夢inシアター
みてある記/No. 172

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パラサイト
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- The Faculty -

宇宙から来た寄生虫の映画は、不思議に安定感のある侵略SFおとぎ話。

Aug.7,1999 静岡 静岡ピカデリー2 にて


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る田舎町の高校で、夜に女校長先生が体育教師に襲われるという事件が発生します。ところが、その事件はなかったように日々が過ぎていくではありませんか。一方、この学校で先生達の行動がおかしくなり始めました。そして、ある老女教師がスタン(ショーン・ハトシー)とケイシー(イライジャ・ウッド)の前に半分崩れかかった姿で助けを求めてきます。「奴等はみんなに寄生する」という彼女の最後の言葉。さらに、ケイシーとデライラ(ジョーダナ・ブリュースター)は職員室で恐ろしい事件を目撃してしまいます。そこには人類の存亡にかかわるような重大な秘密があったのです。

「ス
クリーム」で一躍有名になったケビン・ウィリアムソンの脚本をもとに、「デスペラード」のロバート・ロドリゲスが監督した、ホラーSF青春ドラマといったところでしょうか。高校が舞台というところとか、血生臭い事件で映画が始まるというところは「スクリーム」と同じですし、高校の生徒が主役で、事件の謎に挑まざるを得なくなるという展開も同じです。ところがこの映画が「スクリーム」と違うのは、一応SF映画の体裁をとっているということです。でも、「スクリーム」がホラーオタク的な展開になるのと同様、こちらは侵略SFオタクの展開になるのが面白いところです。ここで引き合いに出されるのはジャック・フィニィの「盗まれた街」ですが、映画でも、「ボディ・スナッチャーズ」「スペース・インベーダーズ」とか、ジョン・カーペンターの「光る眼」「遊星からの物体X」への良く言えばオマージュ、悪く言えばパクリの趣向が散りばめられています。特にジョン・カーペンター趣味は濃厚で、「遊星からの物体X」の血液検査や人頭蜘蛛といった趣向がモロに出てきますし、また画面を誰かわからない人影が横切るというカーペンター演出を、パロディのように使っています。

頭から本筋に入っているというムダのない展開は今時のノンストップムービーの作りになってます。話が脇道にそれないで1時間44分を走りますが、主演の若者6人のキャラクターを丁寧に描いていて、ダレる部分がないのは演出の力なのでしょう。物語としては、イライジャ・ウッドが主役ということになるのですが、彼以外のキャラが立つ部分をきちんと入れているので、ポスターや予告篇にある集団ドラマのような味わいが生まれました。

筋の方は、いわゆる隣の人がエイリアンに心と体を乗っ取られてしまい、疑心暗鬼になるというシチュエーションなので、なかなかに怖いお話になっています。でも、その危機的状況を打破できるルールというのが、かなり御都合主義で笑えてしまいます。絶望的な恐怖が後半は一転して、ゲーム感覚になってくるのは、脚本のセンスなのでしょうか。でも、その分展開がシンプルになり、観客の興味を一点に絞り込むことに成功しており、映画としてのまとまりは悪くありません。SF映画ではありますが、ホラー仕立てで、青春ものの味わいもあり、ブラックユーモアもあり、怪獣映画の趣向もありで、一言で言うと滅法面白い娯楽映画に仕上がっています。これだけの趣向を盛り込んで、まとまりのある映画にできたのは、監督の力量あってのことなのでしょう。

者陣は若い面々がなかなかに楽しくて、特にSFオタクヒロインを演じたクレア・デュバルが美形じゃない分、印象的でしたし、苛められっ子を演じたイライジャ・ウッドが安定したうまさを見せてくれます。また、脇の大人の面々に曲者を揃えているのも注目で、「ターミネーター2」のアンドロイドことロバート・パトリックがまたしても非人間的キャラを演じてますし、「キャリー」のパイパー・ローリーの不気味キャラ全開ぶりもお楽しみです。さらに、若い子なんかに負けてないオネエ様方、「グリード」のファムケ・ジャンセンや「デスペラード」のサルマ・ハエックといった妙に豪華な面々がお話に華を添えてます。とくにファムケ・ジャンセンの物体Xには大笑いでした。

近のアメリカ映画では、毎度のことながら、SFXの予算は潤沢に使えたようで、不気味な虫のような寄生体がなかなかリアルな動きを見せてくれますし、特殊メイクのゲロゲロシーンも若干ありますし、さらには、アニマトロニクスとCGを駆使したと思しき寄生体の大元締めとかの暴れっぷりはなかなか頑張ってるという感じです。クライマックスのモンスター映画らしい展開は「レリック」を思い出させるところが多かったのですが、編集を監督自身が手がけているせいか、畳み込みは見事でした。ただ、ところどころに登場する、でっかい音を使ったビックリドッキリ演出はカーペンターへのオマージュもあったのかもしれませんが、ここだけは、ちょっとご勘弁の気分でした。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点1点0点 意外とこの監督、娯楽職人になるかも。
ラストのまとめ方が好き。
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