夢inシアター
みてある記/No. 184

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アルナーチャラム
アルナーチャラム

- Arunachalam -

3時間をあれよあれよという間に見せてしまう恐るべき時間つぶし。

Sep.23,1999 東京 テアトル新宿 にて


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舎の大金持ちの長男アルナーチャラム(ラジニカーント)は人々からの人望も厚く、いとこの美しいヴェーダヴァッリ(サウンダリアー)と彼は恋に落ちるのですが、実はアルナーチャラムは拾われてきた子供だったのです。祖母からその秘密を知られた彼は、家を出てマドラスの街に出てきます。ひったくりに会った女の子を助けたことから、その子の父親に紹介してもらった彼ですが、驚くなかれ、アルナーチャラムの実の父親はやっぱり大金持ちだったんですって。ところがその遺産の相続条件が3億ルピーを30日の間に使いきること。その遺産が悪い奴らの手に落ちようとしていることを知った彼は、その相続条件にチャレンジすることになるのですが....。

がこのラジニカーント映画を観るのは「ムトゥ」「ヤジャマン」に続いて3本目です。以前雑誌で、世界一の映画製作国がインドであること、また、その映画が3時間近くあるものが多いと読んで、「おー、すごい」と思ったのですが、何だか仏教国の説教くさそうな映画を3時間も観る気は起こらないだろうとタカをくくっていました。ところがどっこい「ムトゥ・踊るマハラジャ」が話題になったので、つい映画館に足を運んだところ、徹底したスーパーヒーローの設定と、強引に割り込む歌と踊りにあれよあれよという間に3時間近くを堪能してしまいました。確かに仏教的な説教臭さがないとは言えないのですが、それ以上の波瀾万丈のドラマと音楽と豪華な映像が時間のたつのを忘れさせてくれました。その後に「ヤジャマン」を観て、うーんやっぱり「ムトゥ」ってのは特別面白い映画だったのかなって気がしてしまい、「アルナーチャラム」は、そこそこの期待で臨んだのですが、これがやはり面白い、恐るべき時間潰しになっていました。これは決してけなしているわけではないです。普通、3時間の映画といえばかなりの長さなのに、それが全然苦にならない、観終わってああ長い映画を観たなあという実感もないのです。時間感覚をマヒさせるこういう映画って、考えてみれば娯楽そのものなんだというところに思い至ってしまいました。なぜ、日本の時代劇が相変らずのワンパターンでも中高年層の支持を得て、作り続けられているのかというのも、それが掛け値なしの娯楽だからなんだと気がついた次第です。

て、この映画なんですが、前半は、農村の大金持ちの家の跡取りを巡るお家騒動でして、それが後半はマドラスという大都会での、遺産争奪戦というなかなかドラマチックな展開になっています。でも、主人公のアルナーチャラムは徹底して、女にもてるし、喧嘩も強い、子供の頃観た「旗本退屈男」「月影兵庫」みたいなスーパーヒーローなのです。そして要所要所での、見栄の切り方なんて、笑っちゃうけどこれはスーパーヒーローのお約束ですもの。そして、彼が語るのは、親を大切に、貧しい人を助けようということ、今時の日本では笑いすらひきつるような、道徳の教科書のような内容が、娯楽巨編の真ん中にドンと据えられていて、しかも娯楽性を損なわないというのは、最近アメリカ映画ばかり観ている目には新鮮に映りました。

トーリー的には、「ムトゥ」や「ヤジャマン」より凝ったもので、3億ルピーを使いきるための方法とか、それを阻止しようとする悪党どもの策略が結構リアルで、おとぎ話の設定ながら、そこそこドキドキハラハラさせるものもあるのですが、最後は観る前からわかっているので、そこは安心して観ていられるというのが、娯楽の娯楽たる所以なのです。映画としての評価は何とも難しいのですが、外国人である日本人の私からすれば、ともかくも楽しくテンポよく作ってあるのが魅力なのですが、この映画の本当の魅力は、タミル人でないとわからないのかもしれません。ちょうど、アメリカ人が日本の演歌を聞いて面白がるようなものではないかなという気がします。

人公のラジニカーントはタミル語圏では、スーパースターだそうで、本当に神格化してる人がいるというのを、この間テレビで観ました。日本では暑苦しいオッサンにしか見えないのですが、北大路欣也だって松方弘樹もよく見りゃ濃いオヤジですから、別に驚くには当たりません。一方のヒロインが若くて美形というのもお約束ですが、この映画に登場する二人のヒロイン(メインとサブみたいな関係ですが)もピチピチのお嬢さん、さらに肉付き良しというのもマルです。特にメインのヒロイン演じたサウンダリアーの美形ぶりが際立ちました。笑顔が大変チャーミングなお嬢さんで、歌のシーンの表情豊かさがステキでした。また、彼女が主人公に対して積極的にアプローチをかける自由奔放な現代娘という設定が面白いと思いました。

舞のシーンで手持ちカメラを多用したり、早いカット割で音楽のテンポをさらにアップさせたりといった手法はMTVを観ているような面白さがありました。特に気に入ったのは、サブヒロインのナンディニが映画のスタジオでアルナーチャラムと恋仲になるのを想像する「アリアリ」というナンバーで、まさに群舞というにふさわしいパワフルなシーンになってます。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点1点0点 御用とお急ぎの方にはオススメしません。
でも落ち込み気味の人は一度お試しを。
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