夢inシアター
みてある記/No. 166

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輝きの海
輝きの海

- Swept From The Sea -

孤独な魂の出会いと一途な愛の物語、たまにはどっぷり浸ってみたい時間。

Jul.18,1999 東京 シネスイッチ銀座2 にて


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ギリスの海沿いのある村に難破した移民船が漂着します。幼い子供も含めて全員が死亡。しかし、船が難破する前に海に投げ出されたロシア人ヤンコ(ヴァンサン・ペレーズ)は何とか生き延びて、ボロボロの姿でスミスの家に辿り着きます。そこで無げな扱いをうけたヤンコを使用人のエイミー(レイチェル・ワイス)はやさしく世話をします。このエイミーというのも複雑な家庭事情を持つ村の変わり者でした。村の有力者のはからいで仕事を得たヤンコと変わり者エイミーはお互いに引かれあい、愛し合うようになります。しかし、ただでさえ村で歓迎されていない変わり者と得体の知れないよそ者の恋模様は、世間から白い目で見られます。進歩的な医師ケネディ(イアン・マッカレン)はそんなヤンコをバックアップするのですが、果たしてこの愛の物語の迎える結末は?

ネスコの画面に広がる海とそして海岸線の美しい風景がまず目を奪います。その美しい景観を舞台にストレートな愛のドラマがつづられていきます。「迷子の大人たち」でコミカルな集団ドラマをみせたビーバン・キドロン監督が今度はジョセフ・コンラッドの短編小説をもとに孤独と逆境の中に花開いた美しい愛の物語を作り上げました。生まれた時から親から疎んじられて育った孤独なヒロイン、エイミー、一方新天地アメリカへ向かう途中で挫折し見知らぬ土地で疎外されている境遇のヤンコ。この二人が恋に落ちるのですから、まさに絵に描いたような展開です。ヤンコにとっては地獄における天使のようなエイミーであり、エイミーにとっては「海から贈り物」であるヤンコです。でも、そんな因縁付けよりも、とにかく二人はお互いを好きあってしまったのです。

ァンサン・ペレーズはいわゆる二枚目なんですが、この映画では意外と人間臭いキャラクターになっていて、結構感情移入させられるところが多かったです。自分と自分の子供の将来のことを考えてるあたりは、単なるメロドラマのヒーローにはなっていません。一方のレイチェル・ワイスは「アイ・ウォント・ユー」「ハムナプトラ」に続いてまた新しいキャラクターを開拓しています。この人、ルックスは全然私の好みではないのですが、映画の中では大変魅力的に見える女優さんです。今回も毅然としていて、それでいてミステリアスで、そして孤独なヒロインを自然体で演じきりました。

かに二人が結ばれるには、障害はあるのですが、それをことさら際立たせて波瀾万丈のドラマにしていないところにこの映画の味わいがあります。また、この二人が、当事者でなく関係者である、村の有力者の娘(キャシー・ベイツ)とケネディ医師の回想形式で描かれているのも、ちょっと引いた視点が感じられ、思い入れが暴走しないドラマ作りには好感が持てました。また、ベイツとマッカレンという二大名優が主演二人に負けない存在感でドラマに奥行きを与えています。

にマッカレン扮するケネディ医師は、第三の主役とも言うべきポジションで、迫害されるヤンコを守ろうとする理解者である一方、エイミーに対してはなかなか心を開くことができないという役どころを熱演しています。最初は単なる脇役の一人かと思っているとその比重がドラマの中でどんどん増してきて、ラストを彼が締めるあたり、もうけ役ではあるのですが、他の役者さんではなかなかこなせない難役だと申せましょう。ラストで、ヒロインの孤独とその求める癒しが、ケネディ医師の孤独と癒しに重なるあたりが圧巻でした。

人公二人の顛末はちょっと首をかしげるところもあるのですが、どうやら原作よりもヒロインを知的で聡明なキャラクターにしてしまったための副作用のようです。(プログラムを読むとそう書いてあります。原作を確認してみようかな。)しかし、だからと言ってこの映画の値打ちは落ちないと思ってます。社会から疎外されてしまう二人にとっての愛の結実の方法はこれでいいのだと思うからです。

「秘
密と嘘」「キャリア・ガールズ」などで知られるイギリスのディック・ポープによる撮影はシネスコ画面(スーパー35とのこと)のロングショットと人物のアップにメリハリをつけました。また特筆すべきがジョン・バリーの音楽でして、オープニングから、美しいストリングスが、観客を日常から離れたロマンの世界へと引きずり込みます。日本の子守り歌を思わせるテーマが切なくも美しく響くあたりでこの映画の持つロマンの世界にどっぷりと浸っていたい気分になってしまいます。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点2点0点 たまには、皆でこういう映画を観ようよって気分。
多少のアラも役者のよさでカバーしてます。
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