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The Matrix
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この世に真実はないの? ようこそリアルワールドへ.....
手ソフト会社の社員アンダーソン(キアヌ・リーブス)は、ハッカーとしてのネオという名前を持っています。そんな彼の家のパソコンに不思議な文字が現れます。「マトリックスに取り込まれている」そして、彼の前に謎の女トリニティ(キャリー・アン・モス)が現れ、彼に会いたがっている人間がいて、事態は一刻を争う状況であることを告げます。果たして、彼の職場に警官と共に謎の男達が現れ、連れ去られた先で、彼は奇怪な体験をします。解放された彼の前に再びトリニティが現れます。彼の周囲で次々と起こる不思議な事件の正体とは一体何なのでしょう。そして、そもそもの発端らしい、マトリックスとは何なのか?
二人といかれたギャングの息詰まる攻防を描いた「バウンド」というそれは面白い映画がありまして、その脚本・監督を担当したウォシャウスキー兄弟が、SFアクションに挑戦したということで、かなり期待はありました。「バウンド」は役者、ストーリー、視覚的な仕掛けが三位一体となって、近来希に見る、ゾクゾクする面白さに満ちた映画でした。それに、「マトリックス」の予告篇で次々に見せられる映像のかっこいいこと、これはタダではすまない映画だとは思っていたのですが、実物は面白いことは面白いのですが、役者のうまさが今イチ、ストーリー強引、そして視覚的仕掛けテンコ盛りという印象でした。
のレザーファッションに身を固めた、主人公たちが、見栄をきったり、派手なアクションを見せたりあたりは大変絵になるし、カッコいいです。黒のスーツとサングラスで統一された敵方のエージェント達も、そのシャープなイメージが悪役としてイケてます。こういった皆さんが銃撃戦を繰り広げたり、カンフーアクションを披露するあたりのカッコ良さはお見事でした。視覚効果による超高速のイメージとか、ワイヤーワークも取り入れた香港アクションなど見せ場はたっぷりとあります。全体のテンポや見せ場のつなぎ方は、日本のアニメを思わせるものがあります。ところが、そのアニメっぽさが足を引っ張っているような気もしたのです。メインとなるストーリーはかなり荒唐無稽なもので、アニメやゲームの世界ならともかくも実写の映画として映像化されるとは思えないようなものなのです。その結果、いわゆる何でもアリのやりたい放題の世界が展開する分、ちょっとでもそれに乗り切れないと「何じゃこりゃ」になってしまう、ちょっと観客からみて危うい世界がスクリーンに展開することになりました。
語のコアとなるのは、今の世界は全てが虚構の中にあり、人々はコントロールされた絵空事の中に生かされているだけという設定です。夢と現実の境界がないという、最近の他の映画でも見られたパターンと同じ系列のお話と申せましょう。リアルとは何か、現実と呼ぶものは何なのか、それを突き詰めると、自分の信じるものが現実であるとしか言いようがありません。脳で認識する神経信号がそれを現実とすれば、それは現実なのです。それまで疑い出したら、正気でいられなくなります。自分の五感が他人に操られているなんて、夢も現実も区別がつかなくて、真実を知ることができないなんて、そんな世界に自分がいるとしたら、一体何ができましょう。おいしそうな料理、匂いが抜群、舌触りサイコー、味はデリシャス、でもそれは実体がないとしたら? よく考えると面白い視点ではあるのですが、それを疑ったところで、証明する手だてはありません。疑念の無限軌道に入ってしまうことでしょう。物語を作る側からすれば、その疑問から話をふくらませれば、無限の可能性を秘めた題材と言えます。それは、設定の制約がなくなるということですが、その分、どんな安直な設定でもそれらしく見えてくる分野です。人間の五感は誰かに操作されていて、この世界で我々の体験は実は何もないところでコントロールされているだけなのだ、と言ってしまえば、その先は何でもアリです。我々をコントロールしているのは、実はオースティン・パワーズだったのだ。あるいは、人類などはハナから存在しない、本当の自分はただの夢見る葉っぱのフレディだという設定だってできます。
は、この映画の設定している真実とはどういうものかということなのですが、一言で語ってしまうと意外とつまらないのですよ。我々の意識をコントロールしているものの正体は、実は××××なのだと言われると、「ふーん、何だか70年代の新人SF漫画賞の優秀賞みたい」と思ってしまうのは、私だけでしょうか。そこへ、視覚的なテクニックと活劇の面白さの彩りを加えて娯楽映画としての水準以上の作品に仕上げたという印象です。特に銃の弾丸をよけちゃうというシーンをこれだけ効果的に見せた映画は他にないのではないかしら。また、映画は後半、怪獣もののような、スターウォーズのような派手な絵も見せてくれますし、大変サービス精神は旺盛な映画になっています。ただ、結末のところに「あわよくば続編」根性が垣間見られるのは、B級センスだなーって気がしました。
方、そういう紙芝居的な面白さ以上の説得力の部分では、残念ながら役者さんがあまりうまく機能していないようです。キアヌ・リーブスは薄めのキャラクターが持ち味ですが、この映画では最後まで薄いままだったので、ちょっと物語りの腰を弱めてしまったという印象でした。「バウンド」での怪演がすごかったジョン・パントリアーノが、またしてもキレてくれて楽しませてくれるのですが、彼以外は、絵になるキャラクター以上のものにはならなかったのがちょっと残念でした。
ン・デイビスの音楽はオーソドックスなアクションスコア以上の印象はなくいわゆるアンダースコアに徹したという印象です。ビル・ポープのキャメラは、物語のぶっとびぶりとは一線を画す、人間ドラマのような奥行きのある絵作りをしています。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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カルトって程でもない、ゴッタ煮エンターテイメント。
続編作るなら、こっちより「バウンド」を。
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