ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・バレルズ

ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・バレルズ

若

い悪友４人組が、ポーカーで一儲けしようと企んで、１０万ポンドかき集めたのはいいけれど、相手は街のボス格でかつイカサマ野郎。４人組随一のキレ者があたってもイカサマには勝てません。逆に５０万ポンドの借金を負わされ、さらに一週間で返さないと指切っちゃうぞと脅されます。何とかして、５０万ポンドを作らなければならなくなった４人組の隣の住人が、何やらマリファナと金を盗もうという企んでいます。これを聞いた４人組は、そうだこれの上前をはねちゃえということになるのですが、お隣さんは人殺しなんて全然平気の悪党で、４人組はせいぜい盗品売買をする程度で、ワルの格が雲泥の差です。これに、街のボスや用心棒、借金取立屋、ヤクの売人グループが絡んで、ややこしい様相を呈してくるのですが、果たして最後に笑うのは誰？

脚

本・監督のガイ・リッチーの初長編映画だそうで、イギリスではかなりヒットした映画だそうです。設定だけを追うとかなりシリアスな犯罪ものみたいですが、実際にかなりマジな殺し合いも登場します。じゃあ、実録風犯罪モノかというとさにあらず、偶然が偶然を呼ぶ相当人を食った展開を見せてくれます。登場人物におふざけをかます奴はいないのですが、その連中が織り成すドラマは、かなり笑える内容になっているのです。このシリアスな殺し合いと笑える展開のミスマッチが、皮肉っぽい面白さを運んできて、なかなかに楽しめる映画になっています。要所要所に、スローモーションやコマ落しなどの、映像的仕掛けでアクセントをつけ、ギンギンのロックで音のインパクトもありというわけで、ＣＦ出身というリッチー監督は、シャレた体裁の中に、よく考えられたストーリーをうまく織り込んでいます。

こ

の映画の面白いのは、登場人物がみんなそれなりにマジにやっているということです。笑いをとるキャラクターを設定していないのですが、それでも何だか全体をおかしな雰囲気がつきまとっています。前半は単なるミスマッチかと思っていると、後半になって段々と妙な展開になってくると、そのおかしさの実体が姿を現すという仕掛けがなかなかにお見事です。そして、前半のミスマッチ感覚が予定調和のように感じられるようになって映画は終わるのですが、この終わり方もなかなかカッコ良く決まっていまして、観終わって「あー、面白かった」という気分で劇場を後にすることができます。

役

者は知った顔が全然いなくて、特別出演のスティングもエンドクレジットで気がついたくらいです。それでも、結構達者な演技で、特に唯一コミカルな味わいを見せたボスとその用心棒を演じた、Ｐ・Ｈ・モリアーテイとレニー・マクリーンが印象的でした。冒頭は登場人物の紹介になっているのですが、あまり知った顔がいないと誰が誰だか区別がつかなくなるのが困りモノです。結構この映画、登場人物が多いのですよ。

映

画の雰囲気はギャングものみたいです。警察もラスト近くまで絡んできませんし、１０万ポンド元手の賭けポーカーという発端、そして、借金の取り立て屋の変なリアリティ、泥棒集団のキチガイ度とか、日常感覚を一歩だけ離れた世界での金をめぐる抗争が描かれます。かなり暴力シーンもあるのですが、直接描写はギリギリのところで押さえられていまして、後半の笑える展開で、笑いがひきつるところまで残酷にはなっていないのがうまいです。日本でもこういう映画を作ることは可能だとは思うのですが、血しぶき飛び散る映画になっちゃいそうな気がしましたもの。

ま

た、このドタバタの全貌を知っている人間が映画の中に登場しないというのも面白いところです。これを観て笑えるのは観客だけ、登場人物の各々にはとってはシャレにならない展開というのが、この映画の隠し味になっていると思いました。また、バックに流れる音楽はほとんど既製のハードロックなのですが、ほんの少しだけ流れる劇伴音楽が、西部劇調、どちらかというとマカロニ・ウエスタン調なのがおかしかったです。この映画のコアの部分に西部劇のテイストを入れているということなのかもしれません。銃撃戦でのスローモーションなんてのは、サム・ペキンパーを狙ったのかな？とも思ってしまいました。それにしても、（日本語として）無意味な長い邦題には、アタマ悪そうな印象しか残らないのは困りモノです。

お薦め度	採点	ワン・ポイント
		面白いです。でもどういう人にすすめたものか。 うーん強いて言えば、これって落語?