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Entrapment
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今回はショーン・コネリーの胡散臭さがうまくドラマにマッチしました。
Aug.14,1999
神奈川 川崎チネチッタ3
にて |
ューヨークでレンブラントの絵が盗まれてしまいました。その鮮やかな手口から、大泥棒マクレディ(ショーン・コネリー)の仕事ではないかと、保険調査員ジン(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)はマクレディの調査に乗り出します。ジンは上司の許可をとって一路ロンドンに向かい、彼に仕事の相棒を依頼するという名目で接近します。どうも信用できない女だと思っていたマクレディも、彼女の頑張りぶりに、段々とその気になってきます。そして、何と本当に二人は古代中国の黄金の仮面を本当に盗みにでかけてしまいました。ちょっと待てよ、囮調査じゃなかったの?
題の「エントラップメント」は文字通り「罠」のこと。そして、希代の大泥棒マクレディをとっつかまえるために、保険調査員のジンがマクレディに接近していくという発端は何となくわかるのですが、一方、オープニングで盗まれたレンブラントの絵にはちゃんと買手がいるようなのですが、マクレディは金のために仕事するようなタイプには見えません。また、ジンもマクレディに仕事の話を持ちかけた後は、マジで仕事の訓練に入っちゃうし、どうも、釈然としない展開がずっと続きます。まあ、最終的にパズルのピースは埋まるのですが、そこにいたるまでが、色々な伏線と意外な展開を交えて、ロン・バスとウィリアム・ブロイルズによる脚本は、謎とその種明かしをうまくドラマの中に散りばめています。また、「ジャック・サマーズビー」「コピーキャット」などミステリー仕立ての中にキャラクターをきっちり描き込むジョン・アミエルの演出もドラマのツボを外していません。クライマックスも冗長に見えるギリギリのところまで、タメの演出を見せ、ジンの上司のキャラクターまできっちり見せるあたりが見事でした。そして、何か変だなと思わせながらも、物語をぐいぐいと引っ張っていく力技も見せてくれます。
た、視覚的な見せ場ということでは、ヒロインがバレエか体操演技のように防犯レーザーを避けながら獲物に近づいていくシーンが、美しくてカッコよくてエロティックでした。また、マクレディの隠れ家のお城の風景が美しい絵になっていますし、クライマックスがマニラのクアラルンプールにあるハイテク超高層ビルというのも、目先の変わった面白さがありました。オープニングのニューヨークの空撮もきれいでしたし、映画館で観るにふさわしい見所の多い映画になっています。
薇の名前」ころからでしょうか、最近のショーン・コネリーって貫禄がついたのはいいのですが、パーフェクトなキャラクターが多すぎて、「レッド・オクトーバーを追え」「ザ・ロック」などもっとサスペンスが出た役どころも、彼が出てきたことで展開がほぼ固定されてしまうところがありました。この作品もパーフェクトな大泥棒という役どころなので、いやな予感がしたのですが、いつもと違って女の色香に迷うあたりで、生な人間の奥行きが出て、後半の意外な展開も納得できるものがありました。
しいのは、ヒロインのキャサリン・ゼータ・ジョーンズがコネリーを向こうにまわすパワーに乏しかったことでしょうか。確かにフェロモン満載の一見悪女風のキャラクターで、ルックス的には申し分ないのですが、演技的に表情が3パターンくらいしかないので(その内の一つはLuxのコマーシャルの時の顔)、ドラマが進むにつれてもっと魅力的になっていいはずのキャラクターなのに、今イチ奥行きが出ませんでした。確かにミステリアスな部分を持ったヒロインということでは合格点なのですが、久々に人間的茶目っ気を見せるコネリーの相手役としては、もっと魅力的であって欲しかったと思いました。おかげでエンディングが甘いという印象を持ってしまいましたもの。
のウィル・パットンやビング・レイムズといった面々が主人公の引き立て役に終わらなかったのは、演出のセンスなのでしょうか。特にウィル・パットンがなんとなくヒロインに引かれているらしい上司を演じて印象的でした。
楽を担当したのが、「コピー・キャット」に続いてアミエル監督と組むクリストファー・ヤングで、フィルハーモニア管弦楽団をつかってサスペンスフルな音を聞かせてくれます。トレバー・ラビンなどのハンス・ツィマー一派の人に比べて音に落ち着きがあり、アクションシーンも重量感がありますし、また主人公を描写する音楽などはペーソスを感じさせ、この映画を単なるアクションサスペンス以上のドラマに仕上げています。昔なら、ジェリー・ゴールドスミスが守備範囲にしそうなジャンルなのですが、最近はこの類の映画は、ヤングや、ジョエル・マクニーリー、ジョン・デブニーといった面々が手がけることが多いようです。その中でも、ヤングの重量感はなかなかに貴重な存在といえると思います。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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安っぽくならない画面作りが劇場映画らしい出来栄え。
結末はもっとハードにビシっと決めて欲しかった。
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