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Notting Hill
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おとぎ話とリアルな恋愛ドラマのバランス感覚がうれしい佳品。
Sep.4,1999
東京 丸の内ピカデリー1
にて |
ナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)は世界に名だたる大スター、一方、ロンドンの西、ノッティングヒルで本屋を営むウィリアム(ヒュー・グラント)は甘いマスクの二枚目だけど、バツイチの中年男。そんなふたりがひょんなことから知り合いになり、そして、アナの方から、ウィリアムに積極的にアプローチをかけてくるではありませんか。これは夢か幻か、まるで住む世界の違う二人がひかれあっていく、ああ、何てロマンチックなハーレクインロマ.....なんてわけにはいきません。やっぱり、その、身分違いの恋だもの。現実に二人が結ばれるハッピーエンドなんて、「ローマの休日」然り、ここはやはり、ちょっと切ない結末に.....なるの?
ンドンを舞台にしたちょっと現実離れしたラブ・ストーリーです。ともかくも大スターであるアナが、そんじょそこらの本屋さんと恋に落ちるなんて、うっそでぇーと言いたくなるような設定なのですが、この映画は、本屋のウィリアムとその周囲の友人達を丁寧に描くことで、不思議な落ち着きと奥行きが出ました。おなじ、おとぎ話のような設定でも「プリティ・ウーマン」とは一線を画す作品と申せましょう。恋愛不器用なウィリアムが、友人たちも巻き込んで葛藤してしまうあたりのおかしさはなかなかに笑える一方、観ている方も主人公を応援したくなってくるあたりは、リチャード・カーティスの脚本のうまさなのでしょう。物語が二転三転するクライマックスはなかなかに見応えがありましたし、ささやかな感動もありました。
ュー・グラント演じるウィリアムが、憧れの大スターと知り合いになれたということで舞い上がってしまうと思いきや、妙に冷静なのがおかしかったです。それも余裕の冷静さではなくて、なんだか夢みたいで実感がないという感じなのです。ところがだんだんとヒロインと会い続けることで、彼の中に一人の女性としてのアナの存在が大きくなっていきます。ヒュー・グラントのひょうひょうとした持ち味が、優柔不断一歩手前の男を好感の持てるキャラクターにしています。単に、情けないとかどんくさいでは片付けきれない、ウィリアムのためらいや誠実さが、この映画の魅力になっています。特におかしかったのは、昔の片思いの相手(今は友人の奥さん)に「男としての魅力を感じなかったもの」と笑顔できっぱり言われて、「やれやれ」という顔をするところ。こういうことを、面と向かって言っても構わないキャラクターって、考えてみると、ウィリアムってなんかいい奴なのかもしれません。
人公二人の周囲の人間は、ヒロイン側はほとんど登場しませんが、ウィリアムの周りの連中は丁寧に描かれていて、これがなかなかいい味を出してます。笑いを一手に引き受ける同居人を演じたリス・エヴァンスを筆頭に、友人を演じた面々がそれぞれのお悩みを抱えながらも、彼の恋をいい距離感を持って応援するのが微笑ましくもリアルでした。ラストでもなんだかんだ言いながら 主人公をハッピーエンドさせようと盛りたてるあたりなんか、ホロリとくるものがありましたもの。特にウィリアムの友人の奥さんベラを演じたジーナ・マッキーが車椅子というハンディのある役どころで強い印象を残しました。また、クライマックスが「ローマの休日」と同じ記者会見シーンというのも楽しい趣向で、そこでどういう結末をつけるかは劇場でご確認ください。また、その記者会見場にウィリアムを連れていこうとするときに、残ろうとするベラをダンナが強引に連れて行くというちょっとエピソードが心に残ってしまいました。ラストに何だか微笑ましいんだか、おちょくっているのかよくわからないエピローグがつくのも楽しい趣向でした。
ュリア・ロバーツはよくこんな役をと思うキャラクターを手堅く演じてみせました。大スターでマスコミに追われ、売れないころヌードになって、整形していてって、これアンタのことじゃないの?と思うようなキャラクターなんですもの。このひとは役選びになかなか曲者ぶりをみせてまして、「プリティ・ウーマン」で娼婦イメージがつきまといかけると「フック」で妖精ティンカーベルを演じ、30を前にして若いヒロインが難しくなったところで「ベスト・フレンズ・ウェディング」を、三十路を迎えてちょっと母親をやってみようかってところで「グッドナイト・ムーン」というわけで、今回は映画スターです。でも、単なるセルフパロディに終わらないで、キチンと恋愛ドラマとしてヒロインしているのは大したものだと思った次第です。また、そのスターぶりがビシっと決まる一方、恋する一人の女性の部分がいいんですよ。ここまで、いい年した女性の方からマジでアプローチかけるラブストーリーって珍しいという気がしました。何だか無様でカッコ悪いのだけれど、そんな彼女を応援したくなりました。
イケル・コールターの撮影はシネスコの画面にふさわしい絵を切り取ることに成功していまして、室内シーンでも上下の狭苦しさを感じさせないのが印象的でした。場面場面の挿入歌が多い映画なのですが、スコア部分を「絶対×絶命」「マイ・フレンド・フォーエバー」のトレバー・ジョーンズがロンドン交響楽団を使い、しっとりしたドラマの音を作り出しました。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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ヒロインの恋人役に、濃いキャラクターのあの人が!
ヒロインの捨て身のカッコ悪さに☆一つおまけ。
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