アイズ・ワイド・シャット
アイズ・ワイド・シャット
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Eyes Wide Shut
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ミステリー風ドラマだけど、ちょっと長いんでないかい?
Sep.5,1999
神奈川 藤沢オデオン2番館
にて |
師ウィリアム(トム・クルーズ)は妻アリス(ニコール・キッドマン)と7歳の娘がいます。ある日パーティに出かけたウィリアムとアリスはお互いの行動を見て何か漠とした不安に襲われます。次の日、ウィリアムはかつての友人に再会し、その友人からある秘密クラブの合い言葉を無理やり聞き出して、そのクラブへ乗り込んでいきます。そこは物々しい雰囲気の仮装パーティで、宗教的な儀式のようなものから、乱交パーティへとなだれ込むもの。しかし、ウィリアムは正体を見破られてしまいます。何とか家まで帰り着いたものの、その翌日、友人は姿を消していたのでした。一体、彼の好奇心は何を引き起こしてしまったのでしょうか。
告篇はびっくりものでした。何しろ全裸のニコール・キッドマンに、後ろからトム・クルーズが絡むシーンだけというもの。身長差が合わないぞ(キッドマンの方が背が高い)という話は置いといても、これは、なんだか普通じゃない、ヤラしい映画ではないかという期待をさせるではありませんか。それに、R-18という18歳未満お断りなんですもの。何じゃ、R-18って、これは要するに成人映画ということです。でも、スタンリー・キューブリック監督、クルーズ、キッドマン主演で、2時間半というメジャー映画というのですから、ちょっとどういう映画なのか見当がつきませんでした。
際に観てみれば、夫婦の危機の乗り越え方という趣のお話でした。普通に暮らしてきたつもりが何となく妻との関係がうまく行かない夫。貞淑だと思っていた妻の中には他の男に抱かれたい願望があったことを知って、嫉妬と羨望の入り混じった不思議な感情に襲われ、街の女を買おうとしたり、ケッタイな秘密クラブに出かけようとするのです。そんな行動が、トム・クルーズの坊ちゃん坊ちゃんしたキャラクターと妙に合うのが面白いと思いました。軽い気持ちで覗いてみたら、結構ヤバイところだったというのは、肝試しで本当に幽霊にとりつかれたようなものです。
の結果、ウィリアムは、自分の中にある避けてきた部分に直面することになります。自分の中にある良識だけでは計り知れないもの、これをスケベ根性と言ったら怒られるかもしれませんが、いわゆるムラムラっとくるあの感じではないでしょうか。それまで、カッコつけてきた主人公がその感じを受け入れざるを得なくなってしまった、なんて書くと、随分と古風な物語とも言えそうです。「失楽園」とか「危険な情事」なんて、どこか遠くの国のお話みたいです。そう言えば、30年くらい前の昼メロってこんな感じではなかったかしら。「いけませんわ、私は家庭のある身なんです。」「奥さん、私の気持ちを....」なんて世界がこの映画にも登場するのですよ。
の映画の中では、仮面が重要なアイテムとなっています。仮装(乱交)パーティのための仮面、パーティの参加者はみな仮面をつけています。主人公ウィリアムはパーティで正体を見破られ、いとも簡単に仮面を外してしまうのですが、その仮面をとるという意味をもっと考えるべきだったようです。自分には、裏表がない、仮面なんて無意味だと思っていたウィリアムなのですが、どうやら彼は、自分の欲望に仮面をかぶせて過ごしてきたようなのです。その仮面がじわじわと彼の心の中で実体化する二日間をキューブリックは丁寧な演出で見せます。そして、ラストで実体化した仮面に直面した主人公は成す術がありません。そんな主人公に妻の一言がなかなかにケッサクなのですが、これは劇場でご確認ください。
コール・キッドマンは、メガネをかけたときのママぶりにキラリと光る艶めかしさと、ドレスアップしたときの華やかな色気が絶品でして、ダンナの心を惑わす人妻という考え様によっては、かなり難しい役どころにピタリとはまりました。あんまりいい女を妻にすると、ダンナは気が気じゃないというのを絵に描いたような人妻ぶりでした。また、映画監督として有名なシドニー・ポラックが重要なキャラクターとして登場して、曲者ぶりを見せます。
かし、ミステリーとして、物語を追うと、何やらロアルド・ダールの短編を思わせる味わいがあります。特に、秘密クラブの実体がまるでわからないまま、物語としては決着してしまうあたり、また、それで主人公も納得してしまうあたりが面白いと思いました。一夜の悪い夢だと思っていたら、ちゃんとそれを跡付ける証拠が出てきてしまうあたりの、何となく居心地の悪さは劇場でご確認ください。
人映画というから、そういうシーンが目白押しかと期待するとガッカリすることになります。どうして、これで成人指定なのかちょっと理解に苦しむところはあるのですが、まあピカチュウのついでに観る映画ではありません。また、絵作りには凝ったところを見せるキューブリックだけに、秘密クラブの儀式の厳粛さとか、主人公の家の中の移動ショットなど見所は多い作品です。ただ、シーン毎にじっくりと描く分ちょっと長いんでないかいと思うところもありまして、その割に登場人物のキャラクターが浮き上がって来ないのが、ちょっと不満でした。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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どういう人にオススメしたものか困るのですが
深読みしなければ、こんなもんでないかい?
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