ハムナプトラ・失われた砂漠の都
ハムナプトラ・失われた砂漠の都
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The Mummy
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原題はミイラ男ですが、中身はシンドバッド風冒険活劇。
Jun.19,1999
神奈川 横浜スカラ座
にて |
の昔、許されぬ恋に王を殺したイムホテップはその刑罰として、永遠の地獄として棺に閉じ込められてしまいます。そこは、伝説の都ハムナプトラで、黄金の財宝とともにイムホテップは3000年の間封じ込められていたのです。第一次大戦後のエジプト、博物館に勤めるエヴリン(レイチェル・ワイス)は兄の見つけたキーボックスから、ハムナプトラの場所を知る男リック(ブレンダン・フレイザー)と知り合い、そして、謎の都を探す旅に出ます。その道中には、別のアメリカ人たちのチームも同道することになり、ついに彼らはハムナプトラにたどり着きます。そこで、見つかったのは、カギのかかった死者の書と、謎のミイラです。ところがエヴリンが死者の書を読んだおかげで、ミイラだったイムホテップが蘇り、3000年を超えた恋を成就させようとするのです。
題は「the mummy」、いわゆるミイラ男のリメイクなのですが、今回のミイラ男はメチャメチャ強くて、悲惨な目にあったかわいそうな奴なんていうペーソスは微塵も感じさせない悪役ぶりです。最初は半生風味のミイラだったのが、人間の生気を吸い取ることで段々と人間の形になっていくというのが、最新SFXを駆使して描かれます。この映画の宣伝文句が「世界にはばたくILM,最新SFX」ですから、見せ場はそれだけにとどまらず、砂漠の砂嵐にイムホテップの顔が浮かび上がるとか、集団で主人公たちを襲う、ミイラ、スカラベ(肉食甲虫)、イナゴなどに、さらにはハムナプトラの威容からその屋台崩しまで、視覚効果満載の映画になっています。でもこの宣伝文句じゃそれだけの映画と思われても仕方ないよなあ。
て、本筋の方なんですが、これはいわゆる今までの面白い映画の趣向を寄せ集めたという感じでしょうか。「死霊のはらわたシリーズ」「スペース・バンパイア」「アルマゲドン」「レイダース」などが思い付いてしまいました。全体の作りは結構マジメではあるのですが、その設定の強引さや、展開のご都合主義は脚本、監督のスティーブン・ソマーズの責任と言わざるを得ません。ただし、その辺の物語の不備を演出のテンポで乗り切ってしまったのも事実で、「グリード」でもうまいところを見せた彼の力量は演出部分で発揮されているようです。とはいえ、悪党どもが次々に怪物に食われる物語をブラックユーモアも交えて楽しくまとめた「グリード」に比べますと、今回は脇役まできちんとキャラクターを振り分ける余裕がなかったような感じです。まあ、もう少しバカをすれば「死霊のはらわたシリーズ」になり、もう少しイムホテップにペーソスを与えると「スペースバンパイア」になり、もう少し悪党をきっちりと描けたら「レイダース」になったのでしょうが、そのあたりを「そこそこ」のレベルにおさめたのが、この映画のよさでもあり、弱さかもしれないです。
者の影が薄いというのもそういう物語の弱さから来るのかもしれません。ヒーローであるはずのブランダン・フレイザーも、「ジャングル・ジョージ」の方が生き生きとしてましたもの。それでもヒロインに、見た目ちょっとクラシック、でもキャラクターは今風美女、レイチェル・ワイスをキャスティングしたのは成功しています。ストーリー的にも彼女が主演のような印象ですし、彼女も好演していまして、ちょっとマヌケなヒロインぶりが、美貌とのミスマッチでうまく映えました。また、「スライディング・ドア」のいけすかない男ジョン・ハナが脇のポジションにうまくはまって好演しています。
リルとかサスペンスとかを期待するより、全編に渡って散りばめられた見せ場と仕掛けを楽しむ遊園地(今はアミューズメント・パークって言うんでしたっけ)のアトラクション気分で御覧になるのが楽しい見方と言えましょう。そこそこに気色悪くてそこそこにグロ、そしてアクションはド派手というのがいかにもアトラクション的な面白さになっています。とにかく2時間強を一気に見せてくれる映画ですから、うっとうしい梅雨時の娯楽としてはなかなかのおすすめです。
イドリアン・ビドルの撮影は全体をシャープな明るい色調にまとめて、陰気な「ミイラ男」のイメージとは一線を画しています。また、ジェリー・ゴールドスミスの音楽はオーケストラを目一杯鳴らした音作りで映画を盛り上げてはいるのですが、映画自体がマジメなのかパロディなのかよくわからないところがあって、その曖昧な印象が音楽にも現れてしまったかなという印象でした。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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映画なんてデートコースの時間潰しと思ってる人にはおすすめ。
とにかく面白く作ろうという意欲は買えます。
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