夢inシアター
みてある記/No. 155

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奇蹟の輝き
奇蹟の輝き

- What Dreams May Come -

「死が二人を分かつまで」いえいえ、もっとしぶといソウルメイトのお話。

Jun.6,1999 神奈川 藤沢オデオン2番館 にて


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供二人を交通事故で失った医師クリス(ロビン・ウィリアムス)とアニー(アナベラ・シオラ)はなんとかその痛手から立ち直りかけていたのに、何と今度はクリスが交通事故で死亡。残されたアニーは精神状態がズタズタです。そんなアニーに後ろ髪を引かれる思いのクリスですが、それでも分をわきまえてアニーに別れを告げ、天国に召されます。しかし、そのアニーが自ら命を絶ってしまいます。自殺した人間は地獄行きがルールです。ということは、クリスとアニーはもう永遠に会うことはできないのです。ところがクリスはあきらめが悪い性質らしくて、アニーをさがしに地獄まで出かけると言い出しまして......。

が死んだらどうなるか、「死後の世界はあるんです」ってのは、丹波哲郎さんですが、この映画によると、それなりの人生を送った人間は天国で自分のイメージする世界を構築することができるようです。この映画の主人公は奥さんが画家のおかげで絵心があったので、19世紀の油絵のタッチでそれは美しい世界を作り上げることができました。「バイオハザード」とか「リング」とかにうつつを抜かしていると死んでもロクな天国にならないみたいです。ところがアニーは子供を亡くした時に既に自殺未遂をして入院していた過去があり、さらに夫にも死に別れてメロメロ状態、ついには自ら地獄の門を開けてしまいます。しかし、クリスとアニーとの間には生と死をも乗り越える絆が存在しているようです。それを映画では二人がソウルメイトだからという表現をしていますが、生きているアニーが死んだ夫を想いながら描いた絵が、クリスの天国に突然現われ、そして消えていくあたりは、不覚にも泣かされてしまいました。

んな固い絆で結ばれた二人とは言え、文字通り「天国と地獄ほどの違い」のある境遇に別れ別れになってしまいます。特にアニーは自責と絶望の世界に閉じこもっています。そんな彼女をクリスは救うことができるのかというのがメインの物語となります。その間に回想シーンが何度も登場し、クリスと子供たちの間にあった葛藤とか、子供たちの死の絶望から生きることをあきらめかけたアニーがどうやって立ち直ったのかといったことが徐々にわかっていくあたりが見物です。クリスが自分の生きてきた人生を精算していく過程をビンセント・ウォード監督は丁寧に描きました。特に子供たちとの関係の描き方には感心させられてしまいました。これは脚本の力か、それとも原作にもそういうエピソードがあったのでしょうか。この物語の原作者のリチャード・マチスンは、「ミステリー・ゾーン」「ヘルハウス」「激突」などの怖い映画の原作者として有名な人ですが、こういうロマンチックな物語も書く人だったとはちょっと意外でした。

の映画は、死後の世界、輪廻転生といったものは肯定していますが、宗教臭さは一切ありません。神を信じれば救われるとか、天国に神様がいるなどという展開にならないのが好感を持てます。天国へ行く人、地獄へ行く人の選別ルールはありそうなのですが、そこはうまくぼやかしています。そして、ソウルメイト、魂がつながっているから、愛する妻を救えるかもしれないという、主人公のやや強引な確信が物語を引っ張っていきます。しかし、もはや妻は地獄の亡者です。ついにはクリスもあきらめかけるのですが、そこにもたらされる奇蹟は劇場でご確認ください。

なり強引な結末ではあるのですが、後味は悪くないです。この後味は昔観た「フラット・ライナーズ」という臨死体験を扱った映画を思い出させます。「フラット・ライナーズ」ではヒロインが臨死体験の中で、死んだ父親と和解するというシーンがあるのですが、この映画でも似たような趣の展開があります。また、想いというのは一方通行では結局力が及ばない、その想いに応えるもう一つの想いがあるからこそ奇蹟を呼び起こすことができるとこの映画は語りかけます。そういう想いの相互関係は、あの世であろうが、この世であろうが同じことだと気付かされる映画でもありました。言い換えると、死後の世界を信じることができない人にも理解できる、普遍的な愛の物語がここにはあります。

覚効果に非常にお金をかけた映画でして、天国や地獄の描写はなかなかにスペクタクルな見せ場になっています。デジタルイフェクトから、ミニチュアセットまで使ってシネスコの大画面一杯に絢爛たる絵を見せてくれます。また役者陣では、ロビン・ウィリアムスが珍しく等身大のキャラクターを演じていまして、いつもの熱演とはちょっと違う味わいを出しました。また、ヒロインのアナベラ・シオラが美しくて魅力的でした。失意のどん底にいても、魅力的に見えるあたりがなかなかに見物です。昔からのファンなのですが、素敵に年をとりつつある女優さんだと思った次第です。

ジャックナイフ
64512175

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点2点0点 ヒロインの病的でない繊細さが悲しくて美しい。
親子の和解シーンで泣かされてしまいました。
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