夢inシアター
みてある記/No. 156

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死んだはずの男が金返せと言いながらムチャクチャやってのけます。

Jun.12,1999 静岡 静岡オリオン座 にて


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体の知れない小汚い一室で弾丸の摘出手術を受ける男、ポーター(メル・ギブソン)の頭にあるのは、自分をこんな目にあわせた人間への復讐のみ。まずは、自分の妻だった女リン(デボラ・カラ・アンガー)を訪ねて自分をはめた男ヴァル(グレッグ・ヘンリー)の行方を探し出し、騙し取られた7万ドルを取り返そうとします。ところが、その金がすでに組織の金になってしまっていたことから、ポーターは大きな組織を相手に闘いを挑む羽目になってしまうのです。

んだ男が「金返せー」とつきまとうのは、まるで落語の「へっつい幽霊」ですが、この映画もその落語みたいに、その場に居合わせたばかりに周囲の連中が割を食うというドラマです。まあ、この映画に出てくる連中は一人としてまともな奴がいないのですが、それでも、ポーターの行くところ死人の山ができるというのは、なんだか迷惑な奴です。そんなアンチヒーローを演じるのがメル・ギブソンなのですが、もっと軽いキャラクターが逆ギレするパターンか、あるいはうーんとヘビーな悪党にしてしまえばよかったのですが、どうも半端にヒーローめいた部分があるのが残念でした。暴力シーンは正直言ってかなり派手ですし、普通のハリウッド映画のお約束を逸脱するくらい激しいものもあります。主人公のやり口も容赦のないもので、これで主人公がジェームズ・ウッズあたりなら、もっと、びしっときまっただろうなあと思う一方、ウッズだったらこれだけの大作にならなかったろうなあって複雑な気分です。徹底的な悪党にしてしまえば、ヒロインを助けようとするあたりが結構泣かせる展開になったのですが、最初にヒーローっぽく見せてしまった分、迷惑度の方が前面にでてしまったような印象です。

はいえ、物語自身はなかなかに面白くできておりまして、主人公が先読みするキレものなのか、単なる向こう見ずなのかがよくわからないので、次の行動が予測できないあたりで、サスペンスを生みました。また、脇役に曲者を揃えた分、誰が先に殺られるかという順番も読めませんし、巻き込まれて殺される連中に同情したくもなってしまいました。どう見ても主人公の行動パターンは狂犬そのものなんですが、その行動パターンには一応の筋が通っているのが面白いと思った次第です。とはいえ、そのあたりの筋といっても、これまでの映画で言えば、ジョー・ペシとかショーン・ペンといった面々が演じる危ないチンピラの筋という感じなので、メル・ギブソンが既存のイメージの延長ではちょっとズレが生じるのはやむを得ないかもしれません。彼が想いを寄せるヒロインがとびっきりの華やかさはない、くたびれた感じの女性になっているあたりが、うまいキャスティングなのですが、余計目に主人公が浮いてしまった感が出てしまったのが残念でした。

の連中は役者を揃えただけあってそれなりのキャラクターが与えられているのが、ドラマ全体にふくらみを与えています。少ない出番ながら、デビッド・ペイマー、ビル・デューク、デボラ・カラ・アンガーといったバイプレイヤーがそれぞれ印象的な演技を見せますし、大御所ジェームズ・コバーン、クリス・クリストファーソンなんてところもきちんと見せ場を与えられているあたり、「LAコンフィデンシャル」の脚本家であったスティーブン・ヘルゲランドの演出ぶりはなかなかに快調です。撮影時に主人公の扱いでメル・ギブソンともめたといった裏話も聞こえてきますが、この映画の一本の娯楽作品として捉えた時、充分にもとの取れる映画に仕上がっています。特にラストの意外性のある畳み込みは、ちょっと「ジャッキー・ブラウン」を思わせるものがあって面白かったです。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 コミカルなようで重いようで、でも役者の顔ぶれで楽しめます。
全体に噛み合わせが悪いような気もしてしまって。
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