ファミリー・ゲーム/双子の天使
ファミリー・ゲーム/双子の天使
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The Parent Trap
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ほんわか楽しい家族映画、でも、子はかすがいというテーマの今日性は?
Aug.21,1999
東京 渋谷シネパレス
にて |
マー・キャンプに参加した女の子たちになぜか見た目そっくりの二人がいました。かたやアメリカのブドウ園の娘ハリー(リンゼイ・ローハン)、もう一人はロンドンから来たウエディングドレスデザイナーの娘アニー(リンゼイ・ローハン二役)です。最初は反目しあってた二人ですが、よくよく話してみれば、誕生日が同じで、どちらも片親しかいない、そして、お互いの親の写真を見せ合ったらこれが一枚の写真を破った片割れ同士だったのです。自分たちが双子の姉妹とわかってビックリですが、そこでお互いに入れ替わって見たことのないパパとママに会おうと計画、それは大成功だったのですが、パパには胡散臭い婚約者が付きまとっていたのです。両親をもとのさやに収めるべく二人は策を練るのですが、うまくいくのかしら。
つて、ディズニーが「双子のロッテ」をもとにした映画のリメイクだそうです。今回もディズニーの映画ではありますが、製作・脚本・監督に「赤ちゃんはトップレディがお好き」「花嫁のパパ1&2」をてがけたチャールズ・シャイヤーとナンシー・マイヤーズが参加し、ほんわかムードのファミリーピクチャーに仕上げました。いつもは監督をするシャイヤーが今回は製作に回り(第二班監督はやってますが)、マイヤーズが初メガホンをとりました。家族の絆を複雑な問題意識などを盛り込まずに軽やかにまとめあげる手腕は「花嫁のパパ」で実証済みですが、今回は離婚夫婦のその後という、今日性のあるシビアなテーマを、双子の少女の視点からまろやかにまとめました。
子の映画なんだから、双子連れてくればいいじゃんと思うのですが、この映画では視覚効果のマジックで一人二役を実現させています。でも、そうする価値があるくらい主人公を、演じるリンゼイ・ローハンがいいです。そばかすだらけの小生意気な12歳の少女を出来過ぎの一歩手前のキャラクターで演じきりました。健気とは言えないけど両親と一緒に暮らしたいという素朴な気持ちが素直に伝わってくるあたりはなかなかの演技力と申せましょう。特に初めて会うパパやママを見てうれしくて仕方がないという表情がすごくかわいいのです。
の一方、両親を演じたデニス・クエイドとナターシャ・リチャードソンは意外や控えめに脇役として二人の娘たちを引き立てました。特にリチャードソンがコミカルな味わいを見せていながら、ラストではきちんとラブストーリーのヒロインになってしまうあたりが見事でした。予定調和のようでいて、きちんと二人の葛藤を重くならない程度にドラマにとりこんでいるあたりはうまいです。
婚の原因が何だったのか、別れてから10年という年月をお互いどう思ってきたのか、このあたりを突き詰めて、大人のドラマにすることを、わざと避けたセンスは買いです。そこをドロドロと描いていけば、ファミリーピクチャーの枠を超えてしまいますもの。でも、逆に離婚という今日的なテーマへのアプローチとしては、やや弱いものになってしまいました。この映画の中では「子はかすがい」という結末に向けて物語は進んでいくのですが、現代は「子はかすがい」というのは、単にヨリを戻したい方が使う方便にもとられかねないご時世です。とはいえ、親の関係がうまくいかない時に、親は子供のために仲のよいふりをしなくちゃいけないというお話ではありません。子供たちの気持ちが、両親の若い時の過ちに気付かせたというのは、うますぎる展開ながら、ホロリとさせるものがありました。
役の面々も、基本的に主人公二人を引き立てるポジションを手堅く演じています。パパに言い寄る性悪女もいかにも悪い奴という感じのコミカルな悪役になっていますし、乳母と執事という親代わりの存在のていねいな描き方にも好感が持てました。名前を知らない人ばかりでしたが、これら脇役の好演がこのドラマのまろやかな味わいを支えています。
役合成のシーンも大技を使って二人を絡ませるのではなく、ダブル(影武者)をうまく使って、あくまで自然な絵作りを心がけているようです。このあたりは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー・パート2」で、同じ役者を一つの画面で絡ませた実績のある撮影監督のディーン・カンディのセンスでしょうか。
わゆる子供向きを第一に考え、大人も楽しめるという映画に仕上がっています。レイティングもPGという穏やかなものですが、丁寧に作られたドラマはきちんと劇場で観るものになっています。こういう映画がもっとヒットしてくれたらいいなあと思いますが、渋谷の土曜日朝一回目はガラガラの場内でした。「スター・ウォーズ」やアニメもいいけど、こういう映画に親子連れがいないのは、騒がしくなくてうれしい反面、ちょっと残念な気もしてしまいました。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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子供が観てちょっとロマンチック気分になれるような映画。
離婚経験者だと、出来すぎ展開に辟易するかも。
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