夢inシアター
みてある記/No. 190

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ディープ・ブルー
ディープ・ブルー

ゲテ物のくせに大作っぽいところが余計目にゲテ物な一品。

1999-10-10 静岡 静岡ミラノ1 にて


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の中の特設研究施設アクアティカでは、サメを実験材料にして、アルツハイマーの特効薬を研究開発中でした。そこへ視察に来た投資家(サミュエル・L・ジャクソン)の前でスーザン(サフロン・バーンズ)以下は、サメの脳髄液がアルツハイマーに効果があることを見せます。しかし、その直後、実験用サメが奇妙な暴れ方を始めます。おりからの嵐でアクアティカは孤立状態となり、次々と巨大サメの犠牲者が出てしまいます。実験によって人間並みの賢さを持ってしまったらしいサメ君は一体何を考えているのやら....。

だ、サメだ、ということになれば、動物パニックものかと思いきや、この作品は、人間並みの知能を持った巨大サメが次々に人間を殺していくという、海の「ハロウィン」か「13日の金曜日」ともいうべき、ホラー色の強い映画になっています。さらに大掛かりな破壊スペクタクルもあり、サメをアニマトロニクス、CGを駆使して見せるSFX映画とも言えましょう。

「ダ
イ・ハード2」「カット・スロート・アイランド」などとにかく押しまくるパワーだけは一流のレニー・ハーリン監督が、今度は、サメを使ったホラーアクションを作り上げました。とはいえ、サメと言えば「ジョーズ」という大御所がいます。それを向こうにまわしてさらなる恐怖を作り出し......たかったのかもしれませんが、残念ながら、そうは行かなかったようです。ハデな爆発とストレートな展開は、いかにもハーリンらしい作品となっていますが、肝心の物語が、あちこちの映画の趣向をよりぬいてきたパッチワークみたいな内容なんです。「ジョーズ」以外では、「ピラニア」「アビス」「リバイアサン」「アンドロメダ」「トレマーズ」などなど、とにかく新趣向というべきものが見つからなかったのは、脚本のせいなのでしょう。それらのオリジナルに共通しているのは、いわゆる「ヒネリ」の部分の面白さなのですが、ハーリンの演出は寄り道なしの直球勝負が売りなだけに、出来上がった作品は、ゲテ物のくせに、妙にマジメなド派手アクションという感じになってしまいました。

の中で新機軸かなと思ったのは、殺される順番と最後に生き残る人間の予測がつかないというところです。私にとっては、最初の犠牲者がそもそも意表を突かれましたもの。このあたりは定番を外したつくりになっているのですが、後は緩急の緩をとっぱらったジェットコースター風展開となっています。そして、1時間45分を一気に突っ走るあたりは、ハーリンの力技が光ります。ただ、突っ走る分、余裕やユーモアの部分がなくなってしまい、ゲテ物らしいシャレやユーモアの入る余地があまりなく、LL・クールJがコメディリリーフを軽妙に演じても、それをうまくドラマに生かせなかったのが惜しまれます。

れにしても、なかなか癖のある役者を揃えた割に、思い切った使い方をしたものだと感心してしまいました。クール・J、ジャクソンの他にも、マイケル・ラパポート、ステラン・スカルスゲールドといった曲者を配しているのですが、人間側はほとんど演技のしどころなしで、とにかくサメの餌食待ちみたいになってしまったのはお気の毒でした。ヒロインのサフロン・バーンズはそれなりの見せ場はあるのですが、所詮はマッド・サイエンティストだとわかってくるに連れて、感情移入できるキャラクターがいないというのも、狙ってやったのだとしても、映画を面白くする方向へは作用しなかったようです。一方のサメ君というのも、もともとドロンと死んだような目をした魚ですので、キャラクター不足です。もし、人間並みの知恵を持っているのなら、「トレマーズ」みたいに人間との知恵くらべの面白さを出してくれればいいのに、結局、でっかいビックリ箱みたいな扱いしかされないのは、サメ君もお気の毒かなという気がしました。

れでも、仕掛けは派手ですし、音響効果も十分、サメ君もよく動きます。作りとしては大作のように見えるのですが、中身はゲテ物というのは、ちょっと妙な感じです。いわゆる大作ゲテ物は他にも色々あるのですが、「ジュラシックパーク」のスピルバーグのような小技でも畳み込む緻密さ、「グリード」のスティーブン・ソマーズのような遊び心を交えた緩急自在さといったものが、あったらなあという気がしてしまいましたもの。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 紙芝居気分で観るなら、ドキドキ、ドッカンの娯楽編。
サメ君よく動いてます。人間もちゃんと動かしてね。
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