗教裁判にかけられます。ここで、ようやっとマルコがいいところを見せてくれるのですが、そのあたりは劇場でご確認下さい。とはいえ、あくまで毅然としているベロニカに比べると、娼婦を愛した男、買った男のあたふたと情けないこと。悪いことしてると思いながら娼婦を買うから、事の本質を見誤るのかもしれないと思いました。こんなことを書くと女性蔑視と怒られそうですが、この映画はどう見ても娼婦であるベロニカに分があります。彼女を断罪しようとする教会も、彼女を買った男も、なんだか筋が通っていないのですよ。自分のだんなを寝取られ状態の妻たちがベロニカ憎しの気持ちになるのは理解できます。でも、この映画では、最後に男たちに若干の華を持たせ、寝取られ妻たちは悪役扱いされたままというのが、これは男性が作った映画だなという感じです。私はフェミニストではないのですが、「女の敵は女」になる原因は、やはり男社会にあるような気がしてきました。この場合であれば、家庭を守る妻と、娼婦は対立関係に置いとくのが男にとって一番都合がいいということです。彼らに共闘されたら、男はたまらんというのが本音なのかもしれません。
演のキャサリーン・マコーマックはコスチューム・プレイというには、現代的なルックスで個々の顔のパーツがはっきりしたモデル顔なのが面白いと思いました。裁判シーンでの汚れた服装がまた魅力的に見えるのがお見事でした。また、母親役のジャクリーヌ・ビセットは、昔の若くてきれいなころを知っているだけに複雑な気分になってしまいました。今も年相応にきれいなのですけどね。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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女性から見てこのヒロインとその恋人はどう見えるのかしら。
男って弱いから知恵を絞って女性を縛る?
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