夢inシアター
みてある記/No. 195

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タイムトラベラー
タイムトラベラー

- Blast From The Past -

変形タイムスリップコメディ、でもラブコメディの味わいでマル。

1999-10-26 神奈川 シネプレックス平塚シネマ3 にて


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は1962年キューバ危機の時、核戦争が起こったと勘違いして核シェルターに閉じこもってしまったパパ(クリストファー・ウォーケン)とママ(シシー・スペイセク)の間に生まれたのがアダム(ブランダン・フレイザー)です。彼はシェルターで生まれ、その時限ロックが外れる35年の間ずっとシェルターで両親と暮らしていたのでした。しかし、ロックが外れて外界に出た彼は食料などの買出しにでかけます。色々とカルチャーギャップに直面しながらも、知り合ったイブ(アリシア・シルバーストーン)となんとなくいい関係になっていきます。1960年代の倫理と文化を引きずっているアダムと90年代のキャピキャピ娘イブの恋の成り行きは如何に?

「ポ
リスアカデミー」や「ファースト・ワイフ・クラブ」といった上質というにはやや下世話なコメディを作ってきたヒュー・ウィルソンが脚本・監督を担当したコメディです。1962年で時代が止まってしまったシェルターの中で純粋培養されて育った主人公が、現代のアメリカでカルチャーギャップに右往左往する映画にちがいないと勝手に思い込んでいたのですが、そういう笑いをとることがメインの映画ではありませんでした。いわゆる古き良きアメリカを笑い者にする気もなければ、賛美する気もないというところでしょうか。その時代の違いを結構クールに見せる視点が面白いと思いました。

人公はダンスもできるし、外国語もしゃべれるし、礼儀もわきまえているといういわゆる品行方正だけど、35歳にしてはミョーに変、昔ならいざ知らず、現代では宗教の勧誘か電波系の人みたいな妙なメリハリと明るさが結構不気味な、若作りのオヤジです。そんなちょっとアブナげな主人公に最初は腰が引けてしまうイブですが、だんだんと彼に惹かれていく過程をアリシア・シルバーストーンが軽快にそしてかわいく演じきりました。バットガールやってたころは、ピチピチ限界ボディにこの先どうなるんだろう思ってしまったシルバーストーンですが、今回はだいぶスリムになって、なかなかのコメディエンヌぶりで、鼻にかかった独特の声もいいほうに作用しました。なんか変なやつだと思いながらも、その変なやつに惹かれてしまうあたりや、始終困ったような不機嫌なような顔をしているあたりが楽しい見物になっています。特に、主人公が女の子と簡単に仲良くなるのを見て嫉妬の感情がメラメラ燃え上がるあたり、リアルでおかしくて、そしてかわいいキャラクターになっていて、ちょっとファンになってしまいました。

た、両親を演じたクリストファー・ウォーケンとシシー・スペイセクの競演も楽しい趣向です。片や「デッド・ゾーン」片や「キャリー」と悲劇の超能力者つながりの二人ですが、この変わり者両親がおかしいのです。ホット・ドクター・ペッパー好きのパパは知識は人一倍だけどかなり変わり者、そんなパパに付き合わされてのシェルター生活にママはブチ切れ寸前のアルコール依存症、でもなんだかお似合いの夫婦に見えるのがうれしいところです。最近のシリアスホームドラマに出てくるいかにもアブナげで一触即発的な崩壊家庭とは一線を画す健全さがあるのです。お互いに敬意を払い、親は子供を育て上げ、子は親を養うという関係が自然にできあがっている。いまどきのイブにはその親子関係が理解できないのですが、理解できないことを否定することはしないというあたりがこの映画に不思議な色合いを与えています。時代の違いをクールに見せているのですが、その中にある一種の懐古趣味も感じさせる部分もあります。全てのものの長所短所は表裏一体ですから、昔のよさは、その裏にやな部分も当然抱えもっているはずです。ですから、一方的に今がいいんだ、いや昔の方がよかったなどと言い合うのは不毛な議論だと思います。この映画はその押し付けがましさをさらりと流しているところに好感が持てます。

して、物語は、単に60年代文化を引きずったまま今を生きていく一家族がいるというところまでしか見せません。ドラマ的には、何だか導入部だけで終わってしまうのが、やや不満でもあるのですが、説教臭さや過去への肩入れ(あるいは軽蔑)といったものをパスして、カルチャーギャップを軽々とクリアしてしまうヒーローとヒロインのラブストーリーとして観ればなかなかに楽しい作品に仕上がっています。その楽しさは主人公二人とその両親の4人の役者による部分が大きいのです。4人の各々がそれぞれに魅力的でチャーミングなキャラクターになっているからでしょう。また、フレイザーがクラブで女の子と踊るシーンがあるのですが、これがまたかっこいいんですよ。激しい振りなのに、重心が移動しないでびしっと安定した動きは、運動神経ゼロの私にはうらやましい限りでした。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点1点0点 変だけどアブナくはないウォーケンも珍しいです。
青春ラブコメとして観ると結構楽しい一品。
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