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Gloria
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くれぐれもあの「グロリア」のリメイクとは思わないように。
Sep.14,1999
東京 ニュー東宝シネマ1
にて |
ロリア(シャロン・ストーン)はギャングの愛人ケヴィン(ジェレミー・ノーサム)の罪を被って入った刑務所を3年ぶりに出所します。そのギャングの帳簿係が組織の金の記録をフロッピーディスクに入れてずらかろうとします。ケヴィンの部下が帳簿係を訪れ、妻、娘、母親もろとも帳簿係を殺してしまいます。唯一生き延びた息子ニッキーがケヴィンのもとに連れて来られたところへ出所したグロリアが帰ってきます。ケヴィンの態度にアタマに来て、彼のもとを去ろうとするグロリアですが、ニッキーを殺そうと話してる連中の話を立ち聞きして、ギャング達を銃で脅してニッキーを連れ出します。フロッピーディスクを追う組織は二人を追跡するのですが、果たしてグロリアとニッキーは無事に逃げ延びることができるのでしょうか。
980年、ジョン・カサベテス監督、ジーナ・ローランズ主演の「グロリア」という映画が公開され、話題となりました。もとギャングの愛人だったグロリアがギャングの帳簿係から、その息子を預けられた直後、帳簿係一家が皆殺しになるというショッキングなオープニングから、ドラマは始まります。子供の扱いよりも銃の扱いのうまいグロリアが、小さな子供と少しずつ心を通わせる過程と、ギャングからの逃避行を並行して描いた作品です。ローランズが子供なんてまるで相手したことのない、はすっぱな中年女を熱演し、タフで凄味のあるキャラクターを印象づけました。
て、今回は、その「グロリア」をシャロン・ストーン主演、シドニー・ルメット監督でリメイクしたということなのですが、メインタイトルの脚本はスティーブ・アンティンが単独でクレジットされていまして、特に何かをもとにした(based upon)というクレジットはありませんでした。なぜなのかなあと気になったのですが、映画を観ているうちになんとなくわかってきました。これは、別物だぞということです。筋の展開は似たようなものなのですが、ヒロインのキャラクターがまるで違っているのです。タフでハードボイルドなグロリアは、ここにはいません。頭の切れるタイプでもなく、セクシーさで男を渡ってきたけど、その容色も衰え始めた、このまま年とったら哀れな末路になりそうなグロリアなのです。いわゆる並のヒロインになっているのが、オリジナルとは大きく違っているのです。正直言って、役者の格からすれば、ジーナ・ローランズとシャロン・ストーンでは差は歴然です。その差をどうしようかというときに、ストーンは、あえてローランズに近づこうとはせず、自分の年齢よりも若い(と思われる)グロリアを作り上げました。その結果、役者の魅力としても、ヒロインの魅力としても、オリジナルに
かなわない「グロリア」になってしまったようです。男もほれぼれするかっこいいグロリアはここにはいないのです。しかし、女性から観たとき、今度のグロリアがどう映るかは気になるところです。
回のヒロインは、30前後の女性から観たときに、感情移入しやすいのではないかなという気がしたのです。ルックスよし、ナイスボディでうまいこと世渡りしてきた女性が、そろそろ先の人生を考え始めたとき、男がまるでダメな奴だったことに気付いて、自分を満たしてくれる存在が7歳の少年だったとしたら? うーん、男としてはちょっとやな展開ではありますが、このタフじゃないヒロインが少年に対して母性がムラムラと沸き上がってくるあたりは結構リアルなのではないかという気がしました。ギャングものというよりは、独身の元イケイケねえちゃんと7歳の少年のロードムービーに、ギャングを絡ませたというのがふさわしいのではないかしら。ですから、ラストもギャングとの追跡から逃れた後のエピローグをかなり長く見せています。シャロン・ストーンの少年への感情移入ぶりが妙におかしくて、滑稽に見えてしまうところもあるのですが、男との色恋沙汰には場慣れしているのに、7歳の少年にはメロメロになってしまうという、ギャップの面白さを狙ったのかもしれません。特に少年と泊まったモーテルで、一緒のベッドに寝たグロリアが少年の向かって、ガラにもない慰めの言葉をかけ「歌でも歌ってあげましょうか」なんて言うのは、笑いをとりにいったのかなとも思ったのですが、ストーンの演技がマジなので、うーん、シャレではなさそうだなあって、不思議な味わいとなりました。
役の男性陣が生彩を欠いていたように感じられたのが残念でした。久々のジョージ・C・スコットも今一つ貫禄不足で、ジェレミー・ノーサムもドラマの中で語られる程には「サイテーな奴」に見えないのが物足りなく、唯一、ヒロインの先輩格にあたるキャシー・モリアティが存在感を見せて印象的でした。
リジナルの「グロリア」では、「ロッキー」のビル・コンティがテンションの高い泣きのスコアを書いてドラマをおおいに盛り立てていたのですが、今回は「セブン」「ビッグ」のハワード・ショアが担当し、静かなジャズタッチで全体をまとめています。この音作りの違いからも、前作がドラマチックな展開に重点を置いていたのが、今回はヒロインのキャラクター描写に重心がシフトしているのが伺えます。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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前作のリメイクを期待している人には×です。
ヒロインが並すぎて魅力イマイチ。
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