夢inシアター
みてある記/No. 154

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ソルジャー
ソルジャー

- Soldier -

大作じゃないけど、タイトにまとまったSFアクション。

Jun.5,1999 東京 銀座東劇 にて


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まれた時に選別され、兵士としての特殊な教育を施されたソルジャーは感情を持たない人間兵器として、数々の戦果を上げてきました。そして、彼らも40を越える年になったある日、ミーカム大佐が新しいソルジャーを連れてきます。今度は遺伝子レベルから選りすぐった若いスーパー戦士達です。試しにケイン607(ジェーソン・スコット・リー)に、旧ソルジャー3人が立ち向かったのですが、歯がたたず。その戦闘で死んだと思われたトッド(カート・ラッセル)は、廃棄物としてある星に捨てられます。そこには、移住中に難破した人々が住んでいて、トッドは彼らに命を救われます。とはいえ、生まれてこの方戦争しか知らないトッドは、彼らと心を通わすこともできず、ついにはそのコミュニティをおわれてしまいます。これまでになかった様々な感情がトッドの心を乱します。そこへ、ソルジャー部隊が着陸し、トッドの命を救ってくれた人々に攻撃を始め、ついにトッドは自らに意志でソルジャー部隊に闘いを挑むのですが.....。

「ブ
レードランナー」の脚本家による物語を「イベント・ホライゾン」のポール・アンダーソンが監督したSFアクションの一篇です。予告篇を観た時は、いかにも作り物めいたセットと合成であまり期待してはいなかったのですが、これが意外や面白くできていました。ストーリーとしては、殺し屋が用済みになって死にかけていたところを、ある街の住人に助けられ、その街の人々(そこには一人のきれいなヒロインがいるのがお約束)のために一肌脱ぐという、時代劇とか西部劇でよくあるパターンです。もとに組織からは命を狙われ、新しい街では人々に馴染めず、ついにはいられなくなってしまう。そんなキャラクターをカート・ラッセルが、最後まで表情を変えずに寡黙なままで演じきりました。

の映画の中でカート・ラッセルが役者としての見せ場を与えられているのがちょっと意外で、ラッセルも彼ならではの役どころとして、主人公のキャラクターに奥行きをつけることに成功しています。殺人機械であったソルジャーが、彼の命を救ったサンドラという女性に対して恋慕の情を抱きながら、その感情をどうしてよいかわからなくなるあたりが見物です。また、彼の心に蘇るものは、全て過去の戦争と殺人ばかりです。その記憶が、彼の良心の成長とともに、彼の心を責め立ててくるあたりなど、アンダーソンの演出はこのあたりのソルジャーの悲劇を念入りに見せます。そういう葛藤を胸に秘めながらも、感情を表に表わす術を知らないソルジャーの悲劇がラッセルの熱演(?)によって見応えのあるドラマになっています。ここでラッセルが饒舌にならず、コミュニティを追われるときも一言も言わずに黙って去っていくあたりがなかなかカッコいいです。

半はや唐突な展開で、主人公のいる星へソルジャー達がやってきて、彼を助けたコミュニテイが攻撃を受けるというものです。ここから先はソルジャー部隊20人にトッド一人が立ち向かうという「ランボー」な展開となっていきます。このあたりは主人公がムチャクチャ強いので、あまり緊迫感が出ないのですが、それでも夜間シーンに工夫をこらして視覚的に面白い見せ場に仕上がりました。そして、クライマックスは主人公とケイン607との一騎打ちとなり、ここは両者のマッチョぶりが迫力ある格闘シーンになっています。

して、最後の最後まで主人公は語らず表情を変えません。でもきちんとキャラクターが変わってヒーローになっているのです。結局はソルジャー部隊の内輪もめのようなストーリーなのに、前半で丁寧に描かれた主人公のキャラクターの葛藤がラストをなかなかに盛り上げました。お話のスケールからしても、役者の顔ぶれからしても大作ではないのですが、主人公を丁寧に描くことで1ランク上のアクション映画にすることに成功しています。役者では、出番は少ないながら、ゲイリー・ビジーが部隊のリーダーをいやらしく演じきり、また、ヒロインを演じたコニー・ニールセンの美しさが印象的でした。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点1点0点 なかなかの見応えはアクションファンにはおすすめ。
無表情なヒーローが結構泣かせます。
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