夢inシアター
みてある記/No. 194

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プリティ・ブライド
プリティ・ブライド

- Runaway Bride -

困ったちゃん同士の掟破りの恋愛模様、そう安直に幸せになれると思うなよ。

1999-10-23 神奈川 藤沢オデオン座 にて


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聞のコラムニストのアイク(リチャード・ギア)はネタに困って、酔っ払いの話をもとに式当日にドタキャンをかます「逃げる花嫁」のコラムを書いたのですが、書かれたマギー(ジュリア・ロバーツ)から修正のクレームをつけられてしまい、裏を取らずに書いたのがバレてしまってコラムの仕事はクビになってしまいます。そこで、別の出版社の依頼で、「逃げる花嫁マギー」の取材をすることになり、彼女のいる田舎町に出向いて、彼女のまわりをウロウロします。今、彼女は4度目の結婚式の準備で大童。そんなマギーにつきまとうアイクは不細工なオヤジがだったら只のストーカーになってしまうのですが、何せ色男がやると、そこに愛が芽生えてしまうのだな、これが。

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リティ・ウーマン」の監督・主演チームが再結成して、またしても新しい男女の関係を一篇のコメディに仕立て上げました。前作では、いわゆるコール・ガールが玉の輿にうまいこと乗っかってしまうというシンデレラストーリーだったのですが、21世紀を目前に控えてそういう話を蒸し返すことはしませんでした。今度のヒロインはまっとうな仕事をしてますけど、結婚式の席でドタキャンを過去に3度もやってしまったというとんでもない花嫁です。これじゃ、男はやりきれないですが、本人はまるでケロリとしてます。まるで無頓着で、反省することを知らないのか、学習能力がないのか、そういう事を繰り返しても気に病むようでもなく、今度の4度目の結婚に対しても臆するところ皆無という困ったヒロインなのです。

方のアイクの方も要領はいいけど、裏も取らずにコラム書いちゃったりするかなりいい加減な奴です。自分のしたことに反省するところなく、自分がクビになったことを被害者みたいにマギーに語るあたりは、マギーにも負けず劣らずの困った奴のようです。そんな、困ったちゃん同士が惹かれあうというのは、いわゆる「割れ鍋にとじ蓋」ストーリーみたいなのですが、ここをギアとロバーツというスターのパワーで、ナイスなラブストーリーに強引に仕上げてしまったという印象です。冷静に考えてみれば、どっちも人間としては、とても敬意を表す対象とはなり得ないのです。でも、これがちょっといいラブストーリーに見えてしまうところに、ゲイリー・マーシャル監督のうまさがあります。

ギーは何だかんだと理由をつけますが、結局は相手と相手を選んだ自分を信用していないってことに不安になってドタンバでズラかってしまうようなのです。それなら、最初から結婚しようと思わなきゃいいのに、何故か式の直前まではその気でいるというのですから、こういう女性にプロポーズした男性はかなりお気の毒です。そんな彼女をアイクは「自分がそこにいないからだ」と指摘するのですが、その言葉はそのまんま自分に返されてしまうあたりがおかしかったです。それなのに二人が迎えるハッピーエンドに誰も太刀打ちできないってところがおとぎ話なのかもしれません。でも、世の女性陣がロバーツ演じるヒロインを自分に投影されたら、男はたまらんというのが、ちょっと困ったおとぎ話でもあります。

半はホントにとんでもない展開を見せまして、まさにおとぎ話のようになってきます。だって、ホントにアイクとマギーができあがっちゃうんですよ。「プリティ・ウーマン」を観た時、こいつらそう長くは続くまいと思ったのですが、今回もこんな成り行きで一緒になったって、絶対うまくいきっこないと思いましたもの。ところが、その成り行きを一度ひっくり返して、もう一回仕切り直すという仕掛けが今回はあるのです。そして、それまでは受け身であり続けたヒロインが、主導権をとるあたりがおかしく今風なのですよ。まあ、「プリティ・ウーマン」の時より、ロバーツも年をとっているわけでして、単なる若いねえちゃんではないのですから、困ったちゃんもそれなりの分別とわきまえを持っていて当然なのではありますが、その結末の付け方は結構気に入りました。またエンドクレジットの最後の1カットがなんでもないようでいて、これがいいんですよ。私のように二人の未来に懐疑的な人間には、「おお、やるじゃん」というダメ押しワンカットになっています。とはいえ、場内の明るくなる直前のワンカットでして、ここまで御覧になる方は少ないと思います。でも、今回は最後の最後まで御覧になることをちょっとだけオススメしておきます。

チャード・ギアは前作よりはニヤケ度が少なくなりましたが、大人の渋さというのには遠いキャラクターを手堅く演じました。まあ、この人はキャラクターが極端に逸脱しないのが安心して見ていられるのですが、ちょっと大丈夫かなって気もしてしまいます。ジュリア・ロバーツは、最近演技づいてますけど、今回はTPOに応じて自己中心的になったり、他者追従型になったりする、意外とありがちなキャラクターを軽やかに演じきりました。脇では、前作「隣人は静かに笑う」では「変な人」演技が鼻についたショーン・キューザックが、リアルで好感の持てる役どころでいいところを見せます。ヒロインの友人で、ヒロインのように好き勝手にできたらいいなあと思いながらも、夫との関係を大事に育もうとする人妻をコミカルにかつ控えめに好演しました。その他、田舎町の風景や、そこの人々の描写に細やかな演出を見せたあたりはマーシャルの功績でしょうけど、全体をほんわかとしたムードに仕上げています。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 その辺にいそうな困ったキャラが主人公ってのがミソ。
それが美男美女ってのが曲者だけど。
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