-
Lola Rennt
-
感動のヒロインというよりは、遊び心に溢れた楽しい佳品。
Jul.19,1999
東京 渋谷シネマライズ2F
にて |
台は現代のベルリン、ローラ(フランカ・ポテンテ)は恋人のマニ(モーリッツ・ブライプトロイ)からの電話でびっくり、ヤバイ取り引きの金10万マルクを電車に置き忘れたんだって。それがないと彼の命はないのです。後20分、12時までに金ができなきゃ、スーパー強盗をするとマニに言われ、ローラは何とかすると答えてしまいます。20分で10万マルク、そうだ銀行のパパだ。部屋を飛び出したローラは走る走る、何せ残り時間は20分です。銀行にたどり着いたローラですが、突然に金くれと叫ぶ娘にパパは呆然。ああ、時間が迫ってくる。愛するマニが強盗になっちゃうよー。ついに時計の針は12時を指し、銃を構えたマニはスーパーに向かう、「マニ!」彼女の叫びは果たしてマニに届くのでしょうか。
っけから、なにやら勿体つけたような引用が登場します。「人が問い続ける質問、そして得られる答は結局一つに集約される。」「始めは終わりなのだ。」ふーん、何のことやらの気分になっていると、人文字のタイトルという凝った映像に、ひょっとして小難しいアート風映画かといやな予感が頭をよぎったのですが、その後のタイトルバックは何とアニメ。「シンプソンズ」風にデフォルメされたヒロインが走るのにテクノサウンドがドコドコと響いて、期待が蘇ってきました。そして、本筋が始まると何やら勿体つけたような、気取ったカッティング、スローモーションやモノクロ映像など、様々な趣向が盛り込まれて、ノリのいい音楽と共に、観客を巻き込んで映画は走り始めるのです。
然、走るヒロインのアニメが挿入されたり、ビデオ映像になったり、とにかくアソビが一杯という感じです。主人公がぶつかった人間の将来がフラッシュバックされるという趣向など、おかしくて笑ってしまったら、私の笑い声だけ目立ってしまいました。この映画の宣伝文句は「走れ、ローラ、愛のために」ですから、シリアスな映画かという先入観があったのは失敗だったかなという気がします。女版「走れメロス」かと思っていると、実はそういう設定はあくまで仕掛けなのだということが段々とわかってきます。
るローラの映像のカッコよさを堪能し、音楽のテンポに身を委ねるのが一番の楽しみ方と言えそうです。また、この映画にあるゲーム感覚はちょっと昔なら意味不明になってしまうのですが、今ならこの展開は容易に受け入れられるものになっているというのが、時代の産物という気がしました。ゲームだと思えば、ヒロインがぶつかった人間の未来のフラッシュバックは、ロール・プレイング・ゲームの、街で出会ったキャラのプロフィールを見る感覚です。
ログラムによると脚本・監督のトム・ティクヴァは女性の走る絵を撮りたくてこの映画を作り始めたようで、なるほどヒロインの走りはホントにかっこいいです。体全体を躍動させる長距離走のようなフォームながら、全力疾走の動きというのが、絵になるのですよ。こういうカッコいい彼女を見ていたら、ちょっと昔の「ラスト・オブ・モヒカン」のダニエル・デイ・ルイスの走りを思い出してしまいました。しなやかで力強くそして全力疾走。息切れするに決まっているのに、それを見せないあたりは超自然というか、リアリズムすっ飛ばしという印象です。そもそも、ローラが他の交通手段を使わないでひたすら走ってるって事自体がリアリティがないですからね。そのリアリティをすっ飛ばす仕掛けとして、アニメまで使ったスタイリッシュな映像、とにかく体全体で感じられるビートの効いたテクノサウンドがうまく機能しています。
ロインのフランカ・ポテンテは、ちょっとたれ目の美人タイプじゃない、体型もランナーというにはスリムじゃない女性ですが、この映画の弾む感じにうまく合ったキャラクターです。アニメになると、このたれ目が強調されてなかなかなファニーフェイスになってしまうのがおかしかったです。
体、結末はどうなるのかと思わせる展開を見せる映画ですが、その決着もなかなか笑わせてくれるもので、「へ?!」と思うラストは劇場でご確認下さい。まず絵と音のカッコよさありきという映画ですが、そこへ、ユーモア、アクション、ラブロマンスといった娯楽映画の要素を気前よく盛り付けたという印象です。「走って彼氏を助けに行く究極の愛の映画だわ」なんて先入観を捨てて御覧になることをおすすめします。1時間21分というタイトな時間もうれしいなかなかの佳品でした。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
お薦め度 |
採点 |
ワン・ポイント |
 |
   
|
テンポの良さ、ノリの軽さは日本でも作れそうなネタかな。
20分というタイムリミットがこの映画のカギです。
|
|