夢inシアター
みてある記/No. 164

dummy
dummy

スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス

- STAR WARS - EPISODE I/THE PHANTOM MENACE -

今イチという前評判にあまり大きな期待はしていなかったのですが。

Jul.16,1999 静岡 静岡オリオン座 にて


dummy

宙の彼方の惑星ナブーが通商連合とかいう連中に武力封鎖されてしまいます。そこで調停者としてジェダイの騎士クワイ・ガン・ジン(リーアム・ニーソン)とオビ・ワン・ケノービ(ユワン・マクレガー)がナブーに向かいます。しかし、どうやら通商連合には黒幕がいるらしくて、さらには、彼らはナブーへの侵攻を開始します。ナブーの女王アミダラ(ナタリー・ポートマン)は交渉による打開を期待しますが、事態はそれ以上に危機的な状況。戦闘用ドロイドに連行されそうになった女王をジェダイの二人が救出し、共和国連邦の元老院に事態を訴えようとするのですが、この元老院ってのが官僚化されたダメダメな連中なものですから、ナブーの状況は悪化するばかりなのでした....。

は「スター・ウォーズ」前3作は観ていまして、かつ、それほどの思い入れはないという立場で以下に書かせて頂きます。「エピソード4」は視覚的な魅力はあったけど話の流れとか役者の使い方がよくなかったという印象、「帝国の逆襲」は雪原の戦闘シーンの目新しさとドラマの盛り上げがお気に入り、「ジェダイの復讐」は新鮮さはイマイチでしたが手堅い演出がきっちりと物語に決着をつけたという印象でした。そして、今回の「エピソード1」なんですが、視覚的な見せ場は満載なんですが、それを見せることだけに専念して後のことをほっぽらかしてしまったようで、映画を観ているというよりは、この先、売り出されるであろうロール・プレイング・ゲームの長い予告篇を見せられているような印象でした。視覚的な部分に手がかかっていることは一目瞭然で、見た目の面白さは満点なのですが、それを映画の面白さにまとめあげられなかったのは、脚本・監督のジョージ・ルーカスの限界なのかなという気がします。

ず映画としてのことで言うなら、相当の予備知識がないとこの映画の筋を追うことも難しいでしょう。私は前作3本とも観ましたが、ジェダイってのが今もってまだよくわかってませんし、今回登場する「シス」ってのは、ますますワケがわからない連中です。その世界観が映画の中だけで説明しきれないってのは、攻略本がないと楽しめないロール・プレイング・ゲームみたいなものでして、要は敷居が高い映画なのです。でも、膨大な数の熱狂的なファンの皆さんに支えられているだけに、こういう商売もありなのでしょう。例えば、今回登場するダース・モールという敵役なんですが、映画だけ観てると、何だか勿体つけて出てきた挙げ句にやられちゃうだけのチョイ役(にしか私には見えませんでした)なんですが、映画公開前からこれがものすごい人気キャラクター化しているのです。これはいわゆる付加価値というやつなのでしょうが、それでも映画本体とは関係のない話です。

語としては、今回は主人公というものがいません。ビリングではリーアム・ニーソンがトップなのですが、彼はジェダイマスターとして今回の事件の全ての場所に居合わせるのですが、居合わせる以上の存在ではありません。主人公と思しきのは、アミダラ女王と、幼いアナキン・スカイウォーカーといったところになるのでしょうが、扱いが特に大きいわけではなく、オビ・ワン・ケノービはまるで存在感がありません。役者連も全体に生彩がないのですが、その中ではアナキンを演じたジェイク・ロイドが、この先、善にも悪にも転がりそうなガキを好演しています。敵役もまたしかりで、「帝国の逆襲」「ジェダイの復讐」では帝国軍の連中がきちんとキャラクター付けがされていたのですが、今回はCG主体のせいでしょうか、単に出てくるだけの皆さんになってしまいました。

人間キャラが人種差別だという批判があったようですが、言われてみればという気もします。黒人、ユダヤ人のステレオタイプの上に非人間キャラをかぶせたという印象はありましたもの。ただ、それを悪いのかというと、そうとも思えないのでして、擬人化をするときには、多かれ少なかれどこでもやっていると思います。「E.T.」が公開されたときにあれは日本人のイメージだ云々という議論がありましたが、だから何だと思いましたもの。でも、どこかの学校で一人だけいた黒人生徒のアダ名が「ジャージャー」になっちゃったら、ちょっとかわいそうな気もします。

ラマに主人公がいないせいか、ルーカスの演出もドラマの核になる部分がなく、単に登場人物をさばいただけという印象でした。そんなのっぺりしたドラマを救っているのが、ジョン・ウィリアムスの音楽でしょう。私には、今回の音楽は、ぶつ切れ演出を繕うことに使われてしまったように思えました。ドラマが盛り上がらない部分を音楽で強引にクライマックスにしてしまう、映像が語りきれない部分を音楽で語るということです。クライマックスで、主人公たちをダース・モールが迎え撃つシーンで、唐突にコーラス付きの重厚な音楽が鳴り響いて、どうやらここがヤマ場らしいことがわかるというのは、この映画の音楽への依存度が高いという一つの例でしょう。まだ2本は作られるこのシリーズですが、脚本、監督は別の人にして欲しいなという気がしました。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 子供は楽しめますけど、ファンじゃない大人には敷居が高い。
これまでの映画で一番イケてないポートマン。
dummy