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Abre Los Ojos
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夢かうつつか幻か、ずーっとこんな感じの映画、でも結構マジ。
Jul.25,1999
東京 シネヴィヴァン六本木
にて |
神病棟で、分析医の質問を受ける不気味なマスクをかぶった男、セサル(エドゥアルド・ノリエガ)。彼はどうやら殺人を犯したらしいのです。医師にうながされ、少しずつ自分の記憶を語り始めるセサル、彼は大金持ちで二枚目のプレイボーイだったようです。そんな彼が自分の誕生日パーティで知り合ったソフィア(ペネロペ・クルス)に心をひかれます。翌朝、彼女のアパートを後にする彼の前に、彼を追い掛け回す女ヌリアが現れ、彼を車に乗せて猛ダッシュ、車は激突して、彼は顔面を大怪我をしてしまいます。こうなると昔二枚目なだけに無残です。それでも、彼のことを思ってくれるソフィアはまるで天使のよう。そして、奇蹟の大手術が行われ、彼は昔の顔を取り戻すのですが、それから、彼の存在自身を揺るがすような不思議なことが怒り始めるのです。
ペインの新鋭監督アレハンドロ・アメナールが「テシス」に続いて放つサスペンススリラーです。あちこちでかなり高い評価を得ているそうですが、宣伝の扱いからしていかにもシブヤ系の映画みたいな売り方なので、話半分という気持ちでスクリーンに臨みました。「これを観なければ21世紀を語れない」という宣伝文句はさすがに大げさですけど、自分の存在のはかなさをテーマになかなか示唆に富んだ内容の映画になっていまして、楽しめる映画になっています。
枚目の主人公が自己で顔が醜くなって、未来も希望を失ってしまう、そんな設定が結構リアルなのですが、物語の見せ方はリアルというよりはかなり凝ったもので、どこまでがホンモノで、どこからが主人公の妄想なのか、よくわからないようになっています。オープニングも、朝目覚めた主人公がビル街に出てみると人っ子一人いないというもの(「ディアボロス」でも同じ趣向があったのを思い出してしまいました。)で、のっけから主人公が何やら悪夢に取り付かれているような印象を与えます。この悪夢の根元はなんなのか、映画はそのまま雰囲気描写で突っ走るのかと思いきや、意外や犯人探し風の展開になってきて、ラストには一応パズルのピースは出揃うというあたりは、作り方としては至極まっとうで、単に趣向や雰囲気に走らないきっちりとした骨組みのドラマになっています。
も、釈然としない気分で映画館を出ることになります。この映画は、主人公がよく夢を見るシーンや、夢の内容を語るシーンが何度も登場します。この夢と現実の境目がこの映画の重要なカギとなります。その境目は映画の中ではラストで一応一つの答が出るのですが、「待てよ、このラストもまた夢なんじゃないの?」という疑いが頭をよぎると、映画の結末もなんだか怪しいような気がしてきます。このあたりは、「トータル・リコール」を思わせるものがあるのですが、基本的に夢と現実の区別なんてできないんじゃないかなって気分になってきて、今の自分の存在すら危ういような気分になってきます。だって、さめない夢と現実とをどう区別をつけるの?
れは、夢ではないかしら? と、顔をつねってみる、「痛!」やっぱり夢じゃない。と、思って大丈夫なのかしら、夢に色や味があるんだから、痛みだってあるかもしれない、そうなると夢と現実の区別なんてつきようがないです。この映画では、現実の世界だと思っていたところに、死んだはずの人間が現れたり、直った筈の顔が醜く戻っていたりという、超自然的な現象が発生し、主人公の頭を混乱させます。これが全部夢なら、色々なムチャも納得できるんだけど、それで今の不思議を説明しきってしまおうとすると、自分はずーっと夢を見っぱなしになってしまいます。聞いてる精神分析医はもう少し冷静に主人公の妄想だと考えて、彼を精神病院での治療に専念させようとします。
気の世界から、彼の記憶の糸をたぐろうとする分析医と、自分は誰かの陰謀にはめられたに違いないと思い込む主人公は一見対立した関係に見えながら、その関係がクライマックスで意外なフォーメーションを見せるところが圧巻です。一体、現実と夢の間にはどういう関係があるのか、もしも夢だとしたら、そこにいる人間に実体はあるのか、この辺りを突き放したラストは、もう一押しあってもよかったように思いました。
かなかに目新しい趣向の映画かなと思っていると、観ているうちに過去の映画を思い出してしまいました。先述の「トータル・リコール」のほかにも「うる星やつら・ビューティフルドリーマー」「八日目」「アンナ・オズ」「ダーク・シティ」などが思い浮かびました。モトネタをたどれば結構ありがちな話なのかもしれません。ですが、この映画のいいところは妙に斜に構えることをしないで、真っ正面から、夢と現実の狭間を描いて、そこに一応の決着をつけているところです。一体、主人公は殺人を犯したのか、そして、彼の現実はどこにあるのか、これらの問いを投げっぱなしにしない結末は劇場でご確認ください。キザな言い方をすれば、人は「夢から夢を渡り歩く旅人」ということになるのかな。
督自身が手がけている音楽は、シティ・オブ・プラハ・フィルハーモニックの演奏でシリアスな音になっています。その一方でマッシブ・アタックなどの最新のテクノ、ポップなどのサウンドを盛り込んだ音楽構成をとっています。オケによるオーソドックスな音楽がこの映画を一本芯の通ったものにしているのが、聞き物です。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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どうせ夢なら好きなようにいい思いをしたいよなあ。
鋭さよりも骨太さを買いたい映画。
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