夢inシアター
みてある記/No. 175

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プリンス・オブ・エジプト
プリンス・オブ・エジプト

- The Prince Of Egypt -

聖書の有名な物語も無信心な私には神様の代理戦争。

Aug.15,1999 東京 日劇プラザ にて


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代エジプトでは、専制的なファラオのもとヘブライ人は奴隷として酷使されていました。エジプト兵による幼児虐殺から逃れた赤ん坊が一人、エジプトの女王に拾われて、エジプトの王子モーゼとして立派な若者に育ちました。兄のラメセスと共にドラ息子を満喫しているモーゼでしたが、ついにある日、自分の出自を知ることとなります。そして、宮殿を去ったモーゼは砂漠の民に救われて平和な日々を送るのでしたが、神が彼に苦しむ自分の民を救えと言うのです。エジプトに戻りファラオとなっていた兄ラメセスにヘブライ人の解放を要求するのですが、それはかなえられず、ヘブライ人の神はエジプトにありとあらゆる災厄をもたらすのですが......。

「十
戒」などでおなじみの旧約聖書のヘブライ人の出エジプトの物語です。とはいえ、聖書をマジメに読んだことのない私にとっては、外国の昔話の一つでしかありません。そういう視点から以下、この映画について書かせていただきます。

書文化圏の人にとっては、もうお約束の物語、日本の「忠心蔵」のようなお話なのかもしれません。エジプトによって虐げれた民ヘブライ人がいかにしてパレスチナへ脱出するかまでを描くのですが、モーゼがエジプトの王子として育てられ、敵であるラメセスとは兄弟だというところに人間ドラマの生まれる余地がありました。この映画でも、兄を想う弟の気持ちがドラマに奥行きを与えていますが、何しろメインの物語が絶対的ですから、うかつに脚色できないものがあったようです。

かし、ユダヤの神様も結構やることが荒っぽくて、奴隷身分の自分の民(ヘブライ人)がエジプトによって虐げられていると見るや、水を血に変え、火を降らせ、病気をはやらせ、挙げ句は第一子皆殺しなんてことをやるわけです。借りは倍にして返してやるぜというあたりは、神様というよりは、地元のヤクザみたいな感じです。頼りになるという意味でも似たようなものでしょう。エジプト側にはラーの神がついてるらしいのですが、パワー的にユダヤの神にかなわないみたいです。子供の喧嘩に親が出たら、形勢逆転という感じです。

れも、これも、ユダヤの歴史の本ですからこうなるのですが、ここで登場する神様というのは一体何者なんだろうという興味が頭をもたげてきます。平和に暮らすモーゼを呼び出して、「私の民を助けろ」と命令を下すわけです。でも要所要所は自分で奇蹟を起こしていいとこさらっちゃうわけですから、「だったら最初からお前やれよ」と言いたくなるようなお方なのですよ。それに、エジプト人は自分の民じゃないから何してもいいと思っているふしがありまして、何の罪のない子供を殺しちゃうあたりは、秦の始皇帝みたいにわがままな奴です。(「始皇帝暗殺」って映画でそういうシーンを見たもので)

とすれば、神様も、今の神様とはモノが違うと思った方がよさそうです。人間平等とか博愛主義とは無縁の、この神様は、いわゆる民族の英雄のスーパーナチュラル版といえそうです。このユダヤの神様は、ヘブライ人は作ったかもしれないけど、エジプト人の製造責任は負っていないようですし、モーゼが出てくるまでに野たれ死んだヘブライ人への弔いの気持ちもなさそうです。それに比べると、兄との葛藤に悩み、エジプト人の子供の死に涙するモーゼは偉いよねえ。(まるで「なっちゃん」みたい)と、現代風価値観では判断してしまうのですが、なんてったって3000年以上昔のエジプトですから、奴隷は当たり前、強いもの勝ち、力を誇示した神が勝ちという価値観なのかなと思い至ってしまいました。

衆シーンなど大変見事にできていまして、CGを駆使したらしい画面作りも見事です。一方人物のキャラはアニメとして処理してまして、無理にCGにはめ込まないセンスは買いです。主要キャラが声優と何となく似ているのもご愛敬でしたが、そんな中で主人公のモーゼとラメセスが、モーゼの方がレイフ・ファインズに、ラメセスの方がヴァル・キルマーに似ていて、実際のキャスティングと逆のように見えたのが興味深かったです。ミシェル・ファイファーとサンドラ・ブロックは個性の強いしゃべりをするので、声優のキャラがずいぶんと反映されているという印象を受けました。

ライマックスの紅海が割れるシーンでは、セリフを排して音楽と効果音だけで見せきったセンスは買いです。また、歌の部分はスティーブン・シュワルツが担当し、スコアをハンス・ツィマーが書いているのですが、全体としてツィマーのカラーが強く、その分統一の取れた音楽になっています。歌の部分もツィマーがプロデュースしているところが多いからでしょう。オープニングの奴隷の歌から、ヨケベド(モーゼの母)の祈りの歌に入るところから音楽はこの物語をドラマチックに盛り上げています。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 神様ってホントに扱いづらいわねーと思う私はバチあたり?
多少の不満も音楽が盛り上げてチャラ。
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